2022年9月11日日曜日

100年

 我が母校の大学のラグビー部は今年創部100周年を迎えた。先日、それを祝う式典があり、日頃OB総会などにはとんとご無沙汰している私も参加してきた。「100年に一度、すなわち一生に一度」という誘い文句に誘われたところもあるが、自分の居場所の一つでもあるから大事にしたいという思いもある。我が部の創部は関東では4番目の古さであり、実力的には強豪校の足元にも及ばないが、歴史だけは肩を並べているのである。何か一つでもそういうものがあると誇らしく思うものである。

 100年前と言えば大正11年。イギリス発祥の紳士のスポーツであるラクビーなどほとんど誰知るというスポーツだっただろう。それをやろうと言って仲間を集め、部を創ったわけである。練習はできても試合相手は3校しかないわけであり、当時どんな様子だったのか想像もできない。そもそもコーチなんかいなかっただろうし、ルールブック片手にいろいろと試行錯誤したのかもしれない。やがて続々と各大学にラグビー部が創設され、「対抗戦」が始まる。当時は「優勝」なんて概念もなく、ライバル校との「定期戦」が晴れ舞台であったという。

 以来、100年。連綿と後輩たちに受け継がれて本年を迎える。今は鬼籍に入った創部メンバーの先輩たちはこれを知ったらどう思うだろう。私が入部したのは1984年。創部から62年が経っているが、当時はあまりそんな歴史認識は持っていなかった。年配のOBがたくさんいるなという程度である。関心と言えば自分達の成績がすべてであり、夢中になって4年間を過ごした。今は人工芝に覆われたグラウンドだが、人工芝の下の土の地面には私の汗と思い出とが染み込んでいる。部室には私が使っていたロッカーが今でも使われている。

 時間が経てば100年経つだろうというのは、実は大いなる過ちである。部員が減れば試合ができなくなるし、当然廃部という危機も訪れる。創部メンバーに続いて入部者がいて、それが途切れることなく続いたからこその100年である。特に我が母校は国立大学ゆえに推薦というものがなく、すべて試験に受からなければならないという「壁」がある。私の高校からは、私以降入部者がいない。受験した後輩はいたのであるが、残念ながら合格できずに終わり、「壁」に阻まれてしまった。そうした「壁」を突破した者が続いた末の100年なのである。

 まず試験を突破しなければならないという壁があり、次にラグビーをやろうという意志がないといけない。実はせっかく壁を突破しても、高校でラグビー経験があるにも関わらず、同好会に流れてしまう学生も多い。それはそれで個人の趣味であるから文句は言えないが、体育会に入ってまでやりたいと思わないのは残念である。私も早慶明といった強豪校に入学していたら、多分体育会ではやらなかっただろうから、なんとなくその気持ちはわからなくもない。だが、強豪校とは違った良さもあり、それを知っているからこそ残念にも思う。

 強豪校には、高校の強豪校から猛者たちが集まる。私など経験者といってもレベルが違うし、もしも入部したなら、大学時代のすべてをラグビーだけに集中しないとついていけない。そこまで大学生活のすべてを注ぎ込みたくはないという思いもあり、強豪校に行ってもラグビー部の門は叩かなかっただろう。我が母校はその点、程よいレベルだったと言える。逆にだからこそ初心者でも気楽に入れてレギュラーを目指せるというのも我々の特色でもあると言える(もちろん、強豪校に初心者で入ってレギュラーになる猛者もいるが・・・)

 4年間など振り返ってみればあっという間であった。それ以後のOB生活は34年に及ぶ。もはやOBが主であると言っても過言ではない。式典には特に誘い合う事もなく赴いたが、そこで顔を合わせたのは久しぶりに会う先輩後輩と同期の面々。友人の少ない私だが、ここではあちこち声をかけるのに忙しい。来賓の中には高校のラグビー班のOBもいた。昨年70周年を迎えた高校のラグビー班もまた歴史のある存在である。どちらも自分の居心地の良い居場所であり、そういう居場所があるのが何よりも自分の喜びである。

 少子高齢化が深刻な世の中であり、これからも150年、200年と存続していくのかは不安に思うところである。たとえ続いたとしても150周年の記念式典には私はおそらく出られないだろう。式典でもらった100周年記念史にはしっかり自分の名前があった。自分は間違いなく、100年の歴史の1ページに名前を連ねている。そう思うと感慨ひとしお。それは私の2度とは経験できない4年間の証である。

 後輩たちはライバル校の中で苦戦を強いられている。昨年は全8校中の7位という成績であった。一つでも上を目指して欲しいと思いつつ、2度とは経験できぬ4年間をしっかり堪能して欲しいと思う。いつまでも歴史が続いていくのをOBの立場から応援したいとつくづく思うのである・・・


Forest WhiteによるPixabayからの画像 

【本日の読書】

 



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