2009年4月19日日曜日

球界人の本

 イチローが日本人最多の安打記録を更新した。
それで3,085本というそれまでの最多安打記録も引き合いに出される形で注目されていた。3,085本という数字は言うまでもなく張本勲のものだ。
張本といえば往年の大打者で、私はまだ野球小僧の時代だったが、晩年の巨人時代の記憶がわずかに残っている。

 しかし今年に入ってから、ちょうど氏の「最強打撃力」という本を読んだところだったから、張本氏の言動に自然と注目してしまった。
イチローもいろいろとその考えが広まっていて、それはそれでとても凄いが、この本を読むと張本氏の努力もまた凄い。

 貧しい生活の中から、とにかく生活のために必死に這い上がろうとする。
しかも、右手の指が曲がっているという左バッターとしては致命的なハンディを抱えながら、である。後年、野球の神様川上哲治氏だけにずっと隠してきた右手を見せたところ、「よくぞこの手で・・・」と神様も言葉を失ったらしい。

 毎晩の素振りを欠かした事がなかったという不断の努力に裏付けられた打撃論は、野球に興味がなくても面白く、かつその生き様には心をうたれるものがある。
3,085本というこれまでずっと破られる事のなかった記録は、それなりの理由があったのだ。
その3,085本を抜いたのだから、やっぱりイチローは凄いのだろう。

 張本氏以外でも野球選手の本は結構読んでいるのだが、一流選手のものはそれなりに示唆に富むものが多い。特に最近のお気に入りはノムさんの本だ。
『野村ノート』『野村再生工場』など多数あるが、野球以外にも読みどころは多い。
とかく氏自身の暗いイメージと奥さんに対する悪いイメージがあって、長島に反発的なところからも私はずっと好きではなかったのだが、本を読んでイメージが180度変わってしまった。

 野球を愛し、やっぱり貧しさから母親のため、自分を高校に行かせるために大学進学を諦めてくれた兄のためにと、頑張ってきた青年時代のエピソードは胸を打つものがある。
江夏、山内、山崎などの選手を再生させてきた手腕は、現役時代の努力と勉強の賜物だったのである。

 今年は楽天も出足好調であるが、この頃すっかり応援するようになってしまった。
一流のプロにはどの道にも通じる一流のものがある。
そんな事を感じさせる野球人の本である。
         

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