2020年9月24日木曜日

ここは私道

もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ
魯迅『故郷』
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先日のこと、いつものように仕事を終えて家に帰る途中、家のすぐそばまで来てそれを発見した。それはどこにでもあるカラーコーン。工事現場などでよくみかけるやつである。それは家まであとちょっとの所の狭い道路の真ん中に鎮座していた。道路の真ん中に何だろうと思いながら近づくと、コーンの上には表示がされていた。
「私有地につき進入禁止」
どうやらずっと道路だと思ってところは私道、つまり誰かの所有地だったらしい。

 私がこの地に住んで24年。今までここが私道などとは思いもよらなかった。どこから見てもただの道路であり、それ以外の何物でもない。それが何故、今になって突然所有者が「ここは俺の土地だ!」と言い出したのか。個人的にはとても興味深い。ちなみにカラーコーンを立ててあるだけなので、歩行にはなんの障害もない。ただ、車だとカラーコーンをどかさないと通れない。隣はスーパーの敷地なので、スーパーの駐車場に入れるのには支障がないが、車道としては事実上の通行止めである。

 興味深いのは、突然(事実上の車の)通行止めにした理由である。持ち主のことは知らないので想像するしかないが、ただの嫌がらせだろう。例えば「子供が遊ぶのに危ないから」などと言われれば座布団10枚だが、どう見てもそんなことはありえない。狭い道なので車はみんな徐行するし、そもそもメインストリートからは一本奥まっているので車が何台も通るような道路でもない。「車が危ない」という理由でもなさそうである。

 では何故突然通行止めにしたのであろうか。何か私道としての権利を主張しないと公道にされてしまうということもないであろう。地目がどうなっているのか調べないとなんとも言えないが、「道路」になっていれば(認定されていれば)たとえ個人の所有物であっても固定資産税等の課税は免除されるはずなので、余計なお金がかかるということもないはず。費用負担が生じているのであればわからないでもないが、どうもそうした事情は考えにくい。

 やはり何かのきっかけで、「ここは俺の土地だ!」と所有意識に芽生え、「通せんぼ」に至ったと考えるしかないように思う。それであれば、えらく了見の狭い所有者であると言える。長年、不特定多数の人が生活用道路として使用しており、外見上はあくまでも道路である。今更そんな「いじわる」をして何が面白いのだろうと呆れてしまう。自分だったらどうするだろうと考えてみるが、どうにも他の用途として利用できそうもない以上、道路として使ってもらおうと思うだろう(たぶん・・・)

 私の知り合いで、隣家とわずか数センチ(3センチ)の境界を巡って対立しているところがある。たかだか数センチなのにと思うも、奥行き約15メートルくらいなのでその面積は90平方センチメートルであり、そのあたりの単価からすると17万円くらいの価値になるので、当事者にしてみればバカにできないのかもしれない。両者の感情もエスカレートしているようであり、それはたぶん解決困難な問題だろうと思う。わずかであっても自分の持分は少しでも多くと思うのが人の心というものだろう。これはたぶん、それぞれ代替わりでもしないと解決しない問題なのだろうと他人事ながら思う。

 先の私道主張者も自分の土地なのに自分の土地として使えず、みんなが好きに通行しているという事実に耐えきれなくなったのかもしれない。そもそもいつからここを私道として所有しているのだろうかと想像は広がる。現在はすっかり住宅街だが、古い写真等からすると、戦後間もなく人口が増え始め、子供達が通った小学校が約50年前に開校した頃にはもう道路の形になっていたかもしれないが、戦前はあたり一面田畑だっただろうし、その前は人里離れたすすきの生い茂る地だったかもしれない。

 人が増えれば、里も広がる理屈でいつしか人が住み始めたのだろうが、その頃の人たちが今のこの住宅街を見たらその変貌にさぞや驚くだろうと思う。ましてやわずかな道路を通せんぼしているのを見たら何と思うだろう。それにしてもこれはいつまで続けるのだろう。わざわざカラーコーンを買って来て、パソコンで印字して、ご丁寧にパウチまでして手間暇かけて通せんぼして、それを子供たちにも継がせるのだろうか。その子供たちはそれをどう思うのだろうか。

 今はもうしないが、若かりし頃の自分だったらたぶんカラーコーンを蹴飛ばしていただろうと思う。あるいは無視して(カラーコーンなどなきものとして)車で侵入していたかもしれない。そんな不届き者が出たら、今度は常時監視していないといけないし、そんな人だったら防犯カメラを取り付けるくらいのことはするかもしれない。そう考えるとやってみたくなるが、大人なので我慢しようと思う。

  さて、この通せんぼがいつまで続くのか。毎朝夕、楽しみに見守りたいと思うのである・・・




【本日の読書】




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