東京はいまだ梅雨の最中とは言え、ここのところ連日で夏日が続いている。この季節は、ビールが実にうまい季節であることは、異論を待たないであろう。自分は「毎日欠かさない」というほどではないが、そこそこビール好きの部類に入ると思う。そんな私が生まれて初めてビールを飲んだのは、中学生の時である。御代田の従兄の家に遊びに行った時、ちょうどお盆の時期で公民館に集まった大人たちと一緒に飲み食いしていて、「飲むか?」と差し出されたのである。
生まれて初めて飲んだビールの感想は、大抵の者がそうであると思うが、「苦くて飲めたものではない」というものであった。どうして大人たちはこんなものを美味しいと言うのか、まったく理解不能であった。それがその後、少しずつ無理して飲むうちに味に慣れていったのである。高校生の頃には、もうクラスの打ち上げで居酒屋に飲みに行っていたほどである(まだ大らかな時代だったのである)。
やがて大学、社会人になると、普通に飲みに行っては「とりあえずビール」の世界に入って行ったが、なんとなく感じていたのは「ビールの味の違いがわからない」と言うことである。よく、「キレ」だとか「コク」だとか「のどごし」だとか宣伝されているが、今だによくわからない。なんとなくわかったような気がするだけである。それにビールごとの味の違いもわからない。せいぜい、外国産のビールは「なんか違う」と言う程度である。
スーパードライが世に出て大ヒットしたが、あれもよくわからない。なんとなく「辛口」と言う感覚は理解できるが、テイスティングをしてこれがスーパードライだと言い当てる自信はない。自分はそんなに酒好きでもないからだろうか、などと好みのビールの味がある人を羨ましく思うことしばしばであった。ただ、発泡酒が出た時は、そしてそれに続く第三のビールが出てきた時は、なんとなく味の違いがわかった。どうも薄くてイマイチだという程度の感覚ではあるが、それでも自分の中では進歩の部類と感じた。
それを打ち破ったのは、サントリーの「プレミアムモルツ」である。これはうまいと心底思った。たぶん、味の傾向が自分の好みにあっているのであろう。そしてその味の違いも区別できる自信がある。なんとなく「ビールならこれ!」と言う贔屓ができた気がして嬉しく思うところである。と思ったら、最近発売されたキリンの「一番搾り超芳醇」も似たような味で、これもうまいと思った。この2つはちょっと飲んで違いがわかるかどうか自信がないくらい似ている。
ビールは缶でそのまま飲むよりもグラスに注いで飲むのが好みである。なんとなくその方が美味しく感じる(味覚に自信のない私のことだから、それは単なる勘違いかもしれない)。大量に飲むと味覚がボケてしまうようで、缶ビールならせいぜい1本か2本くらいまでが美味しく飲める限度である。まぁガブ飲みしなくて済むからいいのかもしれない。普段は、週末の深夜にバーボンを飲みながら観る映画も、これからはビールに変わる。映画を楽しみつつ、ビールも楽しめる。幸せな瞬間である。
先日読み終えたサントリー創業者の鳥井信治郎を主人公とした『琥珀色の夢』は、サントリーの歴史を綴る物語で、大変面白く読破した。主人公の鳥井信治郎は、主にワインとウィスキーに力を注ぎ、サントリーも「ウィスキー」と「ワイン」と言うイメージだったが、ここにきて「プレミアムモルツ」の登場で、ビールでもサントリーと個人の中では位置付けが変わった。小説も面白かっただけに当分、この思いは揺るがないだろう。
失われた数十年から抜けきれず、懐の寂しいサラリーマンを相手に、ビール会社は知恵を絞って値段の安い発泡酒や第三のビールを開発してくれたが、私からするとどうもこれらは飲む気がしない。発泡酒を2本飲んだと思ってプレミアムモルツを1本飲む方がいいと感じる。幸い毎晩晩酌をしないとやってられないほどではないので、量より質を追い求めていきたいと思う。
【本日の読書】
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