2013年12月7日土曜日

脱原発のその前に

立場が違えばモノの見方、考え方も変わる事は、もう随分前から気づいている事だが、先週またそんな経験をした。いつも参加している勉強会で、某原発(も扱っている)メーカーの方に原発についての意見を伺ったのである。最近は、小泉元総理が脱原発を唱えて世論を沸かせている。日本の各地の原発も停止したままであるが、原発擁護の声も根強いものがある。そんな擁護側の意見を聞く機会に恵まれた、というわけである。

まずは、「原子炉は安全ではない」との説明がなされる。
「安全神話」とよく言われるが、実は「原子炉は安全なものではなく、危険なものである」との説明。そしてその上で、「それをいかに安全に利用するか」が重要なのだという。
なるほど、言われてみればその通りでわかりやすい。

原発の事故に際しては、「止める・冷やす・閉じ込める」の工程が重要。
福島第一では、安全に「止まった」ものの、電源喪失という事態に「冷やす」事ができなくなった。
それが重大事故の原因。
しかし、もっと新しい設計の福島第二はほぼ同じ状況下で「冷やす」機能が働いたため、大事に至らなかった。最新技術では、「電気で冷やす」から「勝手に冷える」レベルに来ているのだとか。
いたずらに福島の事故だけをもって、今後も同様な事故が起こる危険があるという事でもないらしい。

そして肝心な、「原発が必要な理由」であるが、
① 資源のない日本は、現在燃料購入費として以前より4兆円も余分に支出している
② 異常気象が話題になっているが、従来型エネルギーは、その原因となる環境負荷が大きい
③ 脱原発を宣言する事で原子力産業が斜陽産業となり、その結果若手の技術者が集まらなくなり、技術が継承されなくなる
④ 技術が喪失した場合、中国等日本に影響のある隣国で事故が起こった場合、対応できなくなる。
⑤ 技術が喪失すれば、日本にある核兵器数千発分のプルトニウムの管理処理や、日米原子力協定が改定できなくなる事で、アメリカの技術協力が得られなくなる
などが挙げられるのだとか。

①については、昨年の日本の貿易赤字が6.9兆円とか言っていたので、その大半が燃料関係と言う事になる。この影響はバカにならない。ただ、原発の危険性との比較でみれば、理由としては弱いと思う。
②については、福島の環境汚染はもはやPM2.5がどうのと言うレベルを超越している。「どちらが環境に悪いか」と考えたら、比較にならない。

問題は③~⑤の技術の継承だろう。
原発に反対するなら、この問題に対する回答を用意しないといけない。
将来有望な産業に進もうと考えるのは、若者として当然。
将来性のない業界となってしまったら、若者が集まらなくなり技術が継承されないという指摘ももっとも。銀行員としては、すぐ「では国費で年収を高くして魅力をPRすれば」と考えてしまうが、それについてはどんな反論があるのだろう。

原発の一番の問題は、最新技術が進んでいる原子炉はではなく、むしろ使用済燃料棒だと思う。
その問題は深刻で、いまだ最終処分場もない状況だ。
オンカロのような施設も日本では難しいらしい。
プールに沈めているだけというお寒い状況こそ恐ろしい。
使用後も50年くらい冷やさないといけないというし、ここは今後も技術開発は継続していかないといけない事は事実だろう。

技術継承の重要性は理解できるが、そのために原子炉を動かし続けないといけないのかどうかは、ちょっと疑問だ。
コスト的には、シェールガスが普及すれば、よりクリーンなガス発電が安いコストで実現できると言われているし、技術の継承という目的のために原子炉そのものを動かす必要性があるとは思えないが、その点は今後興味のあるところだ。

話をしてくれた方も、「業界としてもっと積極的に意見を言うべきだ」と仰っていた。
説明責任という点からも、うやむやなまま推進を主張するのではなく、「ただ安全だ」だけでなく、必要性をもっと訴えるべきだろう。
そして反対派も、それに対して正面から感情ではなく理論で反論すべきだ。
健全な議論こそが、正しい方向へと導いてくれるに違いないと思う。

そんな考えを持ちながら、脱原発の考え方を維持していきたいと思うのである・・・

【今週の読書】


  
    

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