2022年9月25日日曜日

役員合宿

 転職して1年で役員になった。ありがたいことに私の働きを認めてくれたのである。自分でも少し誇らしいところがある。小さい企業だから役員と言っても大したことはないが、それでも同じ会社の中でも役員になれる人なれない人がいるわけであるから、少しは違うというところであろうと思う。そして最近、「役員合宿」をやろうかという話が社長から出てきている。休みの日にどこかの宿に泊まり込んで1日議論しようというのである。私は迷うことなく賛成している。

 休みの日に仕事仲間で集まるという事は、実は銀行員時代に何度か経験がある。あれはたぶん、56年目くらいの若手時代のことである。支店内の男(総合職)全員が支店の近くの会議室を借り切って朝から議論をした。内容はもう忘れてしまったが、翌期の業績目標達成のための施策についてあれこれ議論したように思う。と言っても、下っ端だったから議論を仕切るでもなく、むしろ聞き役中心で、たまに問われるがままに意見を言うくらいだったと思う。積極的姿勢など皆無で、はっきり言って嫌々ながらの参加であった。

 当時の私は、休みの日はプライベート100%という考え方で、従って休みの日に昔はよくあった運動会だとか、新人歓迎のバーベキュー大会だとかが嫌で仕方がなかった。仕事なんて平日の勤務時間中にやるものだろうと。何が悲しくて休みの日にまで会社の人間と顔を合わせないといけないのだと考えていた。仕事に対する考え方も今とは随分違っていて、金曜日の夜はハッピー、日曜日の夜は憂鬱という日々であった(今は金曜日の夜も日曜日の夜もハッピーだ)

 そんな私がいつの間にか休みの日に積極的に合宿をやろうと言っているのだから、あの頃の私が今の私を見たら腰を抜かすかもしれない。まぁ、遊びたい盛りの若者と落ち着いてしまった中年男との違いは大いにあるだろうが、仕事に対する考え方も随分変わっている。何より、「やらされている」感が100%なくなっていることが大きい。すべて自分から動いているので、自分が必要性を感じる以上、休みの日であろうと関係はないのである。ただ、気になるのはシニア・ラグビーの試合日程との関係だけである。試合は仲間にも迷惑をかけるし、休みたくない・・・

 なぜ、平日にやらないかと言うと、それは「そんな時間がないから」である。そもそも合宿の必要性を感じたのは、役員間での考え方の違いによるもの。考え方の違いそのものはあっても構わないが、正確に言えばよって立つところである。そもそも「取締役とは」という考え方が互いに違っていたら、議論が噛み合わない。それはボクサーとレスラーとが試合をやるようなもので、互いのルールが違うまま同じリングに立っても試合が成り立たない。試合として成立させるためには、まずルール会議を開かなければならない。今回の役員合宿も、言ってみればそのルール会議なのである。

 取締役とは、会社の経営者であり、1人ひとりが社長という意識を持っていないといけない。社長であれば、誰かに指示されて仕事をするのではなく、自ら方向性を決めて指示を出さなければならない。それに社長に仕事の範囲などない。俺は製造出身だから営業なんて知らないなんて言っていたら経営なんてできない。自分でやる必要はないが、責任をもってやらさないといけない。もちろん、取締役として担当分野というのはあって然るべきだが、会社に起こる事象にはすべて関心を持たなければならないのは間違いない。

 ところが、叩き上げの取締役となると、指示されることに慣れてしまって、「決めるのは社長」という意識から抜けられない人がいる。特に部長兼務の取締役となると、思考が部長のままで、自分の部署だけが責任の範囲内という意識から抜けられない人もいる。そうなると、隣の部署が目標達成できなくてもそれは自分の責任ではないという意識になってしまう。それが原因で会社としての目標を達成できなければどうするのか。「経営者としての意識」があれば必然的に「自分の問題」として考えることになる。

 そうしたことは、そもそも目標自体をどう考えるのかとか、3年後に自分達はどうなっていたいのかだとか、そうした「ルール=土台」が共通でないと議論が噛み合わない。同床異夢ならいいが、異床異夢ではダメなのである。そしてそうした土台作りは、とても会議室で12時間の会議で決められるものでもない。トコトンじっくり時間無制限の一本勝負でないとダメであると思う。そういう場は職場の会議室では難しく、やはり合宿のような仕事を気にしない環境が必要である。

 思えば、学生時代に経験したラグビーの合宿は楽しいものであった(大学の場合だが・・・)。合宿と言えば、1日練習漬けで嫌がる者もいたが、私は気に入っていた。死ぬほど練習がキツいといわけでもなかったということもあるが、仲間と同じ空間・時間を共有する一体感が良かったのである。今の会社の役員でどこまで親密にやるかという問題はあるが、まぁ一度はいいかもしれないと思う。少なくとも、銀行員時代の何の主導権もないものと違い、何より主体的に参加できる。他の役員には嫌がられるかもしれないが、結果としてきちんとした土台が作れればそれでいい。

 ちょっと楽しみにしたいと思うのである・・・


Stefano FerrarioによるPixabayからの画像 

【本日の読書】

  





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