2025年7月13日日曜日

論語雑感 子罕第九 (その7)

論語を読んで感じたこと。解釈ではなくあくまでも雑感
【原文】
子曰、吾有知乎哉、無知也。有鄙夫、問於我、空空如也。我叩其兩端而竭焉。
【読み下し】
子(し)曰(いわ)く、吾(われ)知(し)ること有(あ)らんや、知(し)ること無(な)きなり。鄙夫(ひふ)有(あ)り、我(われ)に問(と)う、空空如(こうこうじょ)たり。我(われ)其(そ)の両(りょう)端(たん)を叩(たた)きて竭(つく)す。
【訳】
先師がいわれた。「私が何を知っていよう。何も知ってはいないのだ。だが、もし、田舎の無知な人が私に物をたずねることがあるとして、それが本気で誠実でさえあれば、私は、物事の両端をたたいて徹底的に教えてやりたいと思う」

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 私は昔から何となくではあるが、「自分は人に教えるのがうまい」という感じがしている。「説明がわかりやすい」とはよく言われるし、人が何となくモヤモヤしていてうまく言い表せないようなことを「こういう事?」と言語化したこともしばしばある。もちろん、当たり前ではあるが、それは自分でもよく理解しているという事が前提となっていて、「教えるのがうまい」と言われるのは、わからなかった自分がわかるようになったプロセスをうまくたどっているからではないかと思う。

 そのための秘訣としては、「曖昧に覚えない」ということに尽きると思う。上部だけの理解ではなく、「なぜそうなのか」まで深く理解するように努めている。そうすると、「それならこう理解した方がわかりやすいかもしれない」という事が自分でもわかったりする。その時、自分の中で行われているのは「自分に対する説明」であったりする。そこまでいくと、今度はそれをそのまま人に説明するだけであり、それが「わかりやすい」という評価になるのかもしれないと思ってみたりする。

 「わかりやすい」と言われれば嬉しいもの。そうなるとまた教えたくなるというものである。高校生の頃、将来の進路の一つとして「教師」というものを考えた事がある。教員免許があれば何かの役に立つかもしれないという高校生らしい漠然とした甘い考えだけでなく、それは「人にものを教えるのは面白い」という感覚もあったと思う。ちなみにその進路は、「教育実習がめんどくさい」というつまらぬ理由で立ち消えたのである。それでも「人にものを教えるのは面白い」という感覚は今でも残っている。

 それは現在でも面白いところで働く。現在の仕事では人事の担当もしているが、毎年2日間の社内での新入社員研修は自分で企画している。もちろん、社内の各部署の人に手伝ってもらっているが、クライマックス(と自分では思っている)となる2日目の最後は私の1時間の講義で締めているのだが、そこで新入社員として心得ておくべきことを自分なりにまとめて喋っている。「こういう考えを持っておいてほしい」という自分なりのアドバイスである。新入社員から「これからどういう心掛けで働いたらいいか?」という質問を受けたと仮定して答えとした内容である。

 人によってはめんどくさいと思う人もいるかもしれないが、人にものを教えるというのは基本的に楽しいと思う。我が社でもそういう教え好きの人がいて、若手社員に対してはよく頼まれもしないのに横からあれこれと教えたりしている。自分にもそういう傾向はあると感じていて、その人と違うのは、グッと我慢して横からしゃしゃり出て教える事は控えている事であるが、今私の部下に配属されている2年目の若手などには、それが自分の仕事でもあるからではあるが、あれこれとよく教えている。

 その時に心掛けているのは「まだ早い」などと勝手に決めず、どんどん教えるということである。最近では私が作成している経営資料などもできる範囲で作らせている。それは「自分が楽したい」という気持ちもなきにしもあらずであるが、やはり教えるのが楽しいという感覚であるのも事実である。「物事の両端をたたいて徹底的に教え」るというものがどういうものかはよくわからないが、出し惜しみせずに教えたいという気持ちではある。1年後にどこまでできるようになっているだろう。今はそう考えるのも楽しいと思うのである・・・

Keith JohnstonによるPixabayからの画像

【今週の読書】
 監督の財産 (SYNCHRONOUS BOOKS) - 栗山英樹  日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書) - 小熊英二  日本人にどうしても伝えたい 教養としての国際政治 戦争というリスクを見通す力をつける 豊島 晋作 単行本 O  霜月記 - 砂原浩太朗





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