2025年5月25日日曜日

部下からの評価

 我が社も3月に上半期を終え、現在上期の社員評価を行っているところである。期の初めに立てた目標の達成度から日頃の貢献度にわたって上司と部下とが個人面談を行なう形で実施する。我が総務部では、まず課長が部員と面談を行い、私がそれを踏まえて最終評価を決定する。主たる評価は課長が行い、私はその結果の報告を受けて最終評価を決定するのである。その際、いつも一つだけ課長に注文をつけている。「私に対して不満に思っている事を聞いてほしい」という事である。評価は上司が部下に対して一方的にするものだけでもあるまい。部下も言いたい事があるだろうという思いからである。

 世の中には部下が上司を評価する「360度評価」というものがある。我が社は取り入れていないが、個人的に興味があるし、内心自分はいい上司であるつもりでいるので、批判などされないだろうという思いもあった。そして課長との面談でその内容を聞いた。そうしたところ、思いもかけず結構な批判が寄せられた。

  1. 自分で指示したことを忘れるので仕事がやりずらい
  2. 部の新人に対する指導が厳しく、部の空気が悪くなる
  3. 電話等との会話も厳しい時があり、聞いていて不快
  4. 部下の仕事をもっと把握してほしい
  5. 部下の意見が通らないのは仕方がないが、せめて聞くふりくらいしてほしい
聞いていったい誰の事だろうと思わず思ってしまった。

 1に関しては自覚もあって大いに反省しているところである。3も忙しい時にセールスの電話がかかってくると、ぞんざいな対応になる事があるのも事実である。しかし、それ以外はまったく身に覚えがない。新人の指導については、このご時世であり、パワハラには注意しているし、心の病に罹られても困るので穏やかに指導しているつもりであった。部下の仕事も把握しているつもりだし、意見もきちんと聞いているつもりであった。「何で?」という反論が心の中に湧き上がってきた。

 しかし、「評価は他人が下したものが正しい」という故野村監督の言葉を日頃から信奉している身としては、自らの思いをグッと抑えないといけない。実際、身近にいる部下がそう感じているとしたら、それは自分の思いよりもより事実に近いのであろう。自分に対する批判というのは誠にこたえるものである。自分が正しいと思っていて、その通りに行動しているのに、そう捉えてもらえない。なぜなのかと考えてみても、それが他人にはそう見えていないという事は、どちらが正しいかは考えるまでもない。

 人は自分の顔を見る事はできない。見ようと思えば鏡を見るしかない。その鏡に向かって、自分はこんな顔ではないと言ったところで始まらない。それが自分の顔なのである。鏡がおかしいというのも的外れ。であれば部下の意見も事実として受け止めねばならない。今回改めて思ったのは、自分は意外とクヨクヨするタチであるということ。思いもかけない部下からの批判に心は凹む。これを見る限り、自分はいい上司であるという幻想は捨てないといけない。それにしても遠慮なく言ってほしいと言ったからでもあるが、遠慮ないなぁと思ってしまった。

 しかし、クヨクヨしても反発しても仕方がない。いい空気の中でみんなに仕事をしてもらうには自分も指摘されたことを直さないといけない。多分、それは家庭内で私に対して妻が不満を感じているところでもあるのかもしれない。人には自分ではわからない「外から見た自分」というのがある。内から見た自分は有能で思いやりがあって、部下思いのいい上司なのであるが、外からはそうは見えないという事も大いにあるだろう。そこは真摯に受け止めようと思う。

 それにしても自分にもいい面はあると思うのだが、それはそうでもないのだろうかと思ってみる。しかし、振り返ってみれば、普段言いたくても言えない批判を言ってくれとお願いしたのは自分であるが、批判だけではなくいい面も挙げてと言えば良かったと今更ながら思う。きっとよく見えている部分もあるはずである(たぶん・・・)。それも合わせて聞けていたら、少しは慰められたかもしれない。部下からの指摘は半年後の評価で少しでも減るようにこれから心掛けようと思う。現時点ではいい上司になれていなくても、これからなれる可能性はまだまだある。

 会社の業績も大事だが、足元をもう一度見つめ直し、みんなが気持ち良く働けるような環境づくりに努めようと思う。それと合わせて、今度は「良い点も挙げて」というのを忘れないようにしようと思う。昔から私は「褒められて伸びるタイプ」と自認しているがゆえに、それがあれば励みにもなる。これからも部下からの評価を大事にしたいと思うのである・・・


Gerd AltmannによるPixabayからの画像

【今週の読書】
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