2022年11月10日木曜日

人事部にて

 今の勤務先には財務面での貢献を期待されて入社した。役職は総務部長。しかし、中小企業ゆえにその役割は多岐にわたる。財務はもちろん、人事部門も純総務部門も兼ねた総務部である。日常の経理や財務だけやっていればいいというわけではなく、最近は人事部門の役割も忙しい。それも新卒・中途の採用に既存社員の面談等、気がつけばいろいろと手を広げてしまっている。まぁ、やることが多いという事は、それだけ存在感を示せるわけであるし、そういう気持ちで前向きに取り組んでいる。


 一人一人の社員をよく知ろうとして始めた面談では、知らずと人生相談的なことになることがしばしある。最近何気なく気づいたのであるが、若い人と話す時にいつの間にか親の気持ちになって話している事が多くある。精神科に通っている若手女性には、「お母さんと話したか」と尋ねた。実家を離れて一人暮らしであり、家に帰ってから誰かと話をしているのか気になったのである。「母親には話せていない」との答え。その理由は「親に心配をかけたくない」と。


 その気持ちはよくわかる。誰もが持つ感情だと思う。だが、逆に親が困っていて、「子供に心配をかけたくないから」と知らせてくれないケースを考えたらどう思うだろうか。話をすれば、親としては当然心配するだろうが、その反面、話すことによって安心感を与えるのも事実。「自分の子供は何か困った事があれば話してくれる」というのは、大いなる安心感だろう。そう話したら、その若手女性は納得してくれてさっそく故郷の母親と電話で話をしたと言う。自分自身、自分の子供が同じ状況に陥ったのなら、遠慮なく話してほしいと思うから、それを聞いて大いに安堵した。


 別の若手は、人生の岐路とも言うべきところで悩んでいる。今後、どうするのか。「考える時間がほしい」と漏らす。ただ、考える時間があれば答えが出てくるものでもない。同じ場所に立ち止まっていても見える景色は変わらない。変えるためには自ら動かないといけない。彼には誰かと話をすることを勧めた。彼の場合、特にいいのは父親だと判断した。男の場合、父親は話しにくい存在である。されど、父親には社会の一戦で働いてきた人生経験がある。息子に相談されれば悪い気はしないはずである。


 私にも娘がいて息子がいる。いずれ2人も社会に出ていく。そしてそこでさまざまな壁に行き当たることだろう。その時、できればそばに寄り添っていて適宜アドバイスできたらと思う。だが、たとえ一緒に暮らしていたとしても話してくれるだろうか、とも思う。「親に心配かけたくない」と話さないでおかれる方が心配するよりも辛いと思う。身近にいるのに、人生の岐路での悩み事を打ち明けてもらえないのは切ない気がする。若手に対するアドバイスには、私のそんな思いもある。


 中途採用(今は「経験者採用」と言うらしい)の現場では、明確にやりたいものがある人の方が光って見える。転職するには理由があるはず。採用する方としてはその理由が気になる。まだ20代前半で転職歴が3回を超えると、警戒感が強くなる。「なぜ長続きしないのだろうか」と。本人に何か問題があるのかもしれないと考えるのが自然である。特に大きく職種を変える場合は、よほどもっともな理由がないと採用を躊躇してしまう。適応障害等の精神疾患の病歴があれば慎重になる。「再発するかもしれない」と。書類からはわからない人物像をあれこれと想像してしまう。


 そんな採用戦線にいると、将来息子に相談された時に何て答えるかも決まってくる。転職する時は「前向きな」転職にするべき(少なくともそう装うべき)。「○○がやりたい」というものを前面に出した方が説得力は高まる。その前に最初の就職先は大企業がいいだろう。最初にしっかりとした社員教育を受けられるし、会社員というものを学べる。何より最初に名の通った大企業に就業経験があれば、その後無名の中小企業に行っても起業してもそれが自らの評価の助けになる。「実力がある」と思ってもらえるのである。


 いつの間にか自分も人生の後半戦。それなりに経験を積んできたが、その経験を誰かの役に立てられるなら嬉しいと思う。まず2人の子供たちに役立ててもらいたいと思うが、一緒に働く若手社員にも役立てられたらと思う。そう考えると、「人事部」の仕事も悪くない。大きな企業では、とても財務も人事も何て両立はできないが、それができるのは中小企業ならではと言える。仕事としては実に面白い。世の中には仕事がつまらないという人が多いようであるが、私の場合は楽しく仕事ができているので幸せだと言える。


 給料も大事であるが、やり甲斐も大事。そんなやり甲斐も持てて面白い仕事ができる幸せ。それを若手の人に役立てられるのであれば、なお一層喜ばしい。これからも誰かの役に立てるように、楽しく働いていきたいと思うのである・・・


Sasin TipchaiによるPixabayからの画像 

【本日の読書】

  



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