2021年7月29日木曜日

仕事とモラル

 先日、【「あなたから買いたい」と言われる超★営業思考】(読書日記№1282) という本を読んだのだが、その中でTBSからプルデンシャル生命保険に転職した著者が、最初はなかなか契約が取れず、後輩に圧力をかけて契約を取ったエピソードが紹介されていた。プルデンシャル生命保険は、完全成功報酬制らしく、契約が取れないと給料がもらえないらしい。家族も養わなければならないとなれば、なりふりなど構っていられず、体育会系で言うことを聞きやすいと踏んだ後輩から契約を取ろうとしたらしい。その事情はよくわかる。

 実は、私もソニー生命から転職しないかとオファーを受けたことがある。サラリーマンであればこういうオファーが来るということはちょっと誇らしいことでもあり、その時は私も「話ぐらいは」と面接に出かけて行ったのである。そこで根掘り葉掘り聞かれたのは、銀行でのお客さんとの親密度。「年賀状は何通ぐらい出しているのか」とか、担当が外れてもお付き合いが続いているお客さんは何人ぐらいいるのかとかである。質問を受けながら、「あぁ、これは転職後に保険の勧誘ができそうな『見込み客』をどれくらい持っているのか確認しているんだな」と感じたのである。

 ソニー生命もプルデンシャルも、基本的に営業マンが紹介をもらって営業するスタイルを取っている。最初は家族や友人、知人からスタートするのだろう。その時は転職する気もそれほどなかったので断ったが、こういうセールスを伴う保険勧誘の仕事は、私には合いそうもない。背に腹は変えられず、無理に契約してもらうのも気がひける。先の本の著者は、一旦後輩から契約を取るが、すぐにクーリングオフをされ、後輩は電話にも出てくれず、人間関係が壊れてしまったようである(その後、やり方を変えなんとトップセールスになったそうである)。

 保険に限らず、不動産仲介業なんかも基本的に成果報酬制を取っているところが多く、「お行儀の悪い」営業マンはかなりいる。例えば賃貸の仲介手数料は、法律で「貸し手と借り手から合計で家賃の1ヶ月分」と決まっているが、通常「借り手」から1ヶ月分をもらい、貸し手からは「広告料」という名目で1ヶ月分をもらう。これを「礼金を1ヶ月分上乗せして請求していいから広告料を2ヶ月分くれ」なんてことは当たり前になされている。法人契約で礼金が2ヶ月以上の場合は注意が必要である。

 「お客様は神様」的に「顧客ファースト」の精神からすれば大きく外れる行為である。エイブルグループなどは、会社をあげて良心的に営業しているが、名前の知れていない街の仲介屋さんはちょっと注意しないといけない。「自分の成績か顧客の利益か」どちらを優先すべきかと言えば、それは「顧客の利益」というのが正解であるが、それで自分の給料がもらえない(あるいは少なくなる)場合、それでも「顧客の利益」と言えるだろうか。不動産業界では、「自分ファースト」の営業マンの方が残念ながら圧倒的に多い。

 私は不動産業界にこれまで属していたが、幸い仲介業は片手間にやるだけで、成果報酬でもなく、こんな事をしなくても困らなかったから余裕を持って「顧客ファースト」の行動が取れた。だが、仮に仲介業社で働いていたら、顧客ファーストの精神を貫き通せただろうか。もちろん、必死で顧客ファーストを貫くべく創意工夫と努力をしたと思うが、究極的に自分と顧客とを天秤にかけたらわからないと思う。

 法律の世界には、「緊急避難」という考え方がある。溺れかかっている時に、近くに浮かんでいた浮き輪を人と争って奪い、結果相手が溺死した場合に責任を問われることはないという概念である。もちろん、生命、身体の危機を前提にした「緊急避難」と単なる仕事の「自分ファースト」とが同じだと言うつもりはないが、完全成功報酬型の仕事や外資系などですぐクビにされるような場合、その恐怖(特に家族がいる場合)は軽く見ることはできないと思う。

 本当に生きるか死ぬか(失業するかしないか)という状況であればまだしも、少しでもゆとりのある状況でどう行動するかはその人自身のモラルと言える。人を押しのけてでも自分を優先したり、人の取り分を考えずに自分の分だけを考えたりはその人自身の人間性と言える。先の著者は、後輩から契約を取った時はよほど追い込まれていたのだろうが、そのあとすぐに気がついて、後は平日は毎日会社に泊まり込んで仕事をしたという。つまりそこまでやれば、モラルを持って仕事ができるわけであり、トップセールスという成功者の道を歩めたのであろう。

 自分もかくありたいと思う。どんな状況においても顧客や同僚や友人知人に対し、恥ずべき行為をしなくても済むようにしたいと思う。こういう事は、常日頃考えて意識していないとついつい魔がさしてしまいそうである。サラリーマン人生もそろそろ先が見えてきている。それゆえに、最後の最後まで襟を正して働きたいと思うのである・・・



【本日の読書】
  


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