2017年1月22日日曜日

天下りを考える

文科省の組織的天下り認定

内閣府の再就職等監視委員会は20日、文部科学省が2015年、吉田大輔元高等教育局長に早稲田大教授への天下りをあっせんし、国家公務員法に違反したと認定する調査報告書を公表した。組織的なあっせん行為や、職員が監視委の調査に虚偽報告をし、隠蔽工作をしたことも明らかにした。ほかにあっせんが37件あり、うち前川喜平事務次官自身が関わった2件を含め9件は同法違反の疑いがあると確認。文科省は前川次官ら7人の懲戒処分を発表した。政府は他府省庁も調査する。
共同通信
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 今週は文部科学省の天下りがニュースになっていた。法律に違反している以上、厳正に対応してもらいたいと思うが、天下り自体はわからなくもない。実は天下りは民間でも行われている。例えばそれは私がかつて在籍していた銀行業界でも一般的である。銀行はだいたい50代前半で退職し、関連会社か民間企業に「転籍」するのが慣わしである。それが当たり前で、現役も40代半ばになると研修を受けて準備を促されるのである。適宜人を入れ替えて新陳代謝を計ろうと思ったら、こういうことも必要だろう。

銀行の場合、一旦「退職」するのでその時点で退職金をもらう。そして新しい給与体系となるのであるが、それは銀行員時代に比べて6割程度に下がるものである(銀行に残る道もあるが、所得に関しては同じ扱いだ)。関連会社はともかく、民間企業は銀行とは関係のない、主として取引先である。然るべきポジションを用意してもらって受け入れてもらうのである。形としては官僚と同じで、立派な天下りである。

どこでもいいというわけにはいかないから、銀行の各支店は日頃付き合いのある取引先の中から業績等を勘案し、問題ないと判断した先を選んで受け入れを交渉する。そういう「受け入れ先確保」も業績評価に反映されるから支店長も一生懸命やる。取引先もそれぞれの事情や思惑からこれを受け入れる。うまくマッチすれば、中小企業は一般的に人材が不足しているから、土台がしっかりしている社員を確保したい中小企業としてはメリットもある。

ただ大概は受け入れるのは「思惑」からだろうと思う。受け入れに伴い「恩を売れば困った時にお金を借りられる」と考えるのは、自然だろう。銀行も社員を受け入れてもらっている以上無下にはできない。ただ、そういう思惑だけだと、転籍した銀行員も歓迎はされず、居心地悪くなって銀行に戻ってくるというパターンも実は多い。このあたりは元銀行員の作家池井戸潤の『オレたち花のバブル組』にも詳しく描かれている。

今回の天下り問題は、送り出す官僚だけの問題ではないと思う。当然、受け入れる側があっての話であるからである。今回は、天下の早稲田大学が受け入れ先であった。どういう思惑があったかはわからないが、早稲田大学ともあれば人材確保に困ってということはないだろうから、当然「思惑」があっての受け入れであろう。許認可なのか交付金なのかはわからないが、早稲田大学は私立大学で全国第2位の「私立大学等経費補助金」(平成27年度実績90億円)をもらっているから、何か関係があるのかもしれない。「魚心あれば水心」である。

こうした天下りが悪いのかと言われれば、やはり国家公務員は公平性の観点から良くないだろう。それに過去、出向していた特殊法人では、元官僚が天下りしてきていて、数年でまた退職して別のところに天下りしてという実例を目にした。退職金も一千万円単位であると聞き、驚いたものである。中小企業であれば定年まで真面目に勤めてようやくもらえる金額を数年の「腰掛け」でもらえるのである。資本主義の理不尽さであるが、批判され規制されるのも感情的には当然である。

これを法律で規制しようとする考えは悪くはないと思う。当の官僚たちも泣く泣く制度を作ったのに違いない。だが、本当に効果的たらしめようと思ったら、受け入れ先にも罰則規定(例えば1年間の補助金交付停止とか)が必要だろう。人間のやることには漏れがあり、工夫次第で簡単に網の目を潜れるものだからである。一方だけでは網の目も縮まらないだろう。

銀行員もそうだが、関連会社ではなく、民間企業に行こうと思えば実力が必要である。もともといた社員と違うという実力が示せなければ、単なる「資金調達手段」でしかない。受け入れる企業も「頼まれて仕方なく(断っていざという時に支障があっても困る)」とか、「お金を借りやすくなるだろう」とかの思惑から受け入れたとしても、実際来た人間が優秀であれば大歓迎されるはず。自分はそう思って銀行員時代には力をつけるべく意識していたものである。

今、それは実際に実を結んでいる。会社の方針に影響を与えられれば仕事も楽しいし、給料以上のやりがいもある。自分の考え、やってきたことは間違いなかったと実感している。天下りもナァナァの世界ではなく、実力で引っ張られるようにならないとと思う。送り出す方も受け入れる方も、そして当の本人も「実力」だけで判断されれば何の問題もないだろう。「一人天下りを受け入れたら、前年比補助金は10%減額、減額分は受け入れた本人が貢献する」とすれば面白いのではないかと思う。それで天下りが減るなら、やっぱり「お土産」目当てだったということである。

まぁ人のことである。自分は自分。恥ずかしくない力をこれからも磨き続けようと思うのである・・・






【今週の読書】
 


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