2020年8月5日水曜日

続・漫画の効能

  私は小学生の頃は漫画少年であった。それが今でも続いていて、漫画は好きでよく読んでいる。もっとも、最近は漫画「本」ではなく、スマホが中心である。小さな画面で読みにくいのが難点であるが、手軽に読めて本棚に溜まらないのは大きなメリットである。漫画といえば、世の中のお母さん連中には敵視されがちであるが、漫画もバカにしたものではない。その1つは『ベルばら』であったが、最近また歴史モノでいいのを発見した。

それは、『日露戦争物語』『ナポレオン 獅子の時代』である。『日露戦争物語』は、あの司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』とまったく同様に日露戦争で陸軍と海軍に別れてそれぞれ活躍した秋山兄弟を主人公にした物語。そして『ナポレオン 獅子の時代』はその名の通りナポレオンの一代記である。読んでいて感じるのは、「省略された事実」だろうか。それぞれ歴史の授業で扱われるが、それはほんの上辺だけである。

たとえば『日露戦争物語』は、秋山真之の少年時代から始まるが、個人的に面白さを感じるのは日清戦争が始まってから。日清戦争は、明治維新後初めて日本が行なった対外戦争である。開国以来、国力を伸ばす上り調子の日本と、旧態依然として下り坂の清が戦い、何の苦労もなく日本が勝ったようなイメージがある。教科書の扱いも数行程度だったし、下馬評をひっくり返した日露戦争に比べると、ウォーミングアップの感がある。しかし、漫画を読むとまったく感じは異なる。

朝鮮半島を巡って緊張感が高まる日本と清。戦争の気配が漂うも、当時の日本は開国間もなく、西洋列強諸国に対しては二等国。不平等条約の改正を悲願に国力を高めようとしているが、戦艦はまだまだなけなしの金をかき集めて英仏から購入する状態。当時の清は日本から見れば大国。しかも清には当時世界最強の戦艦「定遠」、「鎮遠」を擁する北洋艦隊があり、海軍は最大限の警戒をしている。不平等条約改正には一等国にふさわしい行動が必要であり、政府首脳も英仏露の視線を意識している。

なぜ、井の中の蛙で平和に鎖国していた日本が、開国して坂を登りきり、そして世界を相手に破滅の戦争に突き進んでいったのか。この漫画にはその片鱗がそこかしこに現れている。開戦にあたっては、既成事実を作り明治天皇に拒否できない状況で奏上する。陸軍の血気にはやる精神主義は既に現れている。目の前の脅威を知る海軍は冷静で、交戦に際しても、清国兵を満載したイギリス船籍の商船に対しては、国際法を熟慮してこれを撃沈する謙虚さと大胆さがある。

面白く描くのが漫画だとは思うが、余裕で倒したというよりも、慎重に行動して本当に勝てて安堵したというイメージが漫画ではよくわかる。そしてこれこそが歴史の実態に近いのだろうと思う。教科書の数行には出てこない真実ではないかと思うのである。私の愛読書である『逆説の日本史24にも詳しく書かれているが、漫画だと登場人物の活躍がイキイキと描かれていて、脳裏に残りやすいのは確かである。

一方のナポレオンの方もコルシカ出身の背の低い男が、革命後の戦乱の中を出世していく物語。ナポレオン軍は破竹の勢いで列強勢力を撃破していくが、その内情はボロボロで、兵士は徒歩での行軍の連続で靴が擦り切れ裸足の者も珍しくない。突撃に際してはバタバタと倒れ、ナポレオン自身もある橋の攻略戦では無謀にも先頭に立って突撃する。生と死は隣り合わせ。悲惨な戦闘状況。飢餓状態での行軍、戦闘に次ぐ戦闘・・・とてもではないが、ヨーロッパを制覇した軍団の貫禄は感じられない。

事実はどうであったかはわからない。しかし、この方が真実味があるのも事実である。なぜ、フランス革命でボロボロのはずのフランスが、周囲の反革命勢力を次々に撃破してエジプト遠征までこなし、ヨーロッパを席巻できたのか。この漫画に描かれている通りだとすれば、それは不思議でも何でもない。その差は紙一重であり、ナポレオンのリーダーシップの賜物だったということになる。もちろん、連戦連勝ではなく、海軍では当時の強国イギリス海軍に派遣艦隊が全滅させられたりしている。

当然、ストーリーにはフィクションも入っているとは思うが、主要なエピソードは実話のようだし、そこには教科書では窺い知れぬ当時の空気を感じることができる。銃剣と大砲での肉弾戦は双方ともに悲惨な状況が展開される。ナポレオンも無敵に各国との会戦に勝利していったわけではないわけで、「生きた歴史」感を味わえるものになっている。こうした漫画を読むと、歴史が実感とともにすんなりとストーリーとして頭に入ってくる。これぞ、漫画の効能である。下手な歴史の教科書を読むよりずっと勉強になる。

 我が息子も受験勉強の合間にNetflixを観ているが(今は『進撃の巨人』にハマっているようである)、こういう漫画を読むのもいいのではないかと思う。とは言え、ナポレオンはともかく、『日露戦争物語』は受験範囲としては狭くてあまり役には立たないかもしれないし、残念ながら漫画は途中で打ち切りになってしまったようである。その原因はストーリーというよりも「絵」かもしれない。
 とは言え、まだまだ読んでいるのは途中。両作品とも最後まで楽しみながら読み切りたいと思うのである・・・


roywheelerによるPixabayからの画像 



【今週の読書】
 




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