2021年9月19日日曜日

論語雑感 雍也第六(その1〜2)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感。
【原文】
子曰。雍也可使南面。仲弓問子桑伯子。子曰。可也簡。仲弓曰。居敬而行簡。以臨其民。不亦可乎。居簡而行簡。無乃大簡乎。子曰。雍之言然。
【読み下し】
子(し)曰(いわ)く、雍(よう)や南面(なんめん)せしむべし。仲弓(ちゅうきゅう)、子(し)桑(そう)伯(はく)子(し)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、可(か)なり、簡(かん)なり。仲弓(ちゅうきゅう)曰(いわ)く、敬(けい)に居(い)て簡(かん)を行(おこな)い、以(もっ)て其(そ)の民(たみ)に臨(のぞ)まば、亦(ま)た可(か)ならずや。簡(かん)に居(い)て簡(かん)を行(おこな)わば、乃(すなわ)ち大簡(たいかん)なること無(な)からんや。子(し)曰(いわ)く、雍(よう)の言(げん)然(しか)り。
【訳】
先師がいわれた。
「雍には人君の風がある。南面して政を見ることができよう」
仲弓が先師に子桑伯子の人物についてたずねた。
先師がこたえられた。
「よい人物だ。大まかでこせこせしない」
すると仲弓がまたたずねた。
「日常あくまでも敬慎の心を以って万事を裁量しつつ、政治の実際にあたっては、大まかな態度で人民にのぞむ、これが為政の要道ではありますまいか。もし、日常の執務も大まかであり、政治の実際面でも大まかであると、放漫になりがちだと思いますが」
先師がいわれた。
「おまえのいうとおりだ」
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 大学を卒業し、銀行に入ったのは1988年の春であった。同期は330人くらいいたと記憶している。その中でも同期のKは、一見すると遊び人風で(実際もそうなのであるが)、行動はどこか破茶滅茶的なところがあって、お世辞にも銀行員的とは言えない人物であった。しかし、天下のW大学ラグビー部でレギュラーを取った男でもあり、それだけでも尊敬に値する男である。そんな同期の彼が、一部上場企業の社長になったと報じられた。同じ同期ながら、ずいぶん差がついてしまったものである。

 彼の持ち味は明るくて、破茶滅茶なところはあるが、その実友人知人を大事にするところがある。どちらかと言えば、1人でいることを好む私とは対照的で、彼は人が集まるところの中心にいるような人物である。銀行に入った頃の彼は、とても社長になるような男には見えなかったが、おそらく社会人経験を積む中でそれなりのものを身につけ、そして持ち前の人柄で人脈を得て今の地位を築いたのだろうと思う。大まかなところは銀行員ぽくはないが、こせこせしない親分肌の気質は、人の上に立つに相応しいものだろうと思う。

 最後に彼に会ってからもう10年以上会っていないが、Facebookでその活躍は知っていたが、私にはないものをことごとく持っている男である。「日常あくまでも敬慎の心を以って万事を裁量しつつ、政治(=経営)の実際にあたっては、大まかな態度で人民にのぞむ」という言葉通りの男であると思う。一方、社長とは言え、「日常の執務も大まかであり、政治(=経営)の実際面でも大まかである」人物も知り合いにはいる。その人の会社はまさに迷走状態であった。政治も経営も核にあるのは同じなのだろう。

 ずいぶんと会っていないが、会えば彼はあの頃のように接してくれるだろう。銀行チームの同じジャージを着てともに試合に出ていたあの頃のようにである。同じチームではありながら、一流チームのトップでプレーしていた彼に遅れじと張り合っていた気持ちは今も私にはある。立場では雲泥の差がついてしまったが、私は私で今の立場で恥ずかしくない行動を取りたいと考えている。方や東証1部上場企業のトップ、方や中小企業の1事業部長ではあるが、自分の立場で胸を張って彼に自分の仕事の説明をしたいと思う。それにはそれなりのものがないといけない。

 先日、新入社員向けの研修では、「どんな事があっても『言われてません』、『指示されていません』とは言ってはいけない」という話をした。それを言った瞬間、「自分は指示待ち族である」と公言することになる。いい年したサラリーマンでも、結構平気でこの言葉を使っている。仕事は自ら考え、自ら動く事が大事。1人でいることを好む性分ではあるが、仕事ではどうしても人と関わり合わないといけない。であればそれなりに人の輪の中で影響力を発揮したいと思う。自分より経験の浅い人には、大らかに接しつつ、影響力を持てるようにしたい。

 人はやはり大まかな態度で接してくれるリーダーについて行きたいと思うものだと思う。自分の経験を振り返ってみても、小さなミスや漏れをネチネチと詰める上司には嫌悪感しか抱けなかった。自分もそうならないようにしないといけない。彼はきっとそんな態度は微塵も見せないだろう。こせこせしないのもその通り。仕事は1人ではできない以上、信頼して任せつつ、上手く行くように心配りをし、いざとなれば己の責任を全うする。それが人君の風を備えた彼に対する対抗策であるように思う。

 たとえ差があったとしても、彼に対しては常に恥ずかしくない自分でいたいと思うのである・・・


Torben StroemによるPixabayからの画像 

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