2024年9月1日日曜日

取締役部長の問題点

 我が社では役員が3人いる。社員100名の中小企業では普通だし、十分だと思う。役員3人はそれぞれ開発現場、営業、人事・総務・経理を担当している。私と営業担当の役員は「部長兼務」である。中小企業故に人がいない事もあって、どうしても兼務せざるを得ないのである。また、会社法で企業には取締役が最低3人必要であり、中小企業では役員の兼務も珍しくはないと思う。しかし、取締役と部長とは厳密には相容れない関係であり、本来兼務すべきものではないと思う。

 なぜなら、取締役は、簡単に言えば「雇う立場」であり、部長は「雇われる立場」である。両方を兼務するのはおかしな話である。その弊害が我が社にも見られる。現場担当の取締役(元現場の部長である)がどうも取締役としての役割を果たせていないのである。と言っても、仕事をサボっているわけではない。きちんと仕事はしているし、部下の管理も顧客対応も問題はない。ただ、それは言ってみれば「部長の仕事」であり、取締役の仕事ではないのである。

 新卒で入社し、現場で叩き上げの彼は、いまだ仕事のやり方は部長時代と変わっていない。本来、部長から取締役に昇格した時に、これから何をするべきか、役員の仕事とは何かをよく考えるべきであったのであるが、それをせずにそれまでの延長上で来てしまっているのである。もっとも、取締役と言っても「部長兼務」であったため、必然的にそれまでの仕事をそのままやる事になり、そういう意識も持てなかったのだろうと思う。

 中小企業では仕方のないことかもしれない。役員(正式には取締役)は一種の名誉職のようになってしまっているのだろう。私が学生時代アルバイトをしていた防水工事の会社は社員が4人くらいだったが、アルバイトを引き連れて現場に向かう人は「専務」と呼ばれていた。役割的には係長と言ってもおかしくはなかったから、さしづめ専務兼部長兼課長兼係長といったところだったのだろう。

 それで問題ない企業規模であれば、役職なんてただの飾りであるが、規模が大きくなってくると、役割は意識しないといけない。我が社では経営計画を策定し、それを実行に移すといったところで役員としての役割が出てくるのである。ただ、そこも考えようで、私などは初めはただの部長として今の会社に入社したが、もともと銀行で中小企業については経営的な見方を常にしていたので、そういう見方のまま入ったから、部長でありながらも役員的な言動をしていた。それゆえに役員に引き上げてもらったという経緯もある。

 それは能力というよりも経験であり、私も現場上がりだったら「部長の思考」が抜けなかったかもしれない。社員から役員に昇格する時、一旦退職して退職金をもらい、そして株主総会の承認を得て取締役に就任する。我が社では役員になれば会社の株を持たされる(買わされる)。それを単なる事務手続きと意識してしまうと、役員になる意味というものが理解できないまま役員になってしまうかもしれない。

 会社を客船に例えるなら、役員はブリッジで目的地を決め、航路を決定し、それを船員に指示する役割である。船員はその指示に基づいて各自の持ち場で船がきちんと運航できるようにするのである。当の部長は、例えて言えば、現場に出突っ張りでブリッジに上がってこない状態と言えるだろう。社長へのホウレンソウ、経営方針をめぐり時に社長と議論し、相談して会社を有るべき方向に導いていく。そんな役割がある事に気づいていない。

 「課長になる時」、「部長になる時」、「取締役になる時」それぞれその意味を十分説明し、よく理解してもらってから昇格させるようにする仕組みづくりが必要であるなと考えている。各自に任せていると、かの取締役のようになってしまうだろう。中小企業とは言え、そのあたりはしっかりと意識して仕組みづくりをしていかなければいけない。さしあたり、かの役員とは一度膝詰めで私の考えを伝えなければいけないなと思うのである・・・


Wilfried ThünkerによるPixabayからの画像

【今週の読書】
離職率ゼロ!部下が辞めない1on1ミーティング! - 竹野潤 ひこばえ (上) (朝日文庫) - 重松 清 ひこばえ(下) (朝日文庫) - 重松 清





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