2011年6月16日木曜日

危険な傾向

イタリアでは国民投票で脱原発が多数を占め、国内でも原発の運転停止を求める全国弁護団が初めて結成され、今秋にも全国各地で一斉に裁判を起こす準備を進めているという。電力会社の株主総会では脱原発の株主提案がなされるなど、あちこちで脱原発の動きが広がっている。ソフトバンクの孫社長も本業そっちのけの勢いで代替エネルギー推進の旗振りをしている。個人的にはこうした動きは大歓迎だ。

しかし、次のようなニュースも目にした。
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「福島原発のリスクを軽視している」 「安全説」山下教授に解任要求署名
J-CAST News2014年6月14日
福島第1原発から放射性物質が放出されて続けている問題で、一貫して「安全・安心説」を唱えていると受け止められている識者が、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーの山下俊一・長崎大学教授だ。1年間に許容される被曝量として「20ミリシーベルト」という数字が議論になるなか、山下氏は「100ミリシーベルト以下のリスクは分からない」との立場を崩していない。これが「リスクを軽視している」と批判を浴びており、NGOは、解任を呼びかける署名活動を始めている・・・
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この山下教授、なかなか大胆な方だ。
しかし、この教授、長崎市生まれの被曝二世で、1991年から約20年間にわたって、チェルノブイリやセミパラチンスクでの被曝者治療に携わっていたらしい。
2005年から2年間は、世界保健機関(WHO)のジュネーブ本部で放射線プログラム専門科学官をも務めているというから、その道ではかなりの専門家といえる。

NGO(グリーンピースらしい)は、山下教授が「低線量被ばくのリスクを軽視し、『100ミリシーベルトまでは、妊婦も含めて安全』との言動を福島県内で繰り返しているという理由で危険視しているようである。そんな人物がアドバイザーなんてとんでもないという事で、解任を求める動きとなっているようだ。しかし、こういうNGOの動きこそ危険なものに思えてならない。

この教授の事は知らないが、経歴を見ればかなりの専門家だ。
その専門家が自分の研究成果に基づいて発言しているわけだ。
(ひょっとしたら裏で原発推進派から金をもらっているのかもしれないが・・・)
反論があるなら根拠を示して正面から反論すればいい。
もっとも放射能レベルが人体に与える影響なんてはっきりとした根拠があるわけではない。
何ミリ浴びたからどうなるなんて誰にもはっきり言えるものではない。
(もっとも相当量浴びたらダメだろうが・・・)
タバコと肺癌の関係のようなものだ。そう考えれば、どうするかなどという事は結局自分の基準で判断するしかない。

気にくわないから解任しようなどという事は、自分たちは正義感に酔いしれているのかもしれないが、非常に危険な発想だ。その昔社会党の土井党首が、憲法改正について「ダメなものはダメ」と議論を感情論で封じ込めた事があった。戦前は、「戦争反対」などと言おうものなら、周りから「非国民」と抑えつけられた。
みんな同じだ。

100ミリシーベルトまで大丈夫だ」と言われたって、私だったら根拠はなくとも信じないし、避難しなくても安全と言われたって避難する。
その人が小さな子供と一緒に隣に住むなら考えるが、そうでないなら「君子危うきに近寄らず」に従って行動するだろう。
でもその人がそういう発言をする事自体を妨げるべきではない。

それにしても私の周りでも、今年の夏は子供を学校のプールで泳がせないという親がいるらしい。それもまた過剰反応だと思うが、それもその人の判断だ。
これからどうなるかわからないが、原発を認めるという人には、「じゃあ、あなたの住んでいる街に原発ができると言ったら賛成するのか?」という質問はしてみたいと思う。
それに「YES」と答えられるなら、その人の意見は尊重してもいいだろう。
原発には反対だが、だからと言ってそのためには何でも許されるというものでは当然ない。

冷静なる目を失わないようにしたいものである・・・

【本日の読書】
「これからの思考の教科書」酒井穣
「やずやの秘密」栢野克己


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