2011年8月5日金曜日

Old friend

彼の名はデビッド。
私が大学3年の時、大学院にニュージーランドから留学してきた。
なにせラグビーが国技というお国柄。
デビッドも幼稚園からラグビーを始めたという経歴だった。
そんなデビッドが、我々のラグビー部にやってきたのである。

それまでにも何人かの留学生がグラウンドに来て、一緒に試合をしたりした。
しかしながらみんな一時的な腰かけで、言ってみれば「週末の暇つぶし」的な参加だった。
ところがデビッドはそれまでにグラウンドに来たどの外国人とも違っていた。
土のグラウンドに驚きながらも、きちんと練習に出てきて、あろうことか夏の菅平の合宿にまで参加したのだ。

ちなみに、今でこそ我が大学のラグビーグラウンドは人工芝になっているが、当時は土のグラウンド。ニュージーランドを始めとして、世界各国では芝生のグラウンドが当たり前。
世界広しと言えども土のグラウンドでラグビーをやっているのは日本ぐらいではないかと、個人的には思っている。そんなグラウンドで、デビッドは我々と一緒になって泥まみれの汗を流したのだ。

さすが本場の出身者。
デビッドは白人にしては小柄で、私とほぼ同じ体型だったが、迫力あるタックルは見モノだった。デビッドのタックルを見て、私ももっとパワフルなタックルができるはずと励みに思った。そんな彼は、秋の公式戦もレギュラーでフル出場し、その年公式戦で3勝を上げる原動力となった。そしてわずか1年で彼は卒業し、某ホテルに就職した。

卒業後、私も一度だけ彼の勤めるホテルへ彼を訪ねて行った事がある。
しかし、その時彼はたまたま非番で会う事はできなかった。
その後、クラブチームでラグビーをしているらしいという噂は耳にしたものの、ついに会う事もなく、今日に至っている。

先日の事、大学のメーリングリストに一人のOBが投稿した。
6月で定年退職し、そのまま冬のニュージーランドにスキーに行ったという。
現地で「日本語ができる人」という条件で雇ったガイドが、なんと偶然にもデビッドであった。いつのまにかニュージーランドに戻り、ガイドの仕事をしているらしい。
そのOBは、その神懸かり的な偶然の出会いを、OBみんなに報告してくれたのである。
添付されていた写真に写っていたのは、だいぶ中年にはなったものの、人懐っこい笑顔はそのままのデビッドであった。

メールアドレスが紹介されていたので、さっそくメールを出した。
私の事を覚えているかわからなかったので、先日ディズニーランドで家族とともに写した写真を添付した。そうしたところ、彼から返信が来た。実に25年振りだ。

日本人の奥さんがいて、子供も一人。
奥さんと一緒にその名も「Tanken Tours」という会社で、ガイドをしているという。ちょっと不安だったが、デビッドは私の事を覚えていてくれた。
「ニュージーランドに遊びに来てくれたら、我が家に招待するよ」
メールにはそう書かれていた。

卒業旅行では計画こそしたものの、結局オーストラリアだけにしてしまった。
以来ニュージーランドは、いつか行ってみたい国の筆頭にあるのだが、ますます行きたくなってしまった。今年はラグビーのワールドカップがニュージーランドで開かれる。彼もきっとオールブラックスを応援しているだろう。私もジャパンの次に応援してみたくなった。

いつかは行きたいニュージーランド。
デビッドに直接会って、積もる話をしたいものだ。
できればあの頃のチームメイトと一緒に行きたい気がする。
そんな楽しみを持っているのもいいと思う。
その時までは時々メールでもして、デビッドと繋がりをもっていたいと思うのである
・・・


【本日の読書】
「フォールト・ラインズ」ラグラム・ラジャン
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」石田衣良他
   

   

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