2018年2月21日水曜日

裏事情


いつもテレビ東京の『ガイアの夜明け』と『カンブリア宮殿』は欠かさずに観ているが、観るのはもっぱら週末。録画しておいたのを観る形だ。そしてここのところ溜め込んでいて、ようやく先日1212日放映分の『ガイアの夜明け』を観た。タイトルは『“絶望職場”を今こそ変える!』である。その中で、ある縫製工場の外国人労働者のひどい仕打ちが紹介されていた。

被害者は、中国人実習生の女性5人。10人の仲間と2年半にわたって岐阜県の縫製工場で働いてきたが、1日平均15時間労働、土日も休みなく不当な低賃金で服を縫い続け、正規に計算すれば支払われていたはずの賃金は一人当たりおよそ630万円。たまりかねて待遇改善を求めて岐阜一般労働組合に助けを求めたところ、不利を悟った縫製工場は女性たちを解雇し、会社も破産申請してしまう。経営者は同じ場所で別会社を立ち上げて事業を継続している。実態は同じでも法的には別の会社なので、賃金の支払い義務はなくなる。債務逃れでよく使われる手である。

縫製工場には弁護士もついていて、当然ながら「合法だ!」と言って憚らない。金融債務では、社長を連帯保証人に取るから簡単には逃げられないが、給料のようなものは形式上会社を潰してしまえば支払いを逃れられる。余談だが、だから中小企業では社長の連帯保証は必須なのである。「連帯保証害悪論」を唱えている素人はこのことが理解できていない。この中国人たちは、かわいそうだが法的には絶望的だと思う。

ひどい経営者にそれに加担するひどい弁護士であるが、それだけだと表面的な気がする。経営者も確かにひどいが、その背景にはアパレル不振とそれに基づく、とにかくコストを抑えようとするアパレルメーカーの下請けいじめがあると思う。縫製料を安くしなければ受注できない。安くするためにはコストを下げなければならない。なるべく安くするには、弱い立場の中国人から搾り取るしかない。

アパレルメーカーにしても、先日読んだ『誰がアパレルを殺すのか』にもあったが、バブル崩壊以降、2/3に縮小した市場で生き残るには、製品価格を抑えなくては製品が売れない。ネットを活用して駆け上がる新興企業ならいざ知らず、恐竜のように動きの鈍い伝統企業では製品の値段を抑えるにはとにかくコストダウンしなければならず、有効な手段を思いつかないから下請けを叩かざるを得ない。下請けでどうやってコストダウンしているかなどは、純粋に知らないのか意図的に見ないようにするしかないのだろう。

また、悪質な縫製工場に加担する弁護士にしても、悪質な債務逃れであることは重々承知しているだろう。それでも引き受けるのは、もしかしたら苦しい懐事情もあるのかもしれない。制度改革で弁護士も数が激増しており、その割に仕事が増えているわけではないからとにかく仕事が欲しい。今や弁護士だから左団扇とはいかなくなっている。アップアップしている弁護士からすれば、生活の為ならそういう悪質案件でも受けざるを得ないのかもしれない。

 自分だって追い込まれたら、そういう行為をするかもしれない、と思う。独り身ならプライド優先で高楊枝でいられるかもしれないが、家族がいればそんなことを言っていられないと思う。縫製工場のひどい経営者もそれに加担する弁護士も、いつか陥る自分の姿なのかもしれない。まぁ、この番組の縫製工場は工場を立て替えていたから、やむにやまれずとは言えず、やっぱり弁護の余地はないであろう。要は「ボロを着てでも」きちんとやろうと思うかというモラルの問題だ。

 自らがそんな窮地に陥るかどうかはわからないが、たとえなっても人を踏みつけて仕事するというのはやっぱり快くない。窮地に陥っても、仲間と苦難を共にするようにしたいと今の時点では思う。いつも意識しているように、関わった人を幸せにするように働き続けたいと思うのである・・・






【本日の読書】
 
   

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