2017年4月16日日曜日

頼れる資格

 昨年、宅地建物取引士の資格を取り、今年はマンション管理士の資格取得に向けて勉強をしている。仕事上必要なので勉強しているのだが、私は昔からこの手の「資格」というのが好きではない。古くは中学生の頃だったか、いつも張り合っていた友人が将棋の初段を取ったと自慢してきたことがあって、それは返り討ちにしたのであるが、私自身、当時からそんな「段」なんて取りたいとも思わなかった。「権威」に媚びたくないというアマノジャッキーな性格はこの頃既に完成していたのかもしれない。
 
 その後は「英検」なんてのも受験を勧められたが、「会話」に「級って何だ」という素朴な疑問からバカらしくて受ける気などなかった。まぁ職場で求められたTOEICは受験したが、基本的に自分の「箔づけ」のために資格を取ろうという考え方は、私には全くない。それで困ったことと言えば、転職の際に履歴書が寂しい気がしただけである。


 そもそも資格などというものは、国家が安全のために設けているもので、それはそれなりに十分意味はあると思うが、資格があればその分野の能力もあるとは限らない。とりあえず「その分野の勉強をした」という実績にはなるので、一定の歯止めにはなるだろうがそれだけだと考えている。さらに昨年宅建の試験を受けて感じたのだが、宅建に限って言えば「落とすための試験」とでも言える内容で、「ひっかけ問題」の類が多く、必要な知識の習得度を測るという本来の目的からは逸脱しているように思える。誠に疑問の多い試験である。


 それはさておき、国家資格以外にも実はいろいろと資格があることを最近知った。LECの講座を受講しているせいで、メールによるセールスレターが来るのであるが、そこに「住宅ローン診断士」なるものの講座案内があったのである。その講座説明は下記のとおりである。


『住宅ローンを取り扱う金融機関は全国で500を超え、それぞれが違うローンを提供しております。また、金利/変動・固定などの金利タイプ/保証料や事務手数料などの諸費用/団体信用生命保険など、一つの金融機関でも様々な選択肢やローンがあります。それ以外に、審査基準も違うなど、適正なローンなのか判断するのは困難な状態であり、コンサルティングのニーズが高まっております。住宅ローン診断士認定講習は、このニーズに対応する為の講座であり、指導能力を育成する為の資格制度です。』(LECホームページより)


 正直言って元銀行マンの立場からすると、「アドバイスするほどのことか」と思う。百歩譲ったとしても、それを「診断士」などと名乗るのかとアホくさく思う。そう思って気がつくと、怪しげな資格が目につく。不動産関係だけでも、「住宅販売士」「サブリース建物取扱主任者」「シックハウス診断士」「相続診断士」「住宅建築コーディネーター」「敷金診断士」「競売不動産取扱主任者」等々である。正直言ってどれだけニーズがあるのだろうか、資格を取って何の意味があるのだろうかと呆れてしまう。

 例えば「敷金診断士」であるが、これは「敷金・保証金を巡るトラブルの解決を図る専門家」だとするが、どんな風にトラブルの解決を図るのだろうかと思う。原状回復費をめぐるトラブルを念頭に置いているのだろうが、「診断士」なるものがノコノコ出て行って解決するとは思えない。仮に賃借人に頼まれた「診断士」が大家のところに行って、「取り過ぎ」と言ったところで、「適正だ」と反論されるのがオチで、納得できないなら最後は裁判で決着を測るしかない。その時には当然「診断士」の出番などない。

もともと日本人は「権威に弱い」ところがある。自分の正当性を主張するのに、権威を利用するのである。「大義名分」という言葉が表しているが、武士が実力で天下を統一したにもかかわらず、天皇に「征夷大将軍」に任命してもらう形をとったことにも現れている。上は「お上」から下は子供の「先生に言いつける」まで、「権威意識」は根強い。自分の意見も「専門家」のお墨付きがあれば、胸を張って主張できる。そういうものに頼ることが染みついていると思う。

受験専門校がこうした資格を得るための講座をセールスするのは当然である。その背景には「資格があれば」と思う人たちがいるのだと思う。それが悪いとは思わないが、資格なんてなくても住宅ローンなんて自分で選べるものである。いろいろ種類はあるが、自分の頭で違いを見分けることなんて誰だってできるだろう。いちいち「診断士」なるものに頼る必要などない。そこまで知力が落ちているということなのだろうか。

このままいくと、「お昼ご飯診断士(サラリーマンに適切な今日のお昼ごはんをコンサルティングします)」「読書診断士(キャリアアップに有効な図書をコンサルティングします)」「自家用車アドバイザー(ご家族の状況に合わせた車をコンサルティングします)」などという専門家が溢れかえるような気がする。それでいいのか日本人。

将棋で初段を取ったと自慢してきた友人を返り討ちにしてやった時から、私は「無冠の帝王」を気取っている。ないと仕事ができないという国家資格なら仕方がないが、それ以外のつまらない資格はこれからも見向きもしないだろう。そうした資格に頼るのは、自信のなさの表れとも言えるだろう。
そんなことをつらつらと考えさせられたLECのセールスレターなのである・・・







【今週の読書】
 
     

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