2009年1月12日月曜日

中国から見た日本

我々は他人を評価するときその言動や外見に頼る。
それはそれで仕方がないのであるが、その人の考え方まであわせてわからないとその人の本当の姿は見えてこないものである。そんな事を考えさせられた本に出会った。
胡錦濤 日本戦略の本音 ナショナリズムの苦悩である。

実は社会人向けのある勉強会に毎月参加している。
毎回ゲスト講師を招いて講義&ディスカッションをしているのだが、今回の講師が著者の東洋学園大学教授の朱建栄氏。日本にはもう20年以上住んでいて、日本語はペラペラであり日本についてもよくわかっている。
「日本と中国は近いわりに互いを『色眼鏡』を通して相手を見ている」
そう主張するこの本は、講義の課題図書として指定された関係で読んだものだが、そんな日中関係に解決策を提示する本である。

日本と中国の間には様々な問題がある。
靖国神社、歴史認識、尖閣諸島、ODA(円借款)、反日デモ、台湾問題・・・
それらを一つ一つ取り上げて、問題の所在を解説し解決策を提案する。
それも相手の考え方を含めてなので、なぜそういう問題が起こるのか、がわかる。

例えば小泉総理が強行して問題となった靖国神社参拝。
ニュースで見る限り「A級戦犯といっても日本には日本の事情があって起こした戦争。
日本のために働いた人達だし、死んだ人を弔うのになぜ外国に文句を言われなければならないのか」と個人的には思っていた。
「堂々と8月15日に行けばいいのに」と。

これに対し中国からみると違う姿がある。
事の発端は対日戦時賠償の放棄。
日本との平和条約締結に際し、中国は当時500億ドル(当時の日本の国家予算の18年分)と試算されていた戦時賠償金を放棄した。
日本は日清戦争、義和団事件で多額の賠償金を当時の中国政府から取っていたのに、である。それらの資金で八幡製鉄所を作り日露戦争の準備もできたのだ。

放棄の理由は第1次大戦のドイツの教訓でもあり、遠い将来にわたる関係を考えての首脳陣の英断であった。だが、国民は賠償金に多大な期待を寄せている。
中国最大の長春自動車工場を20~30社も作れるし国民の給与レベルも一段上げられる。
どう国民を説得するか。

そこで考えられたのは、「日本人もまた一部の軍国主義者によって引き起こされた戦争で悲惨な目にあった被害者である。同じ被害者から賠償金は取れない」という理屈であった。そうして国民を納得させた経緯があるゆえに、「同じ被害者であるはずの国民の代表である現役の総理大臣が加害者であるA級戦犯に対して参拝する」のは「国民に説明がつかない」となるのである。
そうした背景まで解説してくれるメディアはない。

もちろん一つ一つの問題をどう考えるかは個人の自由だ。
ただそういう事実を知った上で判断しなければ偏った判断となってしまうだろう。
あらためて相互理解の重要性を認識させられる。

2005年時点と少し前の本であるが、基本は現在でもかわらない。
課題図書でなければ絶対読まなかったと思うが、自分の認識の幅を広げてくれる良い本に出会ったものである。
        
  

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