2010年9月15日水曜日

懐かしき紫煙

タバコについてもう少し。
前回も書いた通り、初めてタバコを吸ったのは高校生になった時のこと。
従兄が布団の中で吸い方を教えてくれたのだ。
「一回吸って軽く口の中に蓄えてから肺に吸い込むようにする」と教わった。
知らないと一呼吸で煙を吸いこんでいるイメージがあるが、厳密に言うと2段階で吸いこんでいるのである。

大学一年の時に掃除のアルバイトに行った時のことだ。
たまたま一緒になった同じ大学の同級生がタバコをふかしていた。
「なんかへんだな」と思ってよく観察したら、その彼は煙を口に入れて次に吐き出していたのだ。
吸いこむたびにほっぺが膨らむ。
そしてプフォーと吐き出す。

見ていて笑い転げそうになった。
彼は煙を肺に入れていなかったのだ。
真面目そうな彼だったから、子供の頃から勉強一筋で、たぶんタバコなんか吸う友達も、ましてや吸い方を教えてくれる従兄もいなかったのだと思う。
20歳になって、俺も大人になったからとタバコを吸おうと思ったのだが、見よう見真似で吸い方がわからなかったのだと思う(あるいはひょっとしたら、体に悪いからそういう吸い方をしていたのかもしれない)。笑い転げそうになった私だが、従兄がいなければ彼と同じ事をしていたに違いない(といっても高校の友達が教えてくれたかもしれないな)。

思えば従兄にはタバコも酒も教えてもらった。
学校の勉強は教えてくれなかったが、こうした事を教えてもらった恩恵は計り知れない。
「彼女ができた」と聞いた時には、どんな付き合い方をしているのか、おばさんの目を盗んで彼女を部屋に連れ込んで、それから・・・なんて話を、目をランランと輝かせて聞いたものである。

味を覚えるといろいろと自分に合ったタバコ、うまい吸い方などを研究するようになった。国産、洋モク、葉巻といろいろ試した末、一番気に入ったのがセブンスターと赤い箱のマルボロだった。
ダメだったのがメンソール。
あれはタバコの本来の味がまったくわからなくなる。
どこがどういう風にいいのだろうと今でも疑問だ。

「食後のコーヒーとともに吸うマルボロ」
これが一番うまいタバコだった。
余談だが、コーヒーと一緒に吸うというのは意外に好きな人が多いようである。会社でも、「タバコをやめた途端、コーヒー代が激減した」という人がいる。いつも喫茶店でタバコを吸っていたからだそうである。私も家に帰ってきてから、食後のコーヒーと一緒にタバコを吸う一時が、まさに至福の一時であった。

あの時代、身の回りでもテレビでもタバコはいたるところで吸われていた。
松田優作のジーパン刑事だって最後にタバコを咥えて息絶えたし、映画やドラマの二枚目はみんなカッコよくタバコを燻らせていた。
多感な時期の若者が真似するわけだ。

今では喫煙族は肩身が狭いことこの上ない。
個人的にはまったく困る事もないのであるが、どういうわけであろうか、時折、独身寮にいたあの頃、疲れて帰りついた部屋で一人食後のコーヒーとともに燻らせていたマルボロの煙が懐かしく思う時がある。そんな時、たまには吸ってみようかなと思うのである。

とは思うものの、買いに行ってもタスポはないから販売機では買えないし、高校生の頃付き合っていた彼女にもらったライターは実家のロフトのどこかにはいったままだし、灰皿はとっくに処分したしで障害が大きい。なにせへそ曲がりで天の邪鬼の私ゆえ、時代が嫌煙なら俺は喫煙と思わなくもない。いずれ長い休煙期間が終わる時が近いかもしれないと思うのである・・・

Life is beautiful!


【本日の読書】
「これからの『正義』の話をしよう」マイケル・サンデル
「生きっぱなしの記」阿久悠
    

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