2010年12月14日火曜日

健全なる猜疑心とは

先週末は月に一度の社会人向け勉強会である「寺子屋小山台」に参加。
かつてテレビでキャスターを務めていた事もある方を講師にお招きして、講義とディスカッションをしていただいた。本来のタイトルからは少し脱線したが、現代の問題について諸々ディスカッションした。

ちょっと面白かったのは食料自給率を巡るデータの嘘の話だ。
我が国の食料自給率は、農水省の発表だと約4割と言われている。
つまり簡単に言うと、国内では国民10人あたり4人分しか食料を生産できていないと言う事だ。
ここから食糧安保の話などが出てきているわけである。
私自身、(自分でなにかするわけではないが)何とかしないといけないなと考えていた。
何かあった時に外国頼みではやはり不安ではないか。

しかしこの4割というデータが曲者なのだと言う。
実はこれは「カロリーベース」での数字。
これが「金額ベース」だと60%超となるらしい。
しかも野菜などカロリーの低いものは含まれておらず、米に至っては110%、つまり自給出来ているとの事。何かあっても野菜鍋なら腹一杯食べられるわけである。
しかも「カロリーベース」を使っている先進国は我が国くらいのものらしい。

何でそんなに危機を煽るのか、といえばやはり農水省だけに自らに都合のよいように操作しているのだろう。実は我が国の農業生産は、世界第5位だというから驚きである。
ここからわかることは、嘘ではなくても切り口をちょっと変えるだけで、いくらでも人をミスリードできるということである。

かつて私も「貸し渋り批判」でひどい体験をした。
日経新聞が、銀行の貸出残高が減ったという事実を持って「銀行の貸し渋り姿勢鮮明に」というタイトルの記事を載せたのだ。景気が悪くなれば、企業も人もお金を借りるのを控える。
運転資金だって設備資金だって、銀行が貸し渋りなどせずとも、自ずから借りるのを控えるのだ。
(車だってかつては3年ごとに買い換えていたが、そのサイクルは近年長くなり、そうすれば当然ローンだって借りなくなるから残高は減るのだ)
銀行の貸出残高が減った要因には当然そうしたものがあるはずで、それを中身の分析もせずに「貸し渋り」と決めつけていた。「解釈の悪用」だが似たようなものだ。

世の中には実はこうした例は多いと思う。
すべてを見破る事はできないが、「猜疑心」をしっかり持って我が身をガードしておかないと、簡単に騙されてしまう。政治家の言う事も、マスコミの言う事も鵜呑みにせず、「本当だろうか?」と思う事を常に忘れてはいけないと思う。
美人が満面の笑みを浮かべて近寄って来たら、それは絶対何か裏があるって事なのである・・・


【本日の読書】
「それでも日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子
「逝きし世の面影」渡辺京二
    

0 件のコメント:

コメントを投稿