2024年2月1日木曜日

息子へのアドバイス

 息子は高校3年生。今は受験の本番真っ盛りである。しばらく前、妻がわざわざ私に問うてきた。「息子が浪人するとなったらどうするの?」と。どうするも何もない。まさか働けというわけにもいかない。浪人するなら認めるしかない。質問の意図を問うたところ、「浪人できないのであれば、確実なところを滑り止めとして受けておく必要がある」とのこと。私としては、浪人するのは問題ないので、現役の時は強気にチャレンジすればいいと答えた。息子の受験予定であるが、志望は文系私大。高レベル+中堅レベル数校の組み合わせである。何となく、もっと強気でいいのではないかと思った。

 私の場合、もう40年も前になるが、家庭の経済的負担も考慮し、都内の国公立大学に目標を絞り受験した。第一志望は難関だったが、「ダメなら浪人して再チャレンジ」と決めていたので、1校しか受験しなかった。当時は共通一次試験と二次試験である。滑り止めも不要だし、受けるのも受験料の無駄と考えていたのである。高校の担任の先生からは「滑り止めを受けたらどうか」と言われていたが(その前に第一志望はそもそも受からんぞと言われてしまっていた)、「ダメなら浪人して再チャレンジ」なので不要と答えた。我ながら潔いと思う。そして浪人した。

 当然、息子にも高レベル校だけ受けたらいいと思うのだが、本人には本人なりの考えがあるようなので、それは尊重している。私は法学部一本だったが、息子は大学によって「法学部政治学科」、「経済学部」、「政治経済」等いろいろである。学部的にピッタリなのは中堅大学の学部らしい。私の場合は、「法律」という事でシンプルだったが、息子は何となく政治経済の微妙な分野らしい。「大学」のブランドで選ぶか、「学部」で選ぶか。そこも難しいところであるらしい。何に基準を置くべきか。全部受かっても「大学か学部か」という悩みがあり、1校だけ受かっても(娘はそうだった)、「入学するか浪人するか」の悩みがある。

 「入学するか浪人するか」の悩みではあるが、人生において1年くらいの遅れは誤差の範囲内である。妥協して入学するよりも浪人して第一志望を目指してほしいと思う。私自身がそうであったが、それだけの価値はあると思う。「大学か学部か」という悩みではあるが、私の場合、大学=学部であったからそういう悩みはなかった。息子はその悩みに直面している。私の経験からいくと、そこは迷わず「大学」を選ぶべきだと思う。大学のブランドは社会に出てから大なり小なりのインパクトはある。よほどこだわりのある学部であれば別であるが、そうでなければ「大学」を優先するべきである。

 私の場合、高校生の時に弁護士になろうと思った。それゆえ、迷わず法学部を考えてすべて法学部で受験した。そして法学部に入って法律を学んだが、学んでわかった事は、「法律は自分の進む世界ではない」ということ。くだらない2年間の教養課程があったおかげで、方向転換を決めたのは、1年間法律を学んだあとの4年時。もうすでに就職活動が始まる寸前であった。せめて1年時から専門課程で法律を徹底してやっていれば、2年時には学部転向等もできただろう。今でも残念だが、法律を学んだ効果はそれなりに社会に出てあったので、まぁ良しとするところである。

 そういう事もある。今はこの学部があっていると思っても、実際学んでみたら違うということはあるかもしれない。そういう事を考慮すれば、大学のブランドを選んでおいた方がいいという事になる。そして社会になれば、大学で何を学んだかなどそう問われるものではない。20代ならまだしも、30代、40代となって転職となれば、「〇〇大学卒業」という看板だけが残る。それが威光を放つことはないが、イメージとしては大きい。そういう事を考えれば、よほどこだわりのある学問であるのでなければ、大学で選ぶべきである。

 そういう考え方は、私も高校生の時にはできなかった。息子もそこまではわからないだろう。私も社会人としていろいろな経験を経た上で、身についた考えである。誰しも経験だけは時間をかけて身につけるしかない。あるいは誰かからアドバイスを受けるか。経験だけはそうしなければ手に入らない。私も息子の進路についてはあれこれ口を出すつもりはないが、そういうポイントでは一言伝えたいと思う。すべては合否の結果が出てからであるが、自分の経験が息子の役に立つのであれば何よりであり、それも財産と言えるなら、資金的に少ないところを補えると胸を張れるかもしれない。

 それにしても、受験生というのは心理的に大変ではあるが、今思うと来るべきキャンパスライフに心躍らせていた時期でもあった。車の免許を取り、ラグビー部に入って女子大生と合コンをしてと・・・それを思えば辛い宅浪生活も耐えられたのである。受験の先にそれを控えた息子をうらやましく思うのである・・・


lisa runnelsによるPixabayからの画像


【本日の読書】

格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか - オデッド・ガロー, 柴田 裕之, 森内 薫  なれのはて - 加藤シゲアキ




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