先日、認知症の生涯リスクが60歳以上で55%だというネット記事を読んだ。米国の調査では75歳以上で4%、80歳以上で20%が認知症になると言う。年を取れば取るほどその比率は高まるのであろう。楽観的な私としてはどこまでも他人事であり、自分が認知症になるなんて思ってもいない。しかし、そんな事は誰もがそう思っているように思う。少なくとも認知症になりたいなんて思っている者は1人もいないであろう。しかし、人間の脳細胞も年齢とともに劣化していくのは間違いない。自分で意識しようとしまいと、細胞が劣化すれば必然的にそうなっていくのは自然の摂理であるようにも思う。
我が両親は2人とも今年で88歳である。2人ともやはり認知能力は衰えてきている。特に短期記憶に関する衰えは顕著である。先日、四万温泉に行ったが、父は参加しなかった。はじめ、父の認知能力の衰えもあり、心配した母が「父を1人残しては行けない」と言うので、私は3人分で宿を予約した。あまり早く言ってもと思い、1週間前に父に意思確認したところ、「行く」という。念のため父が毎日見る引き出しにその旨のメモを書いて貼り付けておいた。「来週温泉に行く」と。そして前日、電話で意思確認した。その時点でも「わかった」との事であった。そして当日、迎えに行くと、「聞いていない」、「突然言われても困る」、「行きたくない」である。
旅行の用意をしていた母は一生懸命説得を試みる。「私も行くとは思わなくて言わなかったのは悪かったけど・・・」。いやいや、「1人で置いていけない」って言ったのは誰?駄々っ子のように行かないと言い張る父。「もっと早く言ってもらわないとこっちにも都合がある!」とのたまう。やむなく諦めて父を残して温泉に向かう。一泊の温泉旅行であり、腰の悪い母は歩き回れないので車で少し周辺を回る程度で帰ってくるのに、母は3日分くらいの荷物を用意し、飲み薬に至っては10日分を鞄に入れている。宿に着けば30分以上鞄の中身を出したり入れたりしている。母は複雑な宿の中では自力で部屋へ帰る事ができず、私がすべて付き添う。
そのうち私が誰だかわからなくなったりするのだろうかと思う。父は最近、物がなくなり、近所の人が盗んだと言い始めている。父は現役時代、印刷工場を経営していて、実家には今も当時の倉庫が残っている。その倉庫にしまっておいたものがなくなるそうなのである。財布を無くしたというので、銀行のキャッシュカードやクレジットカードの再発行手続きを代行した。免許証も入っていたと言うが、それはもう必要ないので仕方がないとした。ところが、しばらくして行ってみると、免許証を持っていてクレジットカードも同じものが2枚ある。どうやらどこかから出てきたらしい。問い詰めると財布をなくした事実はないと言う。
細かく挙げればきりがない。そんな両親に対しては、もう腹を立てずに温かい心で接するしかない。幾度か銀行に行って手続きをするのを手伝ったら、窓口の行員さんに顔を覚えられてしまった。そして先日、またキャッシュカードをなくしたと父が銀行に行ったところ、「息子さんに相談してくれ」と言われて追い返されたと憤慨していた。もちろん、そのキャッシュカードはその後ちゃんとどこかから出てきた。いずれ自分もそうなるのだろうか。どうしたら防げるのであろうか。両親ともそれぞれの祖父なり祖母なりが認知症になった姿を見ている。自分が同じようになりたいとは思っていない。
自分が自分でなくなるというのは、実に怖い事である。たとえ手足が不自由になろうと、病気になろうと、意識だけは最後まで自分自身でいたいと思う。しかしながら、最近仕事でも部下に物忘れを指摘される事がしばしばある。同じ話を2度したり、同じ事象に対して違う指示をしたり。今は半分笑って済まされているが、そうなると自分は大丈夫と根拠のない楽観はできないように思う。以前はよく読んでいた本も、父は覚えられなくて読むのをやめてしまっている。自分もそうなるのだろうかと考えると恐ろしくなる。最後は病院のベッドであっても、本を手元に置き、タブレットで映画を観続けられるなら、構わないのであるが・・・
「頭を使っていれば大丈夫」という話を聞き、脳トレなんかもいいという話がある。しかし、イギリスのサッチャー元首相も認知症になったと聞くと、大丈夫とも言えないと思う(レーガン元大統領が認知症になったのにはあまりショックを受けないが・・・)。敬愛する祖父は89歳で亡くなるまで頭はしっかりしていた。いつまでも元気でいられるのが一番であるが、そうでなくてもせめて頭と目だけは最後までしっかり維持していたいと心から思う。「抜け殻」となってしまうことは避けたい。両親にも長生きしてほしいと思うが、抜け殻になってまでとは思わない。
祖父のように最後まで自分自身でいられるであろうか。医学の進歩に期待するだけではなく、自分自身も面倒がらずにできる事があるならやろうと思う。このブログも何かの役に立つのであれば続けよう。願わくば最後の日まで雑感をつぶやきたいと思うのである・・・
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