2021年12月20日月曜日

時間論

 時間というのは、まことに不思議なものだと思う。昔はドラえもんではないが、過去から現在、そして未来へという時間の流れがあり、遠い未来世界ではタイムマシンが発明されて時間を自由に行き来できるようになると無邪気に考えていた。しかし、哲学的な観点からは、「過去は場所ではない(だから行くことはできない)」という考え方(【「時間」を哲学する】中島義道)に触れたり、アインシュタインの相対性理論で時間がゆっくり流れたり早く流れたりするという説明に触れたりしてだいぶイメージが変わっている。

 アインシュタインは、重力によって時間が流れる速さが変わるという体感できないことを考え出しているが、これは本当に凄いと思う。映画【インターステラー】では、これが見事に説明されていて、主人公の宇宙飛行士が地球を救うために泣く泣く幼い娘を残して宇宙へと旅立つが、ようやく帰還した時、年老いて家族に付き添われた娘と再会する。自分よりも老いた娘と再会するという感覚がどんなものか想像もつかないが、それが時間なのだというのはかなり衝撃的なことだと改めて思う。「時間の流れが違う」というのは実に不思議である。

 しかし、その不思議な出来事を実は最近身をもって体験している。それはシニアラグビーでの体感である。最近、移籍したチームでは試合をマメにビデオに撮ってYouTubeで後悔している。我々はアップロードされた試合のビデオを観て、それぞれ次への反省に生かすのである。グラウンドで動いている時の主観ベースでの記憶と、ビデオで客観的に観るそれとは随分と違う。高く上がったボールをキャッチしたと思っていたが、実はそれほど高く上がっていない。右へ行けば敵も少ないのにまっすぐ走っている。タックルで鮮やかに倒したつもりが、それほどでもない。ビデオで自分自身のプレーを観ると、どうにも嫌になってしまう。

 そしてそれ以上に衝撃的なのはそのスピードである。パスのスピード、走るスピード。自分では若かりし頃とそれほど変わっていないつもりだが、ビデオで確認すると随分とスローモーである。それは私自身だけではないが、全体的にスピードは遅い。いつも観戦している後輩の学生たちの試合と比べるとその差は歴然としている。やっている時はわからない。グラウンドでの時間の流れと、端からビデオで捉える時間の流れとが明らかに違う。昔、若い頃にシニアのラグビーを観て、「こんな無様な試合するくらいならやらない方がマシ」だと不遜にも思っていたが、それに近い試合を今自分がしているのである。

 その時間の流れの違いは、年代の違う相手と相対するとよくわかる。前のチームは60代が中心で、一緒に練習していても50代の私からすると60代の人たちのスピードは遅く、バックスにパスが回っても一番外側の選手にボールが回るのについていける。普通は追いつけない。走っているのを捕まえるのもたやすい。しかし、たまに学生と一緒に練習すると、まったくついて行けない。個々の選手のスピードが違い、振り切られてしまったり追いつかれてしまうのもしばしばである。単に個人的に足が速い遅いという問題ではない。チーム全体のスピード感が違うのである。

 その昔、『ゾウの時間、ネズミの時間』という本があったが、年を取るとグラウンド内での時間の流れが異なってくる感じである。もちろん、その正体は体の老化である事はわかっているが、老化によって体感する時間の流れが異なるのである。本人は全力疾走しているつもりでも、若い人から見ればその動きは遅く、容易に捕まえられる。逆の立場からすると、若い人の動きにシニアはついて行けない。たまに人が足りなくて60代以上の試合に駆り出されることがあるが、ゆっくりと流れる時間の中で、自分だけがサイボーグ009の加速装置をつけたが如くに動けるのは誠に快感である。

 自分自身のスピードは変わっていないどころか、ますます時間が早く過ぎて行くように感じる。お正月から花見の季節になり、拭っても拭いきれない汗をかいたと思ったら、紅葉に包まれ、はや年の瀬。一年が目まぐるしく過ぎて行く。つい先日50代に突入したと思ったら、もうあと2年半で還暦である。よちよち歩き、無邪気に「パパぁ!」と言っていた子供たちもいつの間にか高校生と大学生である。それでも端から見るとゆっくりと流れているのだろうか。

 いつの間にか2021年も残り2週間。もう少しゆっくりと自分の時間を過ごしたいし、子供たちもゆっくり成長してほしいと思う。このままのスピードで過ぎゆく時間の中で、やり残していること、あとで後悔しそうな事はないだろうか。【「時間」を哲学する】では、現在は一瞬にして過去になって行くと説明されている。そんなスピードに圧倒されることなく、今という瞬間を大切にし、ゆっくりと生きたいと年の瀬を控えて思うのである・・・



【本日の読書】
  




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