2019年11月11日月曜日

論語雑感 里仁第四(その8)

〔 原文 〕
子曰。朝聞道。夕死可矣。
〔 読み下し 〕
()()わく、(あした)(みち)()かば、(ゆうべ)()すとも()なり。
【訳】
先師がいわれた。
「朝に真実の道をきき得たら、夕には死んでも思い残すことはない」
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 論語の中でもこれは最も有名な言葉の1つであろう。孔子にとっては、「道(=真理?)」こそが人生をかけて追及していたもので、それがわかるのであれば、死んでも悔いはないという覚悟というか心意気を表した言葉なのであろう。果たして孔子がその目的を達成したのか否かはわからないが、そういうものってあると思う。

 さて、自分にとってそういう人生をかけて追い求めるようなものって何だろうと考えてみる。もちろん、人によってそれは異なると思うが、自分のように「夢を持たないできた人間」にとっては、ハードルの高いものであることは間違いない。ただし、何となく自分で「こんな人生を歩みたい」と思っているものはある。それが生涯をかけて追い求めるようなものかと言われればよくわからないが、あえて問われればそう答えるというレベルである。私にとって歩みたい人生とは一言で言えば「満足のいく人生」である。

たとえば自分の子供にどんな人生を送らせたいかと問われれば、やはり「(本人の)満足のいく人生」と答えるだろう。では「満足のいく人生」とはどんな人生だろうか。「何でも望むものが手に入り、何でも望むものが自由にできて・・・」と言い始めればキリがないし、現実離れした夢物語を語っても仕方がない。現実的に考えていけば、「今より少し背伸びするレベル」を目指すといったところであろうか。仕事でも家庭でも趣味の世界でも、である。

仕事でいけば、5年前に大企業を辞して中小企業に転職し、安定性という点ではまったく不安定になった。大きな客船からヨットに乗り移ったようなものと言えるだろう。嵐が来ればひとたまりもないが、その代り自分で舵取りができるので、嵐さえ凌げればエキサイティングに自由に航行できる。収入は以前から比べれば減ったが、絶対額としては悪くはない。銀行員時代とは比べ物ならないくらい自由に働けているが、会社の先行きには不安もある。これからどうなるかは、自分の腕次第である。

週末になれば、参加しているシニアチームでラグビーの練習に汗を流し、時々試合にも出る。激しいコンタクトプレーは無理だろうと思っていたが、意外と同年齢のレベルではそこそこできる。まぁ満足と言えば満足であるが、やりはじめれば今さらながらもう少し技術面でのレベルアップを図りたいと思っている。ルールも変わっているし、今のラグビーにアップデートしたいのである。できればそのあたりの指導ができる人にコーチをお願いしたいと思っているが、それがままならない。そこがもどかしいと言えばもどかしい。

贅沢を言えばキリがないが、どれもこれも今一歩の飢餓感はある。だが、それはそれでいいように思う。「これでいいや」と思えばそれ以上の進歩はない。「もうちょっと」と思っていれば、それを追い求めて少しずつ進歩できる。人から見て羨ましい人生でなくても、自分で最後に「良かった」と思える人生にしたい。できれば最後の瞬間までボケることなく意識を保っていてそう思いたい。その最後の瞬間まで「あとちょっと」を追い求め続けたい。それが折り返し地点をどこかで過ぎた自分自身の人生で追い求めたいものである。

孔子が最後に「道」を聞いたかどうかはわからないが、たぶん人生最後の瞬間まで「道」を求め続けたような気がする。「夕に死すとも可なり」という覚悟は、それほど追い求めても簡単には手に入らないものという自覚があってのものではないかと思う。自分もまだ「あとちょっと」があるし、たぶんそれがずっと続く。一歩先に行きたいと願い、一歩すすめばまたもう一歩。それを飽くことなく追及していきたい。そうして満足いくレベルに達した時、「夕に死すとも可なり」と思うのかもしれない。それは多分、人生最後の瞬間ではないかと思う。

 孔子が追求した「道」は、自分にとっては「生き方」なのかもしれないと思う。昨日よりも今日、今日より明日がちょっとずつ良くなっているような生き方。しかし、言うは易しのような気もする。しかし、そういうものなのかもしれないとも思う。手に入れられそうでいて、なかなか手に入らない。それを生涯にわたって求め続けて行く。だから手に入れば、「夕に死すとも可なり」なのかもしれない。まぁ、いろいろとあるが、試練すらも楽しみつつ、自分の「道」を追求していければいいなと思うのである・・・




【本日の読書】
 




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