2024年7月10日水曜日

論語雑感 泰伯第八 (その3)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感
【原文】
曾子有疾。召門弟子曰、啓予足、啓予手。詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。而今而後、吾知免夫、小子。
【読み下し】
曾(そう)子(し)、疾(やまい)有(あ)り。門弟(もんてい)子(し)を召(め)して曰(いわ)く、予(わ)が足(あし)を啓(ひら)け、予(わ)が手(て)を啓(ひら)け。詩(し)に云(い)う、戦戦(せんせん)兢兢(きょうきょう)として、深淵(しんえん)に臨(のぞ)むが如(ごと)く、薄(はく)冰(ひょう)を履(ふ)むが如(ごと)しと。而今(いま)よりして後(のち)、吾(われ)免(まぬか)るるを知(し)るかな、小(しょう)子(し)。
【訳】
曾先生が病気の時に、門人たちを枕元に呼んでいわれた。
「私の足を出して見るがいい。私の手を出して見るがいい。詩経に、深淵ふかぶちにのぞむごと、おののくこころ。うす氷ふむがごと、つつしむこころ。とあるが、もう私も安心だ。永い間、おそれつつしんで、この身をけがさないように、どうやら護りおおせてきたが、これで死ねば、もうその心労もなくなるだろう。ありがたいことだ。そうではないかね、みんな」
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 人の寿命はいったいどのくらいだろうかと思う。日本人男性の平均寿命は81.05歳らしいが、それはあくまでも平均であり、私の父は現在87歳、父方の祖父も伯父も89歳で天寿を全うしたことを考慮すれば、私も90歳までは生きるような気がしている。実際、私もそう認識しており、先月還暦を迎えて人生の2/3を終えたという気分でいる。もちろん、それは根拠の薄い思い込みであるが、残りの人生を過ごすにあたって、「残り時間」を意識するのは必要な事のように思うので、「あと30年」という意識でいるのである。

 長生きするために何か心掛けている事があるかと言われれば、特にない。あえて言うなら「朝食抜き」だろうか。これは『LIFESPAN-老いなき世界-』という本を読んで真似してみようと思った事で、効果のほどはわからない。まぁ、気軽に試しているところである。よくテレビなどで高齢者に向かって「長生きの秘訣は?」とか「健康の秘訣は?」とか尋ねるのを目にする。誰もが気になるところではあると思うが、たいていは「好きな事をしている」といった類で、酒もたばこも控えてひたすら健康的な事をやっているという答えはあまりないように思う。

 そもそもであるが、長生きに秘訣などあるのかと思う。『LIFESPAN-老いなき世界-』のように本格的に研究しているものを見るとあるのだろうとは思うが、なかなか素人が簡単に実践できるものでもない。今のところは長生きするかどうかは、「たまたま」ではないかと思う。大酒を飲んでいたってタバコを吸っていたって、長生きする人はするだろうし、酒もタバコもやらないのに短命に終わる人もいる。何が違うのかと考えてみれば、結局その人それぞれの生物としての細胞の生命力なのかなと思ってみたりする。

 機械にたとえればわかりやすいが、同じ製品でも寿命はそれぞれ異なる。我が家はこの夏、ダイニングのエアコンを買い替えたが、私の部屋のエアコンはもう20年以上使っているが、まだまだ現役である(利用頻度が低いために買い替え対象にはならないのである)。同じように作っている機械でさえそうなのだから、個別オーダーメイド生産の人間においてはなおさらである。「たまたま」長生きした人に秘訣を聞いたところであてになるとは思わないし、長生きするために健康で禁欲的な生活をしたいとまでは思わない(ちなみに朝食抜きはまったく苦にならないので禁欲ではない)。

 最近は生命の寿命よりも「健康寿命」という事が重視されるようになってきている。いくら長生きでも、ボケてしまったらもう迷惑以外の何ものでもない。亡くなった祖父は、晩年祖母がボケてしまって徘徊するようになり、だいぶ苦労して嘆いてもいたと聞く。人間が人間であるためには、認知機能というのは重要で、これがなくなればもはやただの生物になってしまう。自分の身内にそうなってほしくはないし、ましてや自分自身そうはなりたくない。体の健康も大事であるが、それと同じように精神の健康も重視したい。

 精神の健康となると、大敵はやはりストレスであろう。曾先生は肉体的に身を汚さないように生きてきたというが、私はどちらかというと、精神的に身を汚さないようにしたいと思う。不安や心配事は逃れられるものではないが、なるべく回避するようにしたいと思うし、仕事は楽しくやるようにしたい。仕事については、思い通りに行くことは少なく、その意味でなかなか難しい部分があるが、それも心掛け1つ、つまり意識の部分が大きいと思うが、今のところはうまくいっている。休みを前にした金曜日の夜はホッとして嬉しいし、日曜日の夜は翌日からの仕事を控えて楽しみなところも多い。サザエさん症候群とは無縁である。

 マズローの欲求5段階説によれば、「承認欲求」と「自己実現欲求」の段階にきている。周りから認められたいし、それによって「自分が満足できる自分になりたい」と思う。これが充足されればストレスとは無縁になるだろう。「仕事がつまらない」という人はかわいそうに思う。面白いと思ってやれば面白いし、嫌だと思ってやれば嫌なものだろう。「面白い仕事があるわけではない。仕事を面白くする人がいるだけ」という言葉の通りだと思う。仕事は自己実現欲求を満たす事のできるものの大事な1つである。

 仕事では会社を成長させ、社員のみんなと幸せになりたい。ラグビーではいいプレーをしてみんなと美味いビールを飲みたい。子供には心に残るようなアドバイスをして、「さすが親父!」と思われたい。そのためには日々精進。前職の社長のように他人を踏みつけて平気でいられるような人間にはなりたくない。最後の自己実現欲求の実現に向けて、楽しく精進する日々を過ごしたいと思うのである・・・


Steve BuissinneによるPixabayからの画像

【本日の読書】

思考の技術論: 自分の頭で「正しく考える」 - 鹿島 茂  エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術 - 中野 信子  心はあなたのもとに (村上龍電子本製作所) - 村上 龍





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