2020年8月27日木曜日

物事を客観的に見るということ

久し振りに友人に会って相談を受けた。今は親の代からの会社を継いで一国一城の主であるが、もともとは大学を出て一流企業に就職したという経歴がある。もともと優秀さを感じさせるところがある友人であったが、今回話を聞いて改めてそう感じた。人に何かを説明するというのは、簡単なようでいて難しい。時として「要領を得ない」「何を言いたいのかわからない」ということはしばしばある。しかし、この友人にはそれがまったくなかったのである。

事の経緯から問題点の所在、リスク、メリット・デメリット、自分としての希望等々を流れるように説明する。聞き終えた瞬間、質問することは何もなかった。それはつまり、「質問の余地がないほどきちんと説明してくれた」ということである。これが意外と簡単そうでいてそうではない。人によっては、何度も聞き返す必要がある。あちこち話が飛んだり、主語が抜けていたり問題点がずれていたり。なぜそうなるかと言えば、理解している自分の視点、つまり「主観的視点」で説明するからである。

自分はわかっている前提でも、相手はまったくわからない。説明が必要なところを(わかっているだろうと)飛ばしてしまう。だから聞いている方はわからない。わかりやすく説明コツは「相手の視点に立つ」ことに他ならない。「客観的視点」と言えるが、これがきちんとできているほど、説明がうまいと言える。「初めて聞く人が理解するには何を説明したら良いか」という観点で説明されると理解しやすい。「自分はわかっているが、相手はわかっていない」ことが頭にあるかないかで大きく違うのである。

これは、説明にあたって専門用語を使う人にも言える。自分たちの内輪では通じる専門用語も、素人のお客さんにはわからなかったりする。それを踏まえて、素人のお客さんにもわかる言葉で説明できる人はよくわかっている人である。先日も職人さんがお客様からの問い合わせを受けて、「PS(ピー・エス)のところです」と説明していた。傍で聞いていた私には「パイプスペース(マンションで配管を通すための空間)」だとわかったが、果たしてお客様が理解できたかどうかは疑問である。

また、実は己自身がよく理解できていないというケースもある。自分ではよくわかっているつもりなのだが、実はポイントを外して理解している。本人は問題だと考えていることが、総じてみればそれは枝葉の問題で、根幹的な問題は別にあったりする。またはあれこれと問題を並べ立てているが、並べ立てるだけで混乱してしまっている。問題を整理できていないから、打つべき手がわからず途方に暮れている。自分がどうしたいのかという出口が見えていないから、どう解決していったらいいかという道筋も見えない。

そういう場合、こちらとしては根掘り葉掘り質問をしていって、ようやく現状認識ができる。現状認識ができれば問題認識もできるし、問題認識ができれば、問題解決方法も浮かんでくる。当然と言えば当然であるが、この一連のプロセスができないと問題解決も難しくなる。どうしたらいいだろうかと頭を悩ませているのに対し、話を聞けばまず問題整理ができていないことが多い。あるいは、自分ではできているつもりでも、いざとなれば隠れていた(気がつかなかった)問題が発覚する可能性がある。

どうしたらこうした「話がわからない」ことを回避できるだろうか。まずは現状認識をきちんとすることであり、それに必要なのがすなわち「客観視」だと思う。これができない人は、よく観察してみると途中で自らの思い込みに囚われてしまっているケースが多い。さらには自分なりに最後までシナリオを描いてみていない(絵が描けていない)というパターンもあるようである。途中までしか考えていない(そこから先はまたその時考えればいいと考えている)から問題に気がつかないパターンである。

最近、「自宅を売却したい」という相談を受けたが、聞けばローンがまだかなり残っていて、しかも自宅の相場を調べたら相場以上に高く売らないとローンが完済できないことがわかった。さて、どうするか。担当者はしきりに「少し内入れできないか」と話してみたが、懐事情が厳しいようでできないという。やむなく高い価格で売り出すことにしたが、前途はかなり多難である。話を聞けば、担当者は「内入れできないのが問題だ」と繰り返すばかり・・・・

しかし、事前に借り入れ先の金融機関に打診したところ、(自宅を売ったお金でローンを)全額返せなくても「相談に乗る」という回答を得たらしい。ならば、高い価格で「売れない、売れない」と時間を浪費するのではなく、妥当な価格を見定めて、全額返せない前提で金融機関と事前に打ち合わせするのが近道である。問題点は「内入れできない」ことではなく、「売れる価格はいくらか、その価格で売れた場合はどうするか」である。残ったローンを返していく必要はあるが、家を売るという目的を達成するにはそうするしかない。

これは、「出口」=「家を売ること」を想定して、そこまでのシナリオを描けば自ずと出てくる答えだが、担当者は入り口の「内入れができない」という問題で思考が止まってしまっているから気がつかないのである。このままだと、高い値札を掲げたまま、売れ残ってしまう可能性が大である。この場合は、最後までシナリオを描いてみれば解決策は浮かんでくるが、それにもまた「客観視」が必要だと思う。

そう書くくらいだから、自分自身ではこの「客観視」がうまくできていると思う。十分かどうかはわからないが、少なくともできていない人に気付くくらいはできている。もともと物事を筋道立てて考えないと理解できない性分が幸いしたのかもしれないが、気がつけば自然とそういう考え方ができている。どうすればうまくできるのかを説明するのは、残念ながら難しい。それはあたかも自転車の乗り方を口頭で説明するようなものとも言える。

強いて言えば、「疑問を持って話を聞く」ようにするという程度であろうか。「事実関係を丹念に整理して理解する」ことでもいいと思うが、複眼的思考で角度を変えたりしながら事実関係を見ていけば自ずと実態が理解できると思うし、少なくとも自分はそうやって理解していると思う。そうしたことをさらりとやって普通に説明してくれた友人は、普通に優秀だと思う。人間関係のスキルも私より上だし、家業を継がずに勤めていれば今頃はかなり上の管理職になっていたのではないかと思う。

自分も改めて負けないように頑張りたいと思わせてくれたのである・・・


PIRO4DによるPixabayからの画像

【本日の読書】
 



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