2022年8月28日日曜日

新人ですから

  4月に入社した新人は、企業によって異なるところがあると思うが、たいていまず新入社員研修があって、その後実践に投入されるというのが一般的だろうと思う。新人研修の内容は企業によって異なると思うが、我が社の場合、2ヶ月コースと3ヶ月コースと二手に分かれて実施する。それぞれ外部の業者に委託をして行うが、今は助成金もあったりして資金的負担も軽くて済む。この夏、いよいよ新人たちも実践デビューしている。

 それは我が社だけではなく、当然どこの企業もであるのは日々実感するところである。というのも、営業系の電話を受けた時など、相手の感じから「新人だな」と感じられる時がしばしばあるのである。説明がぎこちなかったり(いかにもマニュアル通りに喋っていますと感じられる)、ちょっと突っ込んで質問するとすぐに答えられなかったり、言葉遣いがギクシャクしていたり(舌を噛みそうな敬語を使ったり)といった感じで、こちらもそれとわかるのである。

 その中で、気になる点がある。それはわざわざ自分から「新人です(あるいは新卒ですとか)」と申告するケースである。と言っても、「自己紹介系」であればまだ好感が持てる。「頑張ります!」という力強さが伝わってくるからである。それに対し、「言い訳系」はどうにも気になってしまう。「新人なのでわからないことばかりですけど・・・」という感じで来られるケースである。

 その気持ちはよくわかる。まだ業務に不慣れな中、1人で客先に行く、あるいは電話をかけるわけであり、「どんな人が出てくるのだろう」、「何を言われるだろう」という不安があるのだと思う。だが、「新人だから」と言ってミスしても大目に見てもらえるのは「社内だけ」である。それは、当たり前ではあるが、外部に求めてはいけないものである。外部の人間からしてみれば、電話をかけてきた相手、あるいは訪ねてきた相手が新人であるかどうかなど関係ないのである。

 「新人だからミスしても大目に見てほしい」という気持ちはよくわかる。私もそれを言い訳にした経験がある。あれは銀行に入り、最初に配属された支店でのこと。新人だから外部からかかってきた電話を真っ先に取るのが仕事の一つであったが、ある時支店長宛の電話を取り、支店長に取り継いだ。「○○様からお電話です」と。すると支店長から「何の用?」と問われた。聞いていない。そこで相手に尋ね、それをまた支店長に伝えた。すると「どういう人?」と再質問。ここで側で聞いていた先輩が慌てて私から電話を取り、丁重にお断りして電話を切った。

 ここで教育タイム。曰く、支店長宛の電話は相手と要件を確認して取り継ぐべきものとそうでないものを見分けないといけない。わからなければ支店長に取り継ぐべきか否か尋ねれば良いと。そして次にかかってきたのは僚友店の支店長。支店長をお願いしますと言う僚友店の支店長に、さっそく教わった通りに実践。「どういうご用件ですか?」と素直に尋ねた瞬間、「バカヤロウ」と怒鳴られた。支店長同士の話を何でお前に言うのかと烈火のお叱り。「ヤバい」と思ったが後の祭り。「お前は誰だ」と問われ、思わず「新入行員の○○です」と答えたのである。

 「新入行員の」と枕詞をつけた理由は、「新人だから許してください」という意味であったのは言うまでもない。後で支店長に謝りに行ったら笑って済まされたが、強烈な印象とともにいい勉強になった出来事である。それ以外に、自分から(言い訳の意味で)「新人です」と名乗った覚えはない。否、むしろ「新人だ」と思われたくないという気持ちの方が強かったと思う。それは半分、「舐められたくない」という意地のようなものだったかもしれない。

 そんなことを思い出したのも、つい最近、ある営業マンがきた事による。その営業マンは飛び込みで訪問してきたが、「自分、新人なんでよくわかってないんっすけど」と言いながら自社の説明をし、後日、営業担当から連絡させますと言って帰っていった。そして訪ねてきたのが営業担当者。若い女性であったが、きっちりと説明とセールスをして、そのサービスを試しに利用してみる事になった。そこで雑談タイムになり、最初にきた新人君の話になった時、「新人だから」という言い訳の話になった。するとその女性、「実は私も新人なんです」と。

 これにはこちらもどビックリ。こちらも若いとは思っていたが、てっきり入社数年の人かと思っていたので驚いた。何でも「新人と思われたくない」と考えているとのことであった。考えてみれば同期なのに随分と差があるなと感じてしまった。かたや新人を言い訳にし、かたや新人だと悟られまいとしている。今も既に差があるが、それはまだ小さな差、しかし、この考え方の差は先々に大きな差になると思う。こちらも自然と「新人と思われたくない」と考えて頑張る方を応援したくなる。

 日本電産の永盛会長は、「意識の差は100倍」と語っている。その通りだと思う。新人は、研修が終われば1人前という自覚を持たないといけない。「新人だから」という言い訳は、社内では通じるかもしれないが、だからと言って甘えていてはいけない。外部に対しては、それは言い訳にはならない。そういう「言い訳意識」を持っていては、成長もおぼつかない。「新人だから」という言い訳をしない。我が社の新人たちにもそういう意識を持って欲しいなと思うのである・・・

esudroffによるPixabayからの画像 

【今週の読書】

 


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