2022年12月25日日曜日

税制度に思う

 会社で経理の仕事をしている人は、「インボイス制度」というものを目にし、耳にしていると思う。私も知ってはいたが、来年の10月からスタートという事でまだ時間はあるし、顧問税理士さんに言われるまま「適格請求書発行事業者」の登録をして放置していた。しかし、一応頭に入れておかねばと思い、詳細を確認した。その結果、これはなかなかよく考えた「消費税徴収システム」であることがわかった。制度改定にはそれなりの理由があり、狙いというものがある。そういう意図がわかると新しい制度の理解も進む。

 通常の消費税は、例えば売上が150万円ある場合、売上150万円+消費税15万円の合計165万円を相手から受け取る。そのうち消費税15万円は後日納税する。次に支払いが100万円ある場合、100万円の原価に加えて消費税10万円の110万円を支払うことになる。この取引の利益は50万円(150万円-100万円)、後日税務署に納税する消費税は5万円(15万円-10万円)となる。インボイス制度が始まった場合、請求書等にインボイス番号を明示することで、この会計処理が認められる。これだけだと何の変更もない。ただインボイス番号の明示という面倒が加わるだけである。

 変更があるのは、インボイス番号を取得していない業者との取引となる。支払いについてこれまで通り110万円支払っても、「原価100万円+消費税10万円」とは認められず、「原価110万円」とみなされてしまう。これはつまり、利益が40万円(150万円-110万円)に減り、納税額が15万円(15万円-0)に増えることを意味する。そうなると、適格請求書を発行できない業者との取引上は大きく損となる。これを防ぐとしたら、取引相手に「適格請求書発行事業者」の登録をしてもらうか、消費税を支払わないようにするしかない。

 しかし、「適格請求書発行事業者」の登録をすると、当然ながら消費税を納税しなければならなくなる。影響が大きいのは、これまで消費税を免除されていた年間売上高1,000万円未満の事業者である。年間売上高1,000万円未満の事業者の場合、消費税の納税は免除されていたため、これまでは消費税を受け取ってもに納税義務がないからそのままもらえていた。いわゆる「益税」というやつである。これがこれから認められなくなる。

 とここまで考えてくると、今回のインボイス制度導入の目的は、「益税」をなくすことなのだなと理解できる。税収を何とか増やそうとする政府が、増税となると反発必至なため、何とか搾り取ろうと知恵を絞ったのだろう。それではこれが小規模事業者いじめなのかと言うと、そもそも「益税」自体がおかしいと言えるわけで、それを正すという意味ではおかしなこととは言えない。小規模事業者の立場からすれば反論はいろいろあるかもしれないが、「猶予期間」が終わったと諦めるしかない。

 また、これとは異なるが、税制としておかしいと感じるのが、事業承継に伴う課税である。事業承継とは、平たく言えば社長の交代である。中小企業の場合、社長の交代は会社の株式の譲渡を伴う。例えば最初に1,000万円を出資して会社を設立し、30年経って引退するに際し、出資した会社の株式を次の社長に譲渡する場合、利益の蓄積状況等によって株式の評価がなされる。その結果、5,000万円とされた場合、5,000万円未満で次の社長に譲渡すると、差額分を課税されてしまうのである。

 税務署的には、会社の価値が上がっているので、それは当然という考えだと思うが、創業社長が出資したのは、1,000万円であり、1,000万円で譲ればそこに利益は生じない。次の社長も1,000万円でも大変だが、5,000万円と言われればもっと大変であり、社長という重責の他に大きな資金負担を強いられることになる。1,000万円で譲渡できればそれだけ事業承継がスムーズになる。このほかに銀行借り入れがあれば、社長には連帯保証という重荷も生じる。

 我が社も近い将来、社長の引退という事態に備えないといけない。しかも、後継者は社内昇格となるため、なるべく資金負担を軽くしたいという考えがある。こんな税制があると妨げにしかならない。多くの中小企業の事業承継が親子間となるのも当然と言える。そうは言っても、税務署側にも言い分はあるだろう。1,000万円で事業承継ができるようになると、今度はそれを相続対策に利用する輩が絶対出てくる。財産を会社に移しておけば相続税逃れができることは容易に想像ができる。

 税制と節税はイタチごっこ。税金を納めたくない者はあれこれと頭を捻って税制度の隙間を縫おうとする。一方の税当局はそれを防ごうと制度を変更する。「なぜそうなっているのか」という裏側をあれこれと考えてみると、逃れようとする者と捕まえようとする者の争いが垣間見れる。面白いなと思いつつ、我が社の事業承継はどうしようかと考えると悩ましい。こちらは節税ではなく、純粋な社長の座のバトンタッチ、しかも親子間ではなく社内昇格者との間であり、ハードルは高い。いかにしてこのハードルを越えるか。これからいろいろと知恵を絞らないといけない。

 税金は世の中には必要なものだというのは誰もが理解していると思うが、されど誰もが払いたいとは思わないというもの。取る方も大変だとは思うが、場合によっては事情を勘案して欲しいと思う。まだ時間はあるので、ゆっくりと知恵を絞りたいと思うのである・・・

Gerd AltmannによるPixabayからの画像 

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