2022年3月2日水曜日

ロシアのウクライナ侵攻を憂う

 ロシアがウクライナに侵攻してはや一週間が過ぎた。事前に相当期間に渡って警告されてはいたものの、まさか本当に侵攻するとは思わなかったので、個人的には驚きである。クリミア半島を手中に収めて満足していたのかと思っていたが、どうやらまだ火種は燻っていたらしい。なぜロシアがウクライナに侵攻したのかというと、それはウクライナのNATO加盟を阻止するためだったと言われている。

 ウクライナがNATOに加盟すると、ロシアの目と鼻の先にNATO(つまりアメリカ)のミサイルが配備されてしまうからであるとされているが、専門家によるとそれに加えてロシア側の軍事情報も渡ってしまうからだという。侵攻すれば経済制裁を受けるというのはわかっていたであろうし、それによる深刻な経済的影響もわかっていたであろうが、それ以上にウクライナのNATO加盟がロシアに与えるダメージが大きかったのであろう。

 アメリカ及び先進国は一斉にロシアを非難し、経済制裁に入ったが、そもそもそれにも違和感を禁じ得ない。なぜなら、事前にプーチン大統領がウクライナをNATOに入れるなと要求していたのに対し、応諾していれば今回の侵攻もあり得なかったはずである。本気で軍事的衝突を回避しようと思うのであれば、簡単にできたわけである。それをやらなかったのはなぜなのか。それこそが、何百年と続いている人類の戦争の原因そのものである。つまり、「領土(あるいは資源)分捕り合戦」である。

 戦争の歴史は、この「領土(あるいは資源)分捕り合戦」である。それが現代でも連綿と続いているわけである。アメリカはソ連の崩壊を機に一気に旧東側諸国を自らの軍事同盟であるNATOに引き入れ、今回さらにウクライナを引き入れようとしていたわけである。ロシアはそれを阻止しようとしていたわけであり、まさに領土分捕り合戦である。アメリカは正義の味方ぶっているが、アメリカがちょっかいを出さなければロシアも実力行使に出なかったわけである。

 ウクライナもそういうロシアの考えはわかっていたであろうし、わざわざNATOに入ろうとしなければよかったわけである。ましてやNATOは「軍事同盟」である。それも仮想敵国はロシアである。EUのような経済同盟ならまだしも、わざわざロシアの目の前で入る理由はないだろう。もちろん、だからと言って軍事侵攻するのは仕方がないなどという気はないが、そういう背景事情をきちんと理解していないと、表面的な事実だけ見ていても物事は解決しないと思うのである。

 およそ大国は今でも世界で分捕り合戦をやっている。今回は正義感ぶっているアメリカも石油資源をめぐってイラクに侵攻したのは記憶に新しい。時のフセイン政権を「大量破壊兵器を隠している」という理由をでっち上げて、圧倒的な軍事力で葬っている。ロシアを非難できる筋合いではない。そして最近は中国が台頭してきてアメリカに挑んでいる。台湾を狙い、我が国の尖閣諸島や沖縄を狙っている。どうして他人から分捕ってまでして奪おうとするのだろうか。平和に暮らそうという発想ができないのだろうか。「奪い合えば足らぬ、分け合えばあまる」というあいだみつおの言葉を教えてあげたくなる。

 それはともかく、一刻も早い停戦が望まれるわけであるが、相当の覚悟を持って軍事侵攻したロシアをストップさせるにはなかなか難しいものがあると思う。しかし、いち早く停戦させようと思えば、経済制裁よりももっと効果的な方法がある。それはウクライナをNATOには加盟させないと欧米が約束することである。まさにプーチンがそれを望んで公言しているわけであり、これほど簡単なことはない。あるいはウクライナ政府自体がそれを約束すれば済む話である。実に簡単である。

 返す返すもNATOは「軍事同盟」である。「そんなの自由だろ」というものではない。軍事同盟の加入を巡って軍事力の行使に至っているわけであるから、ある意味、責任はNATOとウクライナにもあると言える。ロシアが北方領土を返還しないのも、北方領土に日米安保に基づいてアメリカのミサイルを配備されるのを嫌っているからだと言われている。あちらでもこちらでも、アメリカの裏の顔がちらついている。大国の領土・資源分捕り合戦はいい加減にしてほしいと思わざるを得ない。

 いつまで分捕り合戦をやっていれば気が済むのであろう。みんなで譲り合って暮らせないものなのかとつくづく思うのである・・・


Gerd AltmannによるPixabayからの画像 

【本日の読書】
 



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