2018年5月24日木曜日

日大悪質タックル事件に思うこと


日大と関西大学のアメリカンフットボールの定期戦において、日大の選手が悪質なタックルをして退場になった問題が波紋を広げている。最初は単なる悪質なプレーだと思っていたら、当の選手本人がこの行為を「監督の指示」と告白したことから、これが大問題になったものである。問題のプレーを見たが、関学のQBがボールを投げた後、間をおいてのタックルで露骨な反則行為である。私もラグビーをやっているが、ラグビーでもボールを持っていないプレーヤーへのタックルは反則である。投げ終わった直後なら、まだ「勢い」という言い訳もできるが、それでは説明のできない間があり、ここまでの露骨な反則行為には嫌悪感を覚えるものである。

ラグビーもアメフトも激しいコンタクトを伴うスポーツで、ボールを持っているプレーヤーがその最前線となる。ボールを持っているプレーヤーは当然相手の攻撃に備えて緊張状態にあるが、パスした瞬間、攻撃の対象から外れたことでその緊張がほどける。そこにタックルを食らうと無防備状態であり怪我をする可能性が高い。反則の中でも危険度が高いので、ラグビーでは同じペナルティの中でもイエローカードや酷ければレッドカードの対象になるほどであり、プレーによっては(攻撃側に有利な)前進した位置でのプレー再開となるケースもある(キッカーへのレイトタックルの場合)。

激しいコンタクトを伴うスポーツがゆえに、試合に際しては「相手を殺してやる」くらいにアドレナリンを沸騰させて試合に臨む。「殺す」は大げさにしても、相手を怪我させることについては何の抵抗もないし、むしろそのくらいしてやろうと思うのは私も経験がある。日大の選手は「潰せ」と言われたらしいが、そのくらいは当然思っていたし、私の現役時代もチーム内でそういう呼び掛けはしていた。ただし、それはあくまでも「ルールの範囲内」でだ。激しいタックルを食らわせて相手が退場にでもなれば気分は最高であるが、それは「ルールに沿ったタックルで」である。

もしもルールを越えてそれをやれば大変なことになる。まず下手をすれば乱闘になるし、試合そのものが成立しなくなる可能性もある。私も現役時代、練習試合でペナルティ行為が原因でレフリーに試合をストップされたこともある(私がやったわけではない・・・)。公式戦だったら大変だし、勝つためにやっているのにそれでは何にもならない。ルールの範囲内でやっているからこそ、お互い堂々とした「潰し合い」ができるのである。それは言わずもがなの当たり前のことで、一々断ったりはしない。「ルールの範囲内で潰しに行くぞ」なんて言わないのである。

 やった選手と指示した監督との言い分がそれぞれ対立していて、真相は闇の中である。事実は本人(それも監督)にしかわからない。世間の雰囲気的には選手に同情的で、監督に批判の目が集まっているが、そんな風潮には簡単に乗りたくないと思う。本当に「監督が指示した」なら大変な問題だし、それこそ(むしろその方が)ニュースになる。マスコミとしてはその方が好都合であり、その方向で報じるだろう。監督が無実ならニュースとしては面白くない。そんな偏見に満ちているかもしれないマスコミの報道をそうそう表面通りには受け取るわけにはいかない。なるべく偏見にまみれていない事実だけを元に考えなくてはいけないと思う。

試合前に監督(あるいはコーチ)が、表面的には「潰せ」と言ったとしても、我々もそうであったように、そこには暗黙の裡に、あるいは言うまでもない大前提として本当に「ルール内で」という気持ちがあったのかもしれない。たとえば野球でも気の弱いピッチャーに対し、「ぶつけてもいいから内角へ投げろ」という指導することはよくあることだろう。それを受けて本当にぶつけてしまったとしたら、それは本当に「悪質な指示」なのだろうか。ラグビーでも気の弱い選手に、「ペナルティを取られてもいいから思い切って行け」という指導をすることは自分にもあった。今回も(監督が主張するように)そういう可能性もあるかもしれない。プレー後に選手を労ったと報じられているが、もしもそんな指導をしていたら、結果的にペナルティを犯してしまったとしても褒める事はあっても叱責はしないだろう。

選手本人も実名を出して記者会見をするくらいだから嘘はついていないだろう。若さを考えてもそこまで狡猾だとは思えない。「監督に反則を指示された」というのならその通りに受け取ったのだろうが、監督の心中は本人にしかわからない。本当に反則行為をしてでも潰せと指示したのに慌てて取り繕って言い訳しているのかもしれないし、気の弱い選手に大げさにはっぱをかけた結果、行き過ぎたのかもしれない。いずれにせよ、真相は藪の中である。

どちらのケースも可能性があるわけであるし、それゆえにマスコミの報じる雰囲気には染まらないようにしないといけない。少なくとも、現時点ではまだ決定的な証拠は出てきていない。それがゆえに、「監督悪人説」にまみれたマスコミの報道だけを頼りに、「ひどい監督だ」と誘導されないようにしたい。別に知り合いでもなんでもない監督の肩を持つ気などサラサラないが、マスコミに踊らされるのだけは回避したい。

監督の言動より、マスコミの報道の方が信用できない私なのである・・・




【本日の読書】
 
    
 

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