2024年9月4日水曜日

論語雑感 泰伯第八 (その7)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感
【原文】
曾子曰、士不可以不弘毅。任重而道遠。仁以爲己任。不亦重乎。死而後已。不亦遠乎。
【読み下し】
曾(そう)子(し)曰(いわ)く、士(し)は以(もっ)て弘(こう)毅(き)ならざる可(べ)からず。任(にん)重(おも)くして道(みち)遠(とお)し。仁(じん)以(もっ)て己(おの)が任(にん)と為(な)す。亦(ま)た重(おも)からずや。死(し)して後(のち)已(や)む。亦(ま)た遠(とお)からずや。
【訳】
曾先生がいわれた。「道を行なおうとする者は大器で強敵な意志の持主でなければならない。任務が重大でしかも前途遼遠だからだ。仁をもって自分の任務とする、なんと重いではないか。死にいたるまでその任務はつづく、なんと遠いではないか」

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 昔の偉人は生涯をかけて追及する道をあれこれと考えていたのであろう。「仁をもって自分の任務とする」というのは大きな目標で、並大抵のことではできないと思う。それに比べて一般庶民は日々の暮らしに追われ、これといった目的などなく暮らしているのだろうと思う。かく言う私もそんな庶民の1人である。これといった大きな目的があるわけでもなく、ただ日々を過ごしていると言える。

 しかし、「仁をもって自分の任務とする」と言えば大げさであるが、ある程度はみな自分の信条というものを持っているのではないかと思う。私の場合、独身の間は自由気ままであったが、結婚してからは、働く目的、生きる目的の第一は家族のためになったし、子どもが生まれてからはその対象が子どもに広がっている。子育ての目的は自立した人間になる事であり、それは今のところうまくいっているように見える。

 本来的にはあまり人と関わらずに生きていきたいところであるが、この世の中ではそうもいかない。人間関係は大事であるが、基本的に他人には迷惑をかけず、関わった人には少しでも関わって良かったと思ってもらえるように振る舞っているつもりである。会社では高い給料をもらえるように自分のパフォーマンスを意識しているし、会社の人たちには少しでも働きやすい会社になるように心がけている。

 社会人になった時、当時の銀行というところは、行員に辛い思いをさせたがっているのではないかと思うような環境であった。先輩行員もストレスは後輩にぶつけて発散しているのではないかというくらい意地の悪い人がいたし、サービス残業は当たり前だし、若手はまるで奴隷のようであった。自分はそういう先輩にはなるまいと心に誓い、それを今も実践している。社員がいかに快適に働けるかを意識して日々の仕事をこなしているのが現状である。

 それは決してきれいごとではなく、きちんとした打算に基づいている。いい環境であればパフォーマンスも上がるし、みんながベストパフォーマンスで働いてくれれば会社も安泰であるし、それによって自分の高い給料も維持できる。自分の気分もいいし、まさに一石二鳥である。けっしてよそ行きのきれいごとを言っているのではなく、自分の利益についてあくまで追求した上での考え方である。

 人生は長く、途中で何があるかわからない。年齢とともに働ける範囲は狭まってくるし、私も今の会社を離れたら今の給料を維持できないだろう。であれば今の会社で全力を尽くすしかない。家族のために働く任務は重大でしかも前途遼遠である。死に至るまで続くという事はないが、子供たちが独立して(あと3年)、住宅ローンを完済し(あと10年)、いくばくかの老後の資金も貯めようと思えばなんと遠いではないか。

 曾子のように大きな任務ではないが、庶民には庶民なりの大きな任務があると思う。それは私1人の事ではなく、大概の人にはそれが当てはまるのではないかと思う。ただ、家族を養うためではなく、「どうやって」というのもある。私が入行した当時の先輩行員もそうであったが、後輩相手にストレス発散しているような人たちは違うだろう。少なくとも尊敬の念のかけらすら持てなかったが、生き方も大事だと思う。

 話題になったドラマ『不適切にもほどがある』の中で、ハラスメントを防ぐには相手を「自分の娘だと思う」とすべきとやっていたが、まさにその通りだろうと思う。私の娘もちょうど今年社会人になったが、我が社の若手社員を見ていると、娘も職場で私のような上司に仕えているのかもしれないと思うと、若手社員に対する対応もどうするべきかとおのずと決まってくる。そういう意識で若手とは接し、年齢の近い同僚ともその延長で考えれば自然と丁寧な対応になってくる。

 「仁」などという大きなものではないが、それが現代の「仁」と言えるかもしれないし、そういう生き方が「道」なのかもしれない。と、こじつけてみる。まぁ、偉人とは程遠い庶民であるし、庶民なりに人に対して恥ずかしくない生き方を維持していきたいと思うのである・・・

lee seonghakによるPixabayからの画像


【本日の読書】

離職率ゼロ!部下が辞めない1on1ミーティング! - 竹野潤 戦争と経済 舞台裏から読み解く戦いの歴史 - 小野圭司 ひこばえ(下) (朝日文庫) - 重松 清







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