2017年2月2日木曜日

人間性とは・・・

 銀行員時代、ずっと融資の仕事をしてきたが、つくづく「窮地に陥ると人は変わる」ということを見てきた。お金を借りて返せるうちは良いのだが、返せなくなると態度が変わるのである。もちろん、すべての人と言うわけではない。誠実に対応していただく方も多いが、それ以上に手のひらを返したように変わる人が多いのである。

 事業がうまくいかなくなり、資金繰りが厳しくなって新たな融資の申し出に来られる時がある。銀行も諸事情を勘案し、支援できる場合はこれに応じる。しかし貸し倒れになるリスクが高い時はお断りすることがある。返ってこないと思われるお金を貸すのは、事業をしている以上ありえない。普通の人も自分が貸す立場になればそう思うであろう。しかしながら、断られた方は面白くない。「今までいくら利息を払ってきたと思っているんだ」とか、「銀行が資金を供給しないから景気が回復しない、金を貸してくれなければ返せない」とかいろいろと言うものである。

 銀行も公共的な役割を担っているとはいえ、ボランティアではない。銀行はそれが商売でもあり、一方で預金者から集めたお金は間違いなく返さないといけない。そういう背景からすると、結局のところ銀行はどんな人に貸すのかと言えば、ただ一言、「返せる人に貸す」のである。よく「銀行は雨が降ったら傘を貸さない」と言われるが、正確ではない。雨が降っても「傘を返せる人には貸す」のである。

 それはともかく、驚くのは返せなくなった方の変わりようである。あれこれと言い訳するのはまだいい方で、ひどいのになると平気で嘘をつく。「あの時ああ言った」とか「こうだった」とか、あることない事主張する。銀行は審査の時に「人、モノ、金」と判断する。そんな人に限って過去の審査資料を見ると「人物面良好」などと記載してあるのである。借りる時、調子が良い時は誰でも善人なのである。

 不動産業界に転身しても、やはりお金にまつわるゴタゴタはついて回る。家賃を払えなくなる、退去の時に敷金を多く返せとごねる、などはよくあることである。例えば退去の時には「事前告知」を契約時に取り決めしてある。住宅では1か月、事務所では3か月などである。これは貸す方も「明日出ていきます」と突然言われても困るからである。だいたい退去しようという時には、事前に予定するものだろうし、事前告知も無理ではないと思う。またどうしても、という場合にはお金だけいただく事で対応している。

 ところがここでも手のひらを返される。曰く、「いろいろとこちらもしてやっただろう」とか、あの時こう言ったとか、もしかしたら出ていくかもしれないと言ったのは退去するという意味だとか、よくぞまぁ都合よく言うものだと感心するのである。もっともそれだけ困っているというわけで、こちらとしても正直に「申し訳ないのだけど」と相談いただければ、「それでは」と譲れるところまで譲る対応もするのであるが、端からクレームまがいに来られると歩み寄る気持ちも失せてしまう。

 「窮地に陥った時こそその人の人間性が出る」というのは本当で、お金に困った時も同様である。もう亡くなった私の叔父も、事業で成功している時は弟たちに「お金を出すから商売をやってみろ」などと羽振り良く振舞っていたが、事業が傾いてから「金返せ」、「相続は長男である自分が多くもらう権利がある」などと主張しだし、兄弟間で「争続」争いへと発展して仲違いしてしまった。「すまん助けてくれ」と頭を下げていたら、弟である父たちも兄貴を助けようと団結していたに違いない。

「人間の器」と言えばその通りで、窮地に陥った時こそ頭を下げられる人間というのが、結局はそれまでの尊敬も失わないし、いつまでも人間関係は続くものだと思う。人のせいにして逃げたりせず、正面から困難を迎え撃つ気概こそが、周りの評価を集めるものだと思う。困難に陥ったからといってなりふり構わず、あることない事言いがかりをつけて都合よくやろうとする人を相手にしなければならなくなると、こちらも不快な気持ちになる。ものは考えようであるが、そういう人を相手にするのを避けられないのであれば、その醜い姿を反面教師として自分の肥やしするしかない。

そう言い聞かせて、しばらく目の前の事態に対応しよう思うのである・・・



【本日の読書】
 
   

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