最近はちょっと下火になった尖閣諸島の漁船衝突事件。
先週末にあの事件の事実関係を聞く機会に恵まれた。
ニュースでは違法操業をしていた中国漁船が、海上保安庁の巡視船に体当たりして逃げようとしたと報道されている。しかし事実は少し違うようである。
もともと最近の中国側の動きに敏感になっていた海上保安庁。
今までは違法操業に対してはすべて域外退去を求めていた。
ところが例の漁船はいつもと違う様子で操業していたため、巡視船は初めて停船を命じた。
実は漁船の船長は酒を飲んでおり(飲酒運転だ)、それもあって停船命令に従わずに逃走を図る。
巡視船はこれを受けて追跡。
と言っても巡視船の最高速度35ノットに対して漁船は10ノット。
まるで勝負にならない。
漁船は巡視船から逃げられないが、何せ海の上の事、巡視船も漁船を止められない。
止めるとなれば警告射撃で脅すか、進路をふさぐしかない。
ロシア海軍は我が国の漁船に対して実弾をぶっ放したが、さすがにそういうわけにはいかない。
というところで巡視船は後者の方法を取った。
そこから2時間にわたる鬼ごっこ。
最初の衝突は、巡視船が漁船を追い越し、進路を直角に遮ったところで起きる。
漁船はまっすぐ進み、巡視船の後部に衝突。
Yutubeの映像でも、巡視船の白い航跡が漁船の進路を遮っている事が分かる。
続いて次の巡視船がやはり並走から漁船を追い抜き、漁船の進路上に寄って行ったため、漁船は右後部に接触。これも巡視船が追い抜きざまに漁船の進路上に侵入し、後部に衝突している様子がビデオでもわかる。尻尾で頭を叩いた感じだ。つまり進路をふさいだ巡視船に、漁船が避け切れずに突っ込んだというのが事実らしい。
と言って巡視船が悪いと言いたいのではない。
意図的に衝突してきたのか、車と違ってブレーキのない船ゆえ回避できずに衝突したのかは微妙な違いだ。ひょっとしたら巡視船側では前者と感じたのかもしれない。
相手のゲンコツに向かって顔から突っ込めば殴られたのと同じという理屈なのかもしれない。
いずれにせよ、諸悪の根源は停船命令に従わなかった漁船なのには変わりない。
逃げる漁船を巡視船が体を張って停船させたのであり、それはそれで立派な行為である。
巡視船側は当初中国海軍の偽装兵の可能性も疑ったらしいが、蓋を開けてみれば船長以下、田舎のおっさんたち。船長の勾留以後はドタバタで中国側との意思疎通も図れず、やる事なす事裏目裏目と出て、結局大騒動に発展。結局は日中の相互不信が事態を悪化させてしまったようである。
ただ事実関係を知ると、最初から何が起こったか公表し、乗組員は田舎の漁民で政治的な意図はなかったとしてお灸をすえて釈放しておけば、大事にはならなかったのではないだろうか。
企業の不祥事でも下手に取り繕おうとして墓穴を掘る例は枚挙に暇がないが、今回もそうなのではないだろうか。意思疎通ができていなければ、些事が大事になるのは個人も国も同じだと言える。
一人一人がしっかり働いていても、しっかりとしたリーダーシップが欠けていると、あらぬ方向に向かってしまう。我が国の行く末は本当に大丈夫なのだろうかと、思わずにはいられないのである・・・
【昨日の読書】
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【超ヤバイ経済学】スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・タブナー
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