2021年9月9日木曜日

島耕作と菅総理

菅首相、退陣へ 自民総裁選に不出馬―政権運営行き詰まり
2021年09月03日13時38分
菅義偉首相(自民党総裁)は3日の党臨時役員会で、17日告示、29日投開票の総裁選に立候補しないと表明した。新型コロナウイルス対応への世論の不満などから内閣支持率が下落する中、党内で「菅離れ」の動きが広がり、総裁再選は困難と判断した。首相は後継の選出を待って退陣する見通しだ。
時事ドットコム
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  ネットで無料漫画をよく読んでいるが、最近気に入っているのが『島耕作』シリーズである。これも面白いもので、学生から始まってヤング、主任、係長と出世していき、最後は会長、相談役にまでなるサラリーマンの出世物語である。それぞれに面白いのだが、先日読んだのは、『ヤング島耕作』のある話。それはまだ島耕作が3年目の若手の頃の物語で、島耕作は会社の寮に住んでおり、同じ部屋の2年目の若手の相談に乗るという内容である。

 その若手は、学生時代からコツコツ努力せよと教わり、それを実践して高卒ながら大企業である初芝電産に入社する。ところが入ってみれば真面目に働いた人が必ず報いられていないうということに気づく。むしろ調子よくやっている者の方が上司から可愛がられている。そういう者は、上司の見ていないところでは手を抜き、それでも評価されているが、一生懸命コツコツ努力し続けている自分は評価されていない。そんな悩みを島耕作に打ち明けるのである。

 そんなエピソードを読んでいて、自分もまさに同じように感じていた若い頃を思い出していた。私もどちらかと言えばコツコツ努力するタイプである。上司に媚を売る暇があったらその分努力する。上司が見ていようといまいと仕事に対するスタンスは変えない。それを良しとしていたのである。ところがお調子よくやっている同期が評価され、自分はそれ以上に努力しているのに評価されない。上司に誘われて飲みに行っては楽しく過ごす同期の男は「頑張っている」と評価され、自分も負けずにやらないとダメだと叱咤される。おかしいだろうと不満を抱えていた。

 私の同期の男も頑張ってはいた。だから評価されるのは当然だと思うが、その「頑張る方向」が私とは違っていたのである。取引先係のその同期と融資係の私とでは仕事の内容も違うから、ある程度は仕方がない。スポーツで言えば攻撃側は華々しく見えるが、守備側は地味である。そんな違いもあったが、上司に誘われても基本的に飲みに行かなかった私のスタンスもまずかったと思う(もちろん、喜んで行きたくなる上司は別である)。今振り返ってみても、サラリーマンとしては間違いなく世渡りはうまくなかったと思う。仕事だけきちんとやっていればそれでいいという考え方であったのである。

 正しく実力だけで評価して欲しいと思うのが人情だが、会社というところは残念ながらそうではない。結局、「愛いやつ」、「覚えめでたいやつ」の方が出世したりする。サラリーマンとして最も大事なものは、間違いなく「コミュニケーション能力」だと思う。実力は二の次である(もちろん、実力がなければそもそもダメであるが、「ある程度の実力」で十分である)。今でこそそう理解できるが、当時はそれがまだ理解できず、理不尽さに憤り続けていたものである。そんな経験があるからこそ、この場面に心惹かれるところ大であったのである。

 長期政権であった安倍晋三前首相の後を受けて総理になった菅首相が総裁選の出馬断念を表明した。支持率低下に歯止めがかからず、地方選挙でも負けが続いている状況であり、やむを得ないのかもしれないが、ちょっと残念に感じたニュースである。確かに話をしている姿とかに、どうも覇気のなさを感じさせるし、人気が出るタイプでは間違いなくない。イメージでだいぶ損をするタイプだと思う。しかし、伝わってくる評価では、ずいぶん仕事のできる人だと言う。評価はされていないが、実績も上げている。なんの後ろ盾もなく総理大臣にまで登りつめたのだから、考えてみるまでもなく、その通りの実力者なのだろうと思う。だが、それだけではダメなのだろう。

 国民の立場からすると、政治家は一様に何をやっているのかはよくわからない。わかるのは、テレビに出て話をしているところだけである。よほど興味を持ってその発言や功績をフォローしていないと、一般人には政治家の実力なんてよくわからないだろう。支持率なんていい加減で、その時々の雰囲気でコロコロ変わったりする。マスコミの報道も偏っているし、よほど意識しないと報道されるイメージに惑わされてしまう。コツコツ努力していたって、目につかなければそれまでだし、暗いガリ勉タイプより明るい性格のやつの方が上司には好かれるものである。それはサラリーマンでも政治家でも同じなのだろう。

 悩む若手に、島耕作は世の中は理不尽なものだと思った方がいいとアドバイスする。ものごとはあまりこうだと決めて考えない方が楽だとアドバイスする。そして寮の4人部屋仲間と麻雀をやれと勧める。禁止されているからと抵抗する若手に「だからやれ」とアドバイスするのである。今の私から見れば、いいアドバイスだと思うが、私もあの頃こういうアドバイスが欲しかったなとつくづく思う。さすれば、その後の銀行員人生もずいぶん変わっていただろうと思わざるを得ない。

 菅総理も忸怩たる思いをしているのかもしれない。私は別に自民党支持者でも菅総理支持者でもないが、政治家は根暗でも力強く話せなくても、何をやっているのかわからなくても、実はしっかり仕事をしてくれているというタイプが私はいいと思う。次の総裁には誰がなるのかわからないが、これで引退するわけではないし、菅さんには引き続き国会議員として国民のために働いていただきたいと思う。自民党支持者ではないが、共産党や立憲民主党などの「なんでも反対」野党よりは自民党の方がはるかにマシだし、そういう意味では自民党の「消極的支持者」であるとも言えるので、頑張っていただきたいと思うところである。

 世の中は理不尽である。
それはもう十分理解している。それでも、とあえて思う。イケメンでテレビ映えがするとか、コミュニケーション巧みで「愛いやつ」であるとか、そういうことではなくて、純粋に「仕事ができるか」という実力本位で評価して欲しいものだとつくづく思う。政治家であってもサラリーマンであっても。コミュニケーションが大事であることは否定しない。私も今では仕事で必要なコミュニケーション力はそこそこついたと思うが、それでもやはりコツコツと努力してやった仕事の内容に対して100%評価される世の中であって欲しいと思う。

 そういう世の中で私は働いてみたかったとつくづく思うのである・・・


Maryam62によるPixabayからの画像


【本日の読書】




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