2021年12月4日土曜日

最近のニュースに思う

外国人就労「無期限」に 熟練者対象、農業など全分野
2021年11月17日日本経済新聞
出入国在留管理庁が人手不足の深刻な業種14分野で定めている外国人の在留資格「特定技能」について、2022年度にも事実上、在留期限をなくす方向で調整していることが17日、入管関係者への取材で分かった。熟練した技能があれば在留資格を何度でも更新可能で、家族の帯同も認める。これまでの対象は建設など2分野だけだったが、農業・製造・サービスなど様々な業種に広げる。
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 最近、日経新聞の記事にはなかなか考えさせられるニュースが多いように思う。外国人就労制限が一部緩和されることになったという上記の記事。事実上の移民解禁である。個人的には移民には反対であるが、現実的な人手不足を前にしてはそうも言っていられないのかもしれない。それでも「特定技能」だとかわかるようでいてわかりにくい言葉を使ってオブラートに包んでいるのは日本的だと思う。はっきり「移民」と言ってしまえば、炎上するだろうから、表向き移民解禁とはせず、「在留資格の無制限更新可能」という表現にしているのである。

 こうした例の代表格は憲法第9条の解釈であるが、あれも戦力の保持禁止という条文を言葉巧みに骨抜きにしている。本音と建前ではないが、これがいいのか悪いのかはいまだによくわからない。個人的には昔から「本音と建前の一致」が信条で、曖昧決着は大嫌いだったが、最近ではそれもまた仕方がないのかもしれないとも思うようにもなっている。白か黒か決着がつくまで喧々諤々の議論をしてなかなか決まらないよりも、うまくごまかして現実の必要性に対応するというのもやむを得ないのかもしれないとも思う。自分が丸くなったのかどうかはわからないが、白黒つけるのだけがいいわけではないのかもしれない。

 賃上げ税制もここのところよく目にする。従業員の賃金を上げた企業に対し、税金を優遇するというものである。とにかく企業に給料を上げさせないとデフレ脱却できないという考えなのだろう。ただ、我が社のように赤字だとそもそも税金を払わなくていいので意味はない。そして日本の中小企業は7割が赤字と言われているが、となるとどこまで実効性があるのかは疑問である。赤字であれば、必然的に賃金上昇にはブレーキがかかる。それに税額控除は一時的だが、賃上げは永続的である。「税金を免除するから賃金を上げろ」というなら、消費税の方がインパクトがあると思う。

 そもそも各種マスコミでも「日本の平均賃金が欧米と比べて低いのが問題だ」という議論をよく見かける。1997年を100とすると、日本が89.7なのに対し、アメリカが115.3、最高のスウェーデンが138.4であるのでその通りである。しかし、一方で消費者物価で見ると、1995年を100とすると、日本は102弱であるのに対し、アメリカは114強である。つまり賃金と同時に物価も上がっているわけであり、日本ではワンコインでランチが食べられるが、アメリカでは1,000円を超えてしまうというイメージである。そうなると単純比較はできない。

 あくまでも素人の考えなのであるが、賃金が上がっても物価が上がれば意味がないように思えてならない。そしてそこを踏まえてそれでもなお「賃金上げるべし」と主張する意見は今の所耳にしない。たとえ給料が3%上がったとしても、年収800万円の人で月2万円である。それがすべてこずかいに回ることはない。せいぜい5,000円も上がればいい方であろうか。しかし、その代わり昼食費が300円上がると月6,000円アップであり、こずかいはマイナスになる。年収400万円の人ならもっと悲惨である。政府が企業にただ「賃金上げろ」と迫るのも本当にそれでいいのかと思わずにはいられない。

 また、ここのところ円安傾向にあり、さらに原油価格の上昇から国内のガソリン価格も上昇しており、政府は備蓄を放出してこれを抑えると発表したようである。供給が増えれば価格が下がるのが経済原理であるが、放出するのは145日分の備蓄のうち「数日分」だと言う。「数日分」でどれほどのインパクトがあるのかわからないが、何となく効果が薄そうな気がする。たとえば3日分だとして、単純に考えれば3日経てば元に戻るわけであり、それでどれだけ効果があるのだろうかと、素人である私は疑問に思う。なんとなく一家庭に2枚配布されたアベノマスクを彷彿とさせるものがある(先日会社の備品棚に手付かずのものが眠っているのを発見した!)。

 そしてコロナ禍でようやく落ち着いて来たと思ったらオミクロン株の出現である。先日読んだ【生命の謎ドーキンス『盲目の時計職人』への反論】という本では、生命はその複雑さゆえに神が作ったとしか思えないという衝撃的な退行的意見の本であったが、これだけ短期間に変異するウィルスの様子を見ていると、理屈抜きに生命は自然発生したという意見の方が正しいように思えてならない。あっという間に全世界に広がる勢いは、やはり生命の不思議さを実感させてくれる。

 そのオミクロン株の出現に際し、さっと外国からの入国を止めたのには感心した。最初の頃のドタバタが嘘のようで、さすがに喉元過ぎていないから対応が早い。と思っていたら、すぐに「例外措置」が発表された。ウィルスの侵入を防ぐという目的を意識するなら、そこに一切の例外は設けるべきではないが、政府も人気商売、あちこちからの批判に例外を設けざるを得なかったのだろう。もちろん、ウィルスはそんな例外を特別扱いはしてくれない。「なんだかなぁ」と思わずにはいられない。あれやこれやという意見が飛び交う中での意思決定は難しいが、妥協というのも仕方ないのかもしれない。

 世の中はいろいろと動いているが、自分には関係ないと思っていても、いつの間にか身近なところに来ているのが世の中のニュース。いずれ我が社の職場にも外国人が来て、ワンコインでランチが食べられた時代が懐かしくなっているのかもしれない。その時、懐が少しでも暖かくなっているように来週も頑張りたいと思うのである・・・


Hands off my tags! Michael GaidaによるPixabayからの画像 

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