2012年5月22日火曜日

石原都知事と尖閣諸島

 石原都知事が尖閣諸島の購入計画をぶち上げた時、正直言って「またか」と思った。かつて既存の銀行を批判し、「貸し渋りをしない銀行」と銘打って新銀行東京を作ってしまった。銀行員の常識から考えて、「理想ばかりで実情がわかっていない、うまくいくわけがない」と当初から公言してきた。と言っても私の発言力などないも等しいから、何の意味もない。

 そして新銀行東京は、私の予想言通り、それも予想以上のスピードで失敗した。後日、失敗の原因は経営の問題であるような事が言われていたが、そもそもコンセプトが間違っているのだ。誰が経営したってうまく行くわけがない。既存の銀行が審査能力をフルに使って、「危ないから貸さない」と判断したところに貸そうと言うのだ。それも無担保無保証という理想を唱えて、だ。結果などバカでも予測できる。

 そして今回だ。尖閣諸島を守ろうという心意気は良しだ。後出しじゃんけんで、領有を主張してきた中国のやり方は、まさにヤクザと一緒。日本人の性質もあるだろうし、過去の反省もあるだろうし、今後を慮る気持ちもあるのだろうが、今の政府の態度は「弱腰」とマスコミに責められても仕方ない。そんな中で気炎を上げたのは、石原都知事らしい。

 しかし、都民の税金を使って東京都が尖閣諸島を買おうなんて、どこから発想が湧いてくるのか、呆れるやら何やら。そもそもこれだけ問題を抱えている島が個人の所有物だった事が驚きなのだが、買い上げるなら本来国か沖縄県がやるのが筋だろう。遠く離れた東京都がしゃしゃり出るところではない。それも都民の税金を使って、だ。都民税は東京都の為に使われるべきものだ。それを個人の思いつきで、遠く離れた島にばら撒こうなどという事はとんでもない事だ。圧倒的都民の支持を背景に、好き勝手やっている。

 それに実際の効果の点でも疑問だ。そんなもの買ったところで、まったく意味がない。そもそも領土は国家主権の範疇だ。所有権など国家主権の前には、なんの力もない。仮に中国軍に占領されたとしたら、いくら権利証を振りかざして所有権を主張したところで、鼻で笑われるだけだ。そんな事、当然わかっていると思うのだが、一体何を考えているのやら。

 しかしその後、そんな事情を知ってか知らずか、購入資金寄付の申し出が絶えないらしい。5月21日時点で総額8億4,000万円もの寄付金が集まっていると言う。なんと愛国の徒が多いのだろうと感心してしまう。まだ日本も捨てたものではない。寄付金で買うなら話は別だ。私の納めている都民税が使われないのなら何だって好きにしてよ、と言うところだ。

 何の意味もないと言ったが、国民の愛国心を煽るという意味では、大いに効果があったようだ。8億4,000万円が多いか少ないかは別として、これだけのお金が集まってくる意味は大きいと思う。意図した結果ではないだろうが、この結果は認めざるを得ない。国会議員と違って都知事の立場は、対中国では好きな事を言えるのかもしれない。

 まあこの点では、頑張って下さいねと一歩引いておこう。「都税を使わないなら」の条件付きなのは言うまでもないのである・・・


【本日の読書】

パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ - ジェフ・ジャービス, 小林 弘人, 関 美和  1Q84 BOOK 3 - 村上 春樹




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