2023年2月23日木曜日

妻が口をきいてくれません

 何ともグサリと胸に突き刺さるタイトルを目にして思わず手にしたこの一冊。中身を見れば、実は漫画。漫画だろうが小説だろうがノンフィクションだろうが、本質を押さえているなら変わりはない。そのものズバリのタイトルに反応したのは、「思い当たる節があるから」に他ならない。我が家も口こそきいてくれるものの、どうもどこかよそよそしく、おおよそ他人行儀である。いかに鈍感な私でも、妻が不満を抱えていることぐらいはわかる。そんなところから中を読み進めていく。

 登場するのは、妻、娘、息子という家族を持つ夫、誠。どこにでもいる、まさに我が家と家族構成まで同じ一家である。まずは「夫誠の章」から始まる。ある日突然、妻が口をきいてくれなくなる。「行ってきます」と言っても「ただいま」と帰ってきても妻は口をきいてくれない。喧嘩をした記憶もない誠には理由がわからない。口をきいてくれなくてもお弁当を作ってくれるし、夕飯も用意される。されど会話だけがない。幸い子供がいるので誠は子供と話す事でとりあえず救いがある。

 何とか口をきいてもらえるよう誠は努力する。お弁当のお礼を言ったり、積極的に家事を手伝ったり、花とケーキを買って帰ったりする。思いつくことはやってみるが、状況は変わらない。そして3ヶ月、4ヶ月と経過し、やがてそれが5年、6年となる。誠はついに「家に帰りたくない」と思うようになり、あの二文字が脳裏を過ぎる。家はもはや誠にとって安らぎの場所ではなくなり、生き地獄と感じるようになる。そしてとうとう「離婚したい」と妻に告げる。

 ひどい奥さんだとここまで読んできて思う。「我が家と同様だ」と。しかし、続く「妻美咲の章」では、奥さんの視点から描かれる。何気ない夫の一言一言が、子育てに追われる妻の「小さなイラっ」を誘う。それはもののありかだったり、やり方だったり、思いやりのない一言だったりする。妻の言うことを関心なさげに聞き流す。挙句に妻のぞんざいな対応に対し「愛はあるのか」と無邪気に問う夫。美咲は「ああ、今妻は大変なんだなあ」と察する愛はないくせにと、キレて言う。ごもっとも。そしてついに妻は限界に達する。

 相手の立場に立ってみれば、それは至極もっとも。夫の章を読むと、奥さんが悪いと思うものの、妻の賞を読むとその切ない気持ちがよくわかる。いかに夫が心無い言動を取っているか。夫に罪はあるかと問われると難しいところがあるが、強いて言うなら、「鈍感こそが罪」と言えるかもしれない。無言を貫く妻に夫は何かを感じて行動に移す。それを見ていた妻は思う。「あんなに何度も口に出してお願いしてもしてくれなかったのに、口にしなくなったら私がしてもらいたかったことをどんどんしてくれる」。

 人は他人の考えを読むことはできない。だから相手が何を感じているのかもよほど意識しないとわからない。ここに出てくる夫は100%自分思考で、妻が何を感じているのか考えようとも感じようともしない。しかし、口をきいてくれなくなった事でようやくその意識を妻に向ける。「あんなに何度も口に出してお願いしてもしてくれなかったのに、口にしなくなったら私がしてもらいたかったことをどんどんしてくれる」という妻の思いは身に堪えるものがある。

 しかし、と思う。我が家も妻は私に対してかなり不満を抱えていると思う。そしてその原因は鈍感な私にあるのだと思う。だが、家事に関する妻の細かいマイルールにはついていけない部分も大きい。人一倍きれい好きの妻に対し、男は1〜2週間くらい掃除しなくても何ともないという感覚がある。そこにはどうしても相容れない感性の違いがある。「いちいち言わないとわからないのか」という妻の感覚と「いちいち言われなければわからないし、察するなんて煩わしい」という私の感覚は真っ向から対立する。

 勢い、妻の小言が重なれば、それがやがて私の心にダメージとなって蓄積されていく。「家に帰りたくない」と思う夫、誠の気持ちはよくわかる。私も妻がいると家にいて寛げないのも事実である。そんな家にいる必要ってあるのだろうかと思う事、しばしばである。漫画は、ちょっと漫画チックな展開があって無事夫婦仲が改善して終わる。羨ましいが、漫画のお話だからゆえに現実的にはなかなか難しい。身につまされるが参考にはならない。妻を理解したいとは思うが、自分なりの限界も感じている。

 夫婦とは言え、男と女の感性の違いもあれば、互いに育ってきた環境の違いもある。当然、価値観も違う。うまくやっていくにはどちらかが、あるいは互いに譲り合う必要がある。初めのうちは愛でカバーできても、やがて「いい加減にしろよ」と思うようになる。言わなくてもわかればいいのだが、生憎と人は言葉にしなければ互いの感情はわからない。どうすればいいのだろうかと思うも、何とかしようと思うのなら諦めずにできることからやるしかない。

 とりあえず言われたことはきちんとやる。なるべく気を使って過ごす。1人になるという選択肢は、いろいろやってダメなら最後に選べばいい。まずはできることからやってみようか。漫画を読んでそんなことを考えたのである・


Victoria_WatercolorによるPixabayからの画像 


【今週の読書】

  






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