2021年2月25日木曜日

「知ってるワイフ」に見る結婚の理想と現実(その1)

 ドラマで「知ってるワイフ」を放映中である。と言っても、普段ドラマを見ない私は、家族の「ドラマの輪」には入れず、日本版は観ていない。代わりに観ているのは、Netflixの韓国版である。これは主人公が過去に戻って人生をやり直すという誰もが抱く願望を描いたSFコメディードラマである。

 主人公は銀行員のジュヒョク。学生時代から付き合っていたウジンと結婚するが、甘い新婚生活は過去のもの。今や毎日ウジンにあたられ、好きなゲームも夜中にみんなが寝静まってからこっそりやるような日々を送っている。と言っても妻ウジンが悪妻というわけではなく、ウジンはウジンで、幼い子供の面倒を見ながらエステティシャンとして働き、家事をもこなしている。それは過酷な日常で、そのストレスのはけ口が家事にあまり役立たない夫ジュヒョクに向かっているのである。

 甘い恋愛を経て結婚をしたとしても、子供が生まれ、「恋人」から「家族」に変われば夫婦の関係も変わる。ちょっとしたことでキレたウジンがジュヒョクに当たり散らす様は、とても他人事には思えない。ジュヒョクにとって、家庭は安らぎの場ではなく、苦痛とストレスの巣窟になっている。一方、ウジンの気持ちもわからなくもない。同じように仕事をしながら、子育てと家事の負担は、ウジンだけにのしかかっているのである。

 何で夫が家事をやらないかと言えば、それは母親に愛情たっぷりに育てられるからである。母親は娘に対しては早くから料理をはじめとした家事を手伝わせて教え込むが、息子には甘くこれをさせない。よってできないまま大人になるから、結婚してもできるわけがない。掃除洗濯はそれでも何とかなるが、赤ん坊の面倒や料理はできるわけがない。私もオムツを替えたり風呂に入れたり、ミルクをあげたりと母乳をあげる以外のことはすべて(妻の指導のもと)やったが、料理だけは今だにできない。

 ドラマの前半ではウジンが(ジュヒョクから見れば)悪妻に描かれる。ジュヒョクは決してズボラな旦那ではなく、可能な限り妻に協力している。ただ、妻の要求レベルに満たないだけである。子供が熱を出して迎えに行かなければならない状況下、ウジンも大事な顧客を相手にしていて動けない。その頃ジュヒョクもトラブル対応で抜けられない。ウジンが必死に電話をするが、運転中のジュヒョクは電話が取れず、さらにはそれに気を取られて事故を起こしてしまう。

 私はたまたま妻が専業主婦を希望していたので、共働きの苦労は経験していない。私の頃は、女性は短大を出て寿退社が目当ての腰掛けOLが全盛だった時代である。今は女性も高学歴で、仕事を続けるのが当たり前、夫婦別姓とまでいかなくても女性は旧姓で仕事を継続できる。家事も当然分担するのが当たり前であり、「できない」などとは言っていられない。今や、男も結婚前に「花婿修行」が必要かもしれない。それはそれで面白かったかもしれないと個人的には思うが、踏ん反り返っていられない男は大変である。

 しかしながら、男と女には決定的な差がある。それは「感度」と言えるかもしれない。男は一週間や二週間、掃除などしなくても平気であるが、女はそうはいかない。私も食器洗いなど料理以外の家事をすることもあるが、ダメ出しされることしばしばである。出かけて帰ってきて食器洗いをするのも大変だろうと気をきかせてやっておくと、「洗い残しがある」とか「しまうところが違う」とかダメ出しされる。すると「もうやるもんか」と思ってしまう。余計なことをして怒られれば余計なことはしなくなる。私も家庭では言われないことはやらない「指示待ち族」である。

 仕事をしている上で、指示待ち族ほど神経を逆なでられるものはない。「言われなくてもやれよ」といつも心の中で嘆いている。きっと妻も私に対してそう思っているのかもしれないが、良かれと思って下手に手を出すと怒られるのでは割に合わない。指示待ち族を生み出しているのは妻である。なので逆に職場ではどうだろうかと胸に手を当ててみるが、幸い職場の指示待ち族は、私のせいではなくその人の長年の習慣である。

 「知ってるワイフ」の2人の関係を改善するには、夫も仕事と同様に家事と子育てに身を入れることが必要で、かつ(ドラマでは描かれていないが)妻も夫のブサイクな家事に文句を言わないことが肝要である。やり方なら優しく指導すれば良い。少なくとも新婚時代にはなんでも許していたはずである。自分目線での仕上がりを要求せず、やったことに対して(その気持ちに)感謝すれば、男は単純に喜んでもっともっととやるようになるだろう。

 そして男の子が生まれたら、母となった妻は息子をネコっかわいがりするのではなく、娘にするのと同様、家事をさせるのである。娘に対しては将来困らないようにと心を鬼にするのだから、同じように息子にもするのである。それが将来の息子の幸せに繋がるのだから。今の世は、「かわいい(息)子には(旅ではなく)家事をさせろ」なのである。妻には直接言えないが、息子には「家事(特に料理)をやれ」としっかり伝えたいと思う。

 ドラマはそんな理想とはかけ離れ、現実にどこにでもあるように進んでいく。ある日、ジュンヒョクは、学生時代にみんなの憧れだったマドンナ・へウォンに再会し、実はヘウォンがジュンヒョクに気があったと知らされる。これほど、絶望的に過去の自分の行動を後悔する瞬間はないだろうと実感を持って感じる。そしてそんなジュヒョクに不思議な現象が起こるのである・・・




【本日の読書】
  



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