2021年9月2日木曜日

紙か電子版か

 趣味でもあって本はよく読む。本を読むのは主に電車の中。いつの頃からか通勤電車は私の貴重な読書タイムである。であるからここ10年来、通勤が苦だと思ったことはない。むしろ7年前に転職した際、通勤時間が過去最長の1時間半になった時も、むしろ喜びを覚えたくらいである。そして今回、二度目の転職に際し残念だったのが通勤時間が半分になったことである。まぁ、物は考えようという典型かもしれない。そんな読書タイムに読む本はいまだ紙の本である。

 近年は電子書籍が幅を利かせてきている。確かに電子書籍はかさ張らないし、スマホで読めるので便利である。パラパラめくるのは面倒だが、後から戻って読み直すことも、「付箋」をチェックしておけば紙の本と同じように後から簡単に読み返すこともできる。みんなスマホに入ってしまうから何十冊、何百冊という蔵書を持ち歩くこともできる。私のように行きと帰りとでそれぞれ別の本を読む人間にとっては、大きさもまちまちな本を少なくとも2冊以上持ち歩く必要もなく、便利この上ない。ただ、なんとなくの抵抗感を除いては、であるが・・・

 最近、新聞も紙の新聞から電子版に切り替えた。値段が安いというのもあるが、パソコンでもスマホでも読めるという手軽さが良さそうに思えてである。ただ、やはり紙の新聞の優位性は動かない。電子版でも確かに紙面と同じ記事を読むことはできる。しかし、パラパラとめくっていって、ふと目についた記事を読むというのが電子版では少ない。紙面であればまず一通り目を通すことができるが、電子版だとその頻度が落ちてしまう。「目に入ってくる」のと「探しに行く」の違いと言える。そしてこの違いは大きい。

 日経新聞の場合、電子版の良さは記事の保存とかこの記事の読み返しであろう。あとであの記事を読み返したいとなった場合、紙の新聞だとガサゴソと古新聞を漁らないといけないが、電子版だと検索できる。保存しておけば検索の手間もいらない。また、私の履歴書など過去の特集も読むことができる。新聞の場合、「目に入ってくる」ことが少ないというデメリットはあるが、メリットがそれを上回る。

 電子版は漫画も同様である。こちらは一長一短だろうか。かつて漫画小僧だった私は今でも漫画を愛する。最近はもう紙のコミックを買うこともないが、無料漫画を楽しむか、『鬼滅の刃』など最近のものはKindleで購入している。昔の漫画は見開き両ページを使った場面があったが、電子版だと半分に割れてしまう。両ページであれば迫力だったものが、半分ずつだと半減してしまう。ただし、最近の電子版を意識した漫画だと、「縦読み(縦にスクロールする)」というものもあり、横に読んで行くタイプと異なる画面構成が可能になっている。これはこれで面白い。

 電子版の最大のメリットはやはり「保管」だろう。私の部屋の本棚はなるべく増やさないようにしようと思っても、やむなく溜まっていく本や漫画がかなりのスペースを占めている。これがすべて電子書籍であったらさぞかし部屋も広くなると思う。紙の本を買うのをやめれば、「スペース」のメリットは果てしなく大きい。とは思うものの、まだどうしても紙の本に心が残ってしまう。新しいテクノロジーが登場した時、どうしてもついていけない人がいる。老人が最たる者であるが、紙の本に執着が残るのは「そういうことか」と思う気持ちもある。

 紙には紙の良さがあるとは思う。ただ、だからと言ってそれに固執するべきであろうか。「スマホは画面が小さい」というデメリットを挙げてみる。それは確かにその通りであるが、よくよく文字の大きさを比べてみると、大して違わない。それにタブレットなら大きさの問題はない。立ち読みでパラパラと本をめくり、読むか読まないかを決める場合は、紙に軍杯が上がる。だが、実はそうやって読む本を選択するケースは私の場合ほとんどない。書評から選ぶのが大半だからである。

 購入ということを考えてみると、電子版の方が若干安い。ただ、古本ということになれば紙に軍配が挙がる。電子版では読み終わった本を売ることはできないし、買うこともできない。電子版には「古書」という概念がない。さらに「借りる」ということが電子版にはできない。私がKindleで購入した場合、紙の本であれば子供に簡単に読ませることができるが、電子版だとアカウントを共有する必要がある。幸い子供に知られて困る類のものはないが、読書のプライバシーは守れない。(今のところ、かもしれないが)図書館で借りることもできない。

 紙の本がいいのか電子版がいいのかという議論は不毛であると思う。電子版は一つの形態であり、好きな方を選べば良いと思うからである。実際、電子版では無料で読めるものも多く、古い本が公開されていることもある。たまたま目について読んだものでも、『遠野物語』、『善の研究』、『堕落論』等多数ある。本屋でブラブラするのと同じように、オススメとして表示されるのは電子版ならではである。どちらがいいかとあれこれ考えるよりも、あれもこれもと考えたいところである。

 それにしても便利になってきたものだと思う。かつては立派な本棚がステイタスだったが、これからは不要となるのだろう。あるいは「見栄え」で必要とされるのかもしれないが、私個人としてはスペースのメリットに魅力を感じる。先行きのところはわからないが、とりあえず漫画はすべて電子版になるだろう。小説やビジネス書の類は都度判断だ。今の段階でどちらがいいというのではなく、柔軟に使い分けていきたいと思うのである・・・



【本日の読書】
  



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