2016年4月27日水曜日

訪日外国人観光客の増加に思うこと

久しぶりに渋谷の街を歩いた。仕事ついでであったのだが、久しぶりのセンター街は、相変わらずとてもついていけそうもない若者たちで溢れかえっていた。何気なく歩いていて、何気なく気がついたことは、「外国人が多い」ということ。昨今、円安効果も相まってか、外国人観光客が増えているとニュースでは報じられている。中国人観光客の爆買いも話題になっているし、観光地ならずとも渋谷ともなればやっぱり大勢の外国人観光客が来ているのだろうか、などと思いながら歩いていたのである。

外国人と言っても、白人だけではもちろんない。ヨーロッパ系と思われる人だったり、イスラム教徒の方であろうかヒジャブで頭を覆った女性たちとか、一見日本人と変わらないが、ファッションからして中国の方かなとか、様々である。一瞬、数十年後の未来に想像が飛び、ありとあらゆる人種の人がごったになってすれ違う風景が脳裏に浮かんだ。それはまるで映画『ブレードランナー』の世界のようであるが、そんな世界がもうすぐそこに来ているのような気がしたのである。

先日、日本政府は2020年までの訪日外国人観光客の目標をこれまでの2,000万人から4,000万人に引き上げると発表した。随分強気であるが、2015年の訪日外国人観光客数が1,974万人であることを踏まえると、そうなるのもよくわかる。日本政府観光局のデータを眺めると、訪日外国人観光客数は、途中のリーマンショックと大震災での足踏みはあるものの、2003年の521万人から伸び続けてきている。特に安倍政権になってからは、円安効果もあってか2012年の835万人から2.4倍の伸びである。

その内訳はというと、中国499万人、韓国400万人、台湾368万人、香港152万人とで約7割を占め、北アメリカ131万人、ヨーロッパ125万人を凌駕している。まぁ距離的なものもあるから当然かもしれない。面白いのは2014年までトップだったのが韓国であるという事実。漏れ伝わってくる反日感情とは裏腹の事実である。自分だったら嫌いな国ならタダでも行きたくないと思うのだが、そうではないらしい。その韓国を2015年に中国が一気に追い越している。2014年の241万人からなんと倍増である。2016年も両国が熾烈なデッドヒートを演じているが(1月は韓国、2月・3月は中国がトップ)、人口から考えると今後は中国が不動の1位に落ち着くのかもしれない。

これだけ増えている原因は、巷で言われている円安効果だけだと円高になった時は減ることが予想される。しかし、生活の向上であるならばその心配はないかもしれない。今読んでいる『シフト――2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来という本によれば、今後世界各国で「中間層」が増えるらしいから、そうなると日本に観光に来る人も益々増えるだろう。さらにアジア圏にはインドという人口大国もある。今後経済発展すれば、訪日する人も増えるだろうし、「2030年に年間6,000万人」という目標も「調子に乗っている」とも言えない気がする。


6,000万人と言えば、我が国の人口の半分である。一時に来るわけではないものの、さすがにそれだけやってくると、渋谷ならずとも道行く人たちの風景もだいぶ変わるだろう。「日本は単一民族国家」などと言っていられるのも、今のうちかもしれない。「移民」となると話は別だが、観光客ならいくら増えてもいいと思うし、そうした観光客が身近に溢れるようになれば、今とは違う環境になっていくのかもしれないと思ってみたりする。

思い起こせば、大学卒業時に初めて海外旅行に行ったのだが、その時訪れたオーストラリアは物価が安かった。だから学生の貧乏旅行でも3週間も行けたのである(確か20万円ちょっとしかかからなかったと記憶している)。その後社会人になって、香港、セブ島、マカオ、シンガポールと訪れたが、どこも物価が安かった。そうした内外価格差もかなり縮小しているようだし、物価という「国境」がなくなれば、中間層にとっては行くも来るも一緒となり、行き来が盛んになるのかもしれない。

外国人観光客にはたくさんきていただいて、大いに消費してもらえれば、我が国の消費にも貢献するだろう。本当は「免税」などしない方がと思うも、それはお互い様だろう。消費が増えれば経済も活性化するだろうし、そこは大いに期待したいところだ。あとはそうした外国人の期待に我々日本人が応えられるかどうかだろう。今は「日本は素晴らしい」系の本が随分出ているが、それを大いに発揮して来日した人たちに満足して帰っていただく事だろう。

そんな意識を持ってどうするという話もあるものの、せめて「日本の好印象」には何らかの役に立ちたいという思いもある。何ができるということもないものの、せめて道を聞かれたならば、戸惑うことなくスムーズに英語で案内するくらいはしたいと思うところである・・・


【本日の読書】