2016年7月31日日曜日

ドラマ『家を売る女』から学ぶ

 普段、ドラマなど観ない私であるが、たまたま観たら面白くて続けて観ているドラマが、『家を売る女』である。ある不動産仲介会社に勤務する女性営業チーフのドラマである。基本的にコメディなのであるが、主人公の三軒家万智の働く姿は、見ていてなかなか考えさせられるところが多くて、ついつい観てしまっている。

 一つは、その提案力である。これは別のところに書いたので繰り返さないが、相手の要望に応えるだけなのは以前も書いた通り最低限のスタンスで、他所と競争となったら、ちょっと気の利いた相手だと絶対に勝つことはできない。私などライバルがこういうスタンスだったら、大喜びしてしまうだろう。相手自身気がついていないニーズを捉えて提案できてこそ、「競争力のあるプロ」となれるのである。

もう一つは、逆に欠点とでもいうべきところである。この三軒家チーフはとことん個人プレー主義。部下の教育を兼ねて三軒家チーフの営業に若手を同行させようとする上司(課長)に対し、面と向かって反論する。「私の仕事は家を売ることで部下を育てることではない」と。とにかく「職場は一つのチーム、職員は皆チームメイト」と、ごく当たり前の感覚を持つ課長はやりにくくて仕方がない。まぁもともと不動産仲介業者という業種は、インセンティブで動く個人業者の集まりみたいなところがある。三軒家チーフの主張もある意味当然なのである。

3話では、同僚が売りあぐねていた外国人向けマンションを、視点を変えて大家族向けにSNSで販促する手法で三軒家チーフが売る。そして売り上げの成果を担当2名と三軒家チーフとで3等分しようと提案する課長に対し、三軒家チーフはあっさり「売ったのは私です」と自分だけの成果だと主張する。3物件の売り出しに際し、課長はそれぞれの物件に担当者を割り振り、三軒家チーフにはそのすべてのサポートに回るように指示するのだが、三軒家チーフは全て自分が売ると主張する。

仲村トオル演じる課長の考えることはごく常識的なことで、私がこの課長の立場でも同じ指示を出すであろう。そしてその指示に従わず、ただひたすら個人で家を売る三軒家の存在は、「仕事はできるが厄介な存在」であることは間違いない。こういう部下を持ったらどうすればいいのだろうか。「厄介だ」と頭を抱えているだけでは、「使えない上司」のレッテルを貼られてしまう。
私が課長だったら、「評価方法を変える」ことで解決を図るだろう。

この会社では、各人の成績は各人が稼いだ「仲介手数料の合計額」で表しているようである。すなわち、家を売った場合、その売買価格によって仲介手数料が得られるが、自分が売った家の仲介手数料を成績としているのである。つまり、各人の成績(多分これで賞与の額とか昇格とかが左右されるわけである)がこのように評価される以上、三軒家チーフの行動は理にかなっているわけであり、部下の教育を一生懸命やってもボーナスは上がらない。これだといくら課長が「チームプレー」を説いても、従わせるのは難しいだろう。

私が課長だったら、営業チーフの成績は「自分がサポートして部下に売らせた仲介手数料」で評価するように改めるだろう。これなら三軒家チーフがいくら1人で売っても、それは「評価対象外」となる。勢い、三軒家としては各案件ごとに部下を引き連れ、指示を出し、クロージング(契約)まで持っていかざるを得なくなる。チーフのノウハウを直に学べば、部下も自然と成長するはずで、まさに課長が理想として考えているチーム営業が実現するわけである。

同じ不動産業界のドラマゆえに、たまたま観始めたドラマであるが、非常に面白い。と言っても、「いろいろ考えるヒントに溢れている」という意味で、ドタバタの展開が面白いというわけではない。まぁドラマの見方は人それぞれだし、ビジネス視点で観ても、ストーリーで観ても、北川景子に見とれて観ても、それはそれでいいわけであるから、それぞれの見方で楽しめばいいと思う。。

「三軒家チーフを部下に持った課長の視点」で観ても、「三軒家チーフを上司に持った部下の視点」で観ても、「自分だったらどうするか」と考えながら観ると、単なるコメディも学びの多いドラマとなる。これからしばらくは、毎週水曜日を楽しみにしたいと思うのである・・・















 【今週の読書】
 
   

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