2022年3月7日月曜日

論語雑感 雍也第六(その13)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感。
【原文】
子謂子夏曰、「女爲君子儒、無爲小人儒。」
【読み下し】
子(し)、子夏(しか)に謂(い)ひて曰(いは)く、君子(なさけびと)の儒(じゆ)と爲(な)れ、小人(ただびと)の儒(じゆ)と爲(な)る毋(な)かれ。
【訳】
孔子が子夏に言った。
「お前は君子の学者にならねばならぬ。小人の学者になってはならぬ。」
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 子夏というのは、孔子の弟子なのであろう。師が弟子に学者になるにしても小人の学者ではなく、君子の学者になれと諭している。君子の学者とは、おそらく世のため人のためになる学者ということであろうと解釈する。自分のことだけを考えるのではなく、世の中のことを考えろということなのではないかと思う。それは何も学者だけに言えることではなく、あらゆる職業に言えることのように思う。君子の政治家、君子のサラリーマン、君子の医者・・・

 人間、誰でも我が身がかわいい。何よりも自分のことを優先するのは、当然と言えば当然である。ただ、それでもあえて自分以外の人のことを少しでも考えられる人が「君子」なのだろうと思う。まずは自分の配偶者、子供、親兄弟。そして友人になり、職場の同僚になり、顧客であり、袖擦り合う人であり、見ず知らずの赤の他人と君子の度合いが高まるにつれ、だんだんその範囲が広がっていく。そして世の中の人すべてとなると、もう大君子と言えるのかもしれない。

 逆に自分のことしか考えられない人というのは、小人ということになる。ではどうしたら君子になれるであろうか。日頃からそう心掛けることはもちろん大事であるが、それだけで君子たることはできるのであろうか。人間、比較的余裕のある時は誰でも君子に近づけると思う。お金を貸してくれと言われた時、1億円持っている人なら、1万円くらい躊躇せずに貸せるだろう。1万円どころか10万円でもそうだろう。しかし、10万円しか持っていない人であればどうだろう。それが2万円だったら、まず躊躇するだろう。

 君子のように振る舞うことはそう難しいことではない。余裕があれば。しかし、余裕がなければ簡単ではない。日常でもたとえば買い占めなどという行為は、明らかに自分のこと(せいぜい自分の周りの人まで)しか考えていない。震災の時などスーパーの棚から物がなくなったが、あれは万が一に備えて自分達だけ準備しようという小人的発想に他ならない。人間には自己保存本能があるから、それが悪いとは言わないが、ただ君子的ではないことは確かである。

 そうしたことは、日常に溢れている。電車の中で席を譲ったり、エレベーターに乗った時に、我れ先に降りるのではなく、他の人を優先させてその間、開閉ボタンを押していたり、職場でフロアーに落ちているゴミを拾ったり、溜まっているシュレッダーの屑を率先して捨てたり。他人のために少しだけ苦労を背負う行為が、君子的と言えば君子的なのかもしれない。自己満足で終わるのではなく、世の中の人が少しでも幸せになることを考えられる学者になれと孔子は弟子に諭しているのだと思う。

 そうした君子であることが何になるのか。もちろん、より世の中には君子と呼ぶべき立派な人も大勢いる。しかし、大半の人はそれほどではない。小人もたくさんいるだろうし、というよりそれがほとんどのように思う。世のため人のためよりはまず自分。自分にゆとりがなければ人のためになどと言ってられない訳であり、そして自分のことで精一杯で終わってしまう。それはそれで仕方ないことであり、責められるべきことでもないと思う。それゆえに、君子たる者が尊敬されるべきだと思うのである。

 自分が君子たりえているかというと、それほどではない。小人とまではいっていないと思うが、謙遜を抜きにしても君子レベルと胸を張れるものではない。それであるからこそ、君子のサラリーマンになりたいとは思う。なぜなら、会社では給料は多い方に属する(少なくとも上から数えられる)。世間的に言えば多くはないが、我が社の中という限定された中では多い方である。となれば、その分、社員のみんなのことも考えないといけない立場である。そういう自覚を常に持ちたいと考えている。

 年齢的にも50代後半となれば、自分のことだけ考えているのもみっともないと思う。もちろん、還暦を過ぎても自分ファーストな人はいるが、それは他山の石としたいところ。少しでも高みへ。君子のサラリーマンを目指したいと思うのである・・・


Thanasis PapazachariasによるPixabayからの画像 

【本日の読書】
  



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