2009年5月23日土曜日

開かずの踏み切り

その日、私は仕事で早朝から武蔵小金井にいた。いつもと違う街の通勤風景を眺めながら、駅の横の踏切を渡ろうとしていた。
目の前をすし詰めの通勤電車が通り過ぎる。
そして遮断機がゆっくりと・・・・・・

上がらない!
次の列車が近づいている事を知らせるランプとともに、踏み切りは鳴り続ける。
すぐそこにホームがある。
乗降客の様子が見える。
再び、電車を見送ると・・・
次の電車が近づいている。
遮断機は上がらない。
どうやら開かずの踏切らしい。

駅に電車が近づくと遮断機が下りる。
電車は静かにホームに入り、ドアが開いて乗客が乗り降りする。
電車が発車し、踏み切りを通り過ぎてしばらくすると遮断機が上がる。
そういうサイクルで動いている。

だが、朝の中央線はほとんど2分間隔くらいで運行されている。
踏切が開くわけない。
といっても中央線は高架工事中。
下り電車はすでに頭の上を通るから関係ない。
上り電車だけでこの有り様である。

そして遮断機を越えて渡る人が何人も現れる。
気持ちはよくわかるが、危険なのも事実だ。
駅に止まらない通勤快速が来たらどうするのだろうと思う。
すると何の事はない。通過する通勤快速が通る時は、踏み切りにアナウンスが流れるのである。
「速度の速い電車が来ます」と。

つまりJRもこの状態を知っているのだ。
ホームの端から駅員さんも踏み切りの様子を伺っているし、その間に何人もが渡っていく。
電車が行ったあと、すぐに遮断機を上げればいいのに、とは簡単に思う。
どうせ次の電車はホームで止まるのだ。
ホームで止まったところで遮断機を下ろすだけであり、出来ない事はない。

ではなぜやらないのか?
たぶん、問題意識を持っている駅員さんだっているだろう。
だけど仮に、もしももっと踏み切りの間隔を短くしましょう、なんて言い出したら、そんな駅員がいたとしても、たぶん社内の決裁の手続きのややこしさに潰されるような気がする。
状況を説明し、あるべき形を提案し、その実証と効果を説明し・・・
「そんな事しなくてももうすぐ高架工事も終わるだろう」という上司の声にかき消されるのではないだろうか?大きな組織ってそんなものである。

根本的な問題を棚上げにし、踏切内に警告を流すという手段でごまかしている・・・
大きな事故でも起こらない限りは変わらないだろう。
起こってもそれは「遮断機を潜る者が悪い」と言い訳されそうである。
高架工事が終わるまで、この綱渡りは続くに違いない。

時計を見ると10数分経っていた。
ディズニーランドでは大した事のない待ち時間である。
だが、終わりが見えないとなると、例え5分でもその長さは永遠にも等しい。
ホームには8本目の電車が止まっている。
ドアが閉まり、面倒くさそうに目の前の踏み切りを電車が通過していく。
今度こそ、という期待も空しく、警報機は9本目の電車の到来を告げる。

電車がホームに止まったのを確認し、私は遮断機を越えて踏み切りを渡った・・・

   
   

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