2020年4月8日水曜日

頼れるサラリーマン

30年以上もサラリーマンをやっていると、いろいろな同僚と一緒に仕事をしてきたものである。人それぞれであるが、優秀であるか否かは別として、「頼りになる」と感じられる人がいる。それはどういう人かと言えば、「自分の仕事の範囲を決めない人」である。いわゆる「指示待ち族」と言われる人とは対極にいる人である。サラリーマンであれば、たいてい部なり課なりで仕事の範囲は決まっていると思われがちだが、実はそうではない。仕事はやりようによってはいろいろとできるものである。

たとえば、今の会社にもそういう人はいる。前職の伝手を辿って仕事を受注してくる。会社で指示した仕事だけをこなしていれば楽だろうし、評価もされる。されど、誰にも言われないのに勝手に話を決めてきて受注してしまう。もちろん、会社としては売り上げにプラスになるだけであり、大歓迎である。その分、忙しくなって休みもおちおち取れないのに、涼しい顔をして仕事を取ってくる。こういう人がいると、会社としては誠にありがたい。さらに他の係の仕事でも気がつくと意見を言ってくる。

やる事をやって、時間が来たら帰るというのも悪くはない。会社から命じられた仕事をきちんとこなしているわけであり、それに何か問題があるというわけではない。みんなそれのどこに問題があるのかと思うかもしれない。問題はない。仕事を指示すればきちんとやってくれるわけであり、期待通りに、あるいは期待以上にやってくれる人もいて、それはそれで立派である。ただ、「頼んだ仕事をやってくれる」のと、「頼んでもいないのにやってくれる」のとでは大きく違う。

会社が成長していくには、どこかで仕事を生み出さないといけない。10の仕事が1112と増えていくには、誰かが増やしていかないといけない。ただし、営業が仕事をとってくるのはこれにあたらない。「仕事を取る」のが自分の仕事の範囲だからである。要は、求められている範囲を超えて自分の仕事を増やしているかどうかである。たとえば、自分の仕事でなくても、「こうしたらどうか」という意見を言ったりする。場合によってはわざわざ調べてみたりする。これが「範囲外の仕事」である。

「仕事の範囲を決めない」というのは、人の仕事を取るということではない。それぞれの領分は守らないといけない。その上で「範囲を決めない」ということである。後藤田五訓にも「自分の仕事でないと言うなかれ」というのがあったが、要はそういうことである。部でも課でも係の中でも時としてぽっかりと空白に仕事が生じる時がある。その時、「では自分がやる」と言えるかどうか。黙っていて、「運悪く」上司に指示されたらやむなくやるという人は「範囲内」の人である。

そうして具体的に見てみると、実は指示待ち族に該当する人はかなり多いのではないかと感じる。「あなたは指示待ち族ですか?」と問えば、ほとんどの人は「違う」と答えるだろう。しかし、具体的な行動ベースで見てみれば、「実質的な指示待ち族」はかなりの割合に昇るのではないかと思う。小さいながらも中小企業に身を置いてみると、そんなことによく気がつく。それが悪いというわけではない。人それぞれ、働き方もそれぞれ。指示待ち族が良ければそれでいいだろう。

 ここで言いたいのは、指示待ち族が良いか悪いかではなく、「仕事で頼りになるのはどういう人か」ということである。周囲をよく見ているし、気付けば動いてくれるし、自分の意見を持って(評論家ではなく)実践的な(いざとなったらやってくれる)意見を言ってくれる。そんな人物なら、大いに頼りになるというもの。自分自身がそうであるつもりではいるが、あらためて自分自身のこととして意識したいと思うのである・・・


Hans BraxmeierによるPixabayからの画像 
【本日の読書】
 
   
    

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