2015年5月30日土曜日

使う前に読むべきか、読んでから使うべきか

 先日、ワンダーコアを購入した我が妻。
どうするのかと静観していたら、ずっと梱包されたまま。
そしてようやく、箱から出され組み立てられた。
だが、まだ使用された形跡はない。
これが妻の性格である。

 妻はこういう場合、「完璧主義」である。使用前にはマニュアルを読み、最近では大概付属されているDVDを見る。そしてその上で、初めて使うのである。これが私の場合だと、到着した瞬間に梱包を解き、すぐに組み立てて使い始める。もちろん、見よう見まね。取りあえず使ってみるのである。

これが私個人のものであれば、問題はない。
ただし、家族で使うものだと、しばしば軋轢となる。
すぐに使おうとする私に対し、妻は「マニュアルを読め」と迫ってくるのである。
もちろん、それが正しいスタンスだとは思うが、いちいちマニュアルなど読まなくてもわかるものはわかる。ただ、それは妻にとっては許されざる態度であるらしい。

 何ごとにせよ、マニュアルを読んで理解してからやるというのは大事なこと。それを否定するつもりはない。ただ、「準備が整ってから」と言っていると、タイミングを逃すことしばしばである。ビジネスの現場では、「構え、撃て、狙え」のスタンスが重要となることも多い。今回のような商品は、到着した時がそれを使いたいという気持ちが最も高い時。そいういタイミングは大事である。

 子供の頃、数多読んだ松本零士のマンガは私の人格形成に大きな影響を与えたが、その中のある物語を思い出す。主人公の若者は大きな夢を抱き(松本零士のマンガの主人公は大概大きな夢を持った若者だ)、宇宙船を自力で製作し、星の海へ飛び出す。しかし、いかんせん、設計が粗雑なポンコツで、ある惑星に不時着する。そこで、同じような夢を抱く若者と知り合う。

 若者は長年研究室で宇宙船の設計をしていて、主人公のボロ宇宙船をバカにして鼻で笑う。そしていつか完璧な宇宙船が完成したら、自分も宇宙に出るのだと言う。しかし、主人公は言い返す。俺の船は、ボロかもしれないが、とにかくここまで飛んできた。お前の設計する宇宙船は立派かもしれないが、どれも1センチも飛んでいないと。お前の船の完成がいつになるのか知らないが、俺はその間ずっと宇宙を旅していくと。何のマンガだか忘れてしまったが、今思い出しても示唆に富むマンガだと思う。

 アルバイトなどで、仕事の前にマニュアルをきちんと読むことは大事なことだろう。何でもかんでもマニュアルを読んでいる暇があったら実践すべし、などと言うつもりはない。だけど、四の五の言っていてなかなか実行しないというのも、ビジネスの現場ではありがちである。

 とにかくやってみる。すると、どこがわかり難いとか、使いにくいとかがわかる。その時、初めてその部分のマニュアルを読んでみる。そうすると、少なくともその部分は、「問題意識」を持って読むから、マニュアルも頭に沁み込んでくるというものである。

 まあ、あれこれと理屈をつけてみたが、おおよそ家電製品なんかは、我が家ではすべてこんな調子である。妻のやり方を否定するつもりはない。ただお互いそういう性分なのだから、認め合えばいいと思うだけである。さて、そうしてしっかりマニュアルを理解したワンダーコアである。あとはしっかり使用してもらいたいと余計なお世話ながら思うのである・・・


PS
 件のマンガの続きである。
意見が対立した主人公と若者研究者だが、主人公の鋭い指摘に若者研究者は項垂れて語る。自分は研究期間が長過ぎて、もうお前のような無茶ができない体なんだよと寂しく語る。だからそんな自分でも航海に出られる宇宙船を設計しないといけないし、それにはまだまだ時間がかかると。

そして主人公に自分の設計したエンジンを渡す。
これでせめてエンジンだけでもまともになる、と。
そして頑張って星の海を渡れ、と励ます。
男の夢と友情と、松本零士のマンガは今思い出しても胸が熱くなるのである・・・


     


2015年5月27日水曜日

成功の鍵

   妻が通販で健康器具を購入した。
「倒れるだけで腹筋」というキャッチコピーで、ユーモラスなCMを展開しているアレである。実は、妻は以前別の商品を買っているのだが、どうやらまた「新たな決意」を固めたようである。

 妻がこれを購入した意図はダイエットだろう。もちろん、前回の商品「レッグマジック」はダイエットとともに「美脚」という謳い文句に惹かれたのだろうし、今回はそろそろ夏も近いので、お腹を引っ込めてビキニでも着ようと考えているのかもしれない。二兎を追うモノはというつもりはないが、たぶん今回も「見果てぬ夢」で終わるだろう。

 世の中にダイエット商品は腐るほどあるし、次から次へと新しい商品が登場する。こんなにたくさんあるからには、さぞかしスマートな人が多そうであるが、世の中からダイエットのニーズがなくなることはなさそうである。それはなぜかと言うと、世の中が豊かであるという環境要因と、ダイエットのKFSKey Factors for Success=成功の鍵)は何かということに気付いていない(買わせる方からしたら気付かせない)ことによるからである。

 ダイエットの(美客でもスリムなお腹でも同じだが)KFSは何かと言えば、それはたった一つ、『意思』だ。これ以外にはあり得ない。決意し、決めたことを守る意思の力。これこそが、ダイエット(いやあらゆる事かもしれない)のKFSだ。

 と言うと、「そんなのわかっているが、それが難しいから苦労している」との答えが結構返ってくる。だが、それがそもそもおかしい。意思がなければ何があっても意味がない(そしてこれこそが、巷にダイエット商品が反乱している理由である)。意思に代わるものなどないのに、代わるものを求めるから失敗する。逆に意思さえあれば、「道は通じる」のである。

 例えば私は平日は毎日仕事から家に帰ると、夕食前に腕立て伏せと腹筋とスクワットを軽くこなすことにしている。「面倒だ」と思う時もあるが、無理やりにでも気持ちを奮い立たせてやっている。そのための器具など不要だ。もっとも、負荷をかけたくて、「プッシュアップバー」という器具を使っている。だが、器具を使っているのは、「より大きな負荷をかける」ためであって、「腕立て伏せをするため」ではない。ここがポイントだ。

 「これがあったら続けられそう」
そういう幻想を起こさせて商品を買わせるというのが、販売側の手口。と言っても業者が悪いわけではない。本来大事なことを無視して買う方が悪いのである。意思無き主に買われた商品は、程なくして飽きられ、やがて飾りと化す。なんという資源の無駄だろう。

 ただ、我が家に限れば、無駄な資源となる可能性は低い。なぜなら、今回の商品「ワンダーコア」には負荷を調整する機能があるようだからである。「より大きな負荷」を求める者にとって、これは頼もしいパートナーだ。当面は、妻も私が使うことを許さないだろう(自分がお金を出したモノを、お金を出してない人間が自分以上に有効活用することを許さないのが我が妻である)。だが、やがて主に飽きられたら、その時こそ「救世主登場」だ。虎視眈眈とその時を待とうと思うのである・・・


【本日の読書】
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」 タルマーリー発、新しい働き方と暮らし (講談社+アルファ文庫 G 302-1) - 渡邉 格 ペテロの葬列 下 (文春文庫 み 17-11) - 宮部 みゆき




 
 
 

2015年5月22日金曜日

安全保障関連法案は本当に問題なのか

 「安全保障」なのか「戦争」なのか、同じものなのに異なる呼ばれ方をする法案がいよいよ26日から審議入りするとニュースでやっていた。個人的に関心は高いものの、正直どうなのだろうかという気持ちがある。

 そもそも何でこんな法案が出てきたのかと考えると、それはたぶんアメリカの意向なのではないかと思う。世界最大の軍事大国アメリカも、いまや万能ではない。「お金は持ってるお人好し」をうまく利用しようというハラはあるだろう。中韓に絶対覆せない歴史問題で責められ、北朝鮮問題も解決の糸口も見られずにいる昨今、やはりアメリカと良好な関係を維持するのは必至だろう。そうしたわからぬ“裏事情”は置いておき、表面的な部分で判断するとどうなのだろうか。

 まず一番物議を醸しているのが、「集団的自衛権」だ。これは反対派が、「戦争に巻き込まれる」と声高に叫んでいる。ただ、例えばの例で説明されていたが、「海外で邦人を救助し、搬送している米軍が攻撃を受けた場合、自衛隊が米軍を守る」というケースは(現実的かどうかは別として)、問題ないのではないかと思う。特に日本は過去イラン・イラク戦争時、テヘランから脱出できなくなった邦人に対し、何もできずにいたところ、トルコが航空機を出して助けてくれたという過去を持つ。「平和」もいいが、こうした「邦人保護」はおろそかにしてほしくない。

 一方で、例えば反対派は、「シリアで米軍が攻撃された場合、意図せざる戦争に巻き込まれる」と主張している。一見、正しそうだが、これは歯止めをかければいいような気がする。かつて日米安保改定時も、反対派は「戦争に巻き込まれる」と反対したと言う。だが、その危惧はいまだ実現の兆しもないし、むしろそんな理由で反対したのかと滑稽ささえ感じる。反対論の例としては、いささか説得力に欠けている。

 そもそもであるが、法律を作ってそれですべての問題をカバーできるわけではない。例えば同じ銃でも、警官が持つのとヤクザが持つのとでは、まるで意味が違う。要は使い方であり、市民を守るためなら警官が銃を持っても怖くないし、だから一律禁止とするのではなく、警察官だけが銃の所持を認められ、一般の人の所持は「銃刀法取締法」で禁じられている。「警察官によって守られるメリット」と「ヤクザに使われて傷つけられるデメリット」とをうまく調和させている。

 これと同じで、「危険な例があるからダメ」とするより、「危険な例を避ける」ようにすればいいのではないかと思考は流れていく。賢い者なら、「デメリットがあるからメリットを諦める」のではなく、「メリットを享受しつつデメリットをできるだけ抑える」とするのが、考えるべき方向ではないだろうか。「意図せざる戦争に巻き込まれる危険性がある」のなら、そうならない仕組みを作ればいいだけではないだろうか。

 反対派はいたずらに不安を煽っているだけで、例えば先に挙げた邦人を保護している米軍が攻撃された場合には、どうすればいいと言うのだろう。残念ながら、街頭演説で力説する方も、ネットで安倍総理を鬼畜と批難する人も、その疑問には答えてくれない。

 それに安倍総理が批判していた「レッテル貼り」。これもいかがなものかと思う。「憲法改悪反対」は古くから言われているが、「改悪」は誰でも反対するだろうが、「改正」は賛成するだろう。自分と反対だから「悪い」ものと決め付けるのもいかがなものかと思う。「戦争法案」と主張するが、内容は「戦争をするためのもの」ではない。

 ビジネスでは、リスクを恐れていては利益は得られないのは当たり前。要はいかに「リスクを回避し」、「利益を享受する」かだ。自分はビジネス・パーソンなるがゆえに、その理屈に従って物事を考える。「リスクがあるからダメ」なんて言っていたら、何もできない。得られる利益と、それに伴うリスクを冷静に比較し、リスクが大き過ぎるならやめれば良い。「戦争法案」と主張する人たちが唱えるリスクは、どうも誇張され過ぎている。

 メディアの対応もそれぞれ特徴を表していて面白いが、これからこの法案を巡るニュースが続くのだろう。是非とも反対派には、「まともな」反対論を期待したいものである。それによっては、私は自分の意見を変えることにまったく抵抗はない。野党のみなさまには、頑張って是非国民に届く反論をしていただきたいと思うのである・・・


【本日の読書】
マクロ経済政策入門 黄金の拘束衣を着た首相 - 三橋貴明 ペテロの葬列 上 (文春文庫 み 17-10) - 宮部 みゆき ほぉ…、ここが ちきゅうの ほいくえんか - てぃ先生




  
 
 

2015年5月17日日曜日

粗大ゴミを巡るババ抜き

 先日近所を歩いていると、大きなスーツケースが捨ててあるのを見つけた。その時はさして気にも留めていなかったのであるが、昨日再びそこを通ると、まだそこに置いてあった。よく見ると赤い張り紙がしてある。曰く、「これは粗大ゴミになるので、手続きに従って捨てて欲しい」とのことが、連絡先の区役所の電話番号と共に明記してあった。

 おそらく、ではあるが、それはすぐ目の前にあるアパートの住人の誰かが捨てていったような気がする。そしてそれは引っ越しで、たぶん当の本人はもうそこにはいないのではないだろうか(あくまでも想像である)。となると、そのスーツケースを持ち帰り、300円の粗大ゴミ回収券を貼って決められた通りに捨て直す、などということは期待できないのではないか思う。

 実は最近、そんな尻拭いを仕事でやった。我が社の賃貸アパートの自転車置き場に、気が付いたら2台の明らかに使われていない自転車が放置されていたのである。住人に確認したが、どうやら以前の入居者が退去の際、置いていったらしい。やむなく処理することにしたが、その際にちょっとした驚きがあった。
 
 アパートの位置する横浜市に確認したところ、1台あたり500円で粗大ゴミとして捨てられることがわかった。だが、それは「個人」の場合であり、「法人」が捨てるとなると、手続きが変わる。「事業用のゴミ」扱いとなり、扱う業者も市に登録されている指定業者となり、その業者に連絡させられる(なんだかカルテルのような匂いがしないでもない)。

 そして1台あたりの値段が倍近くとなり、さらに回収費用3,000円が必要とのこと。結果として、「個人」なら1,000円しかかからないのに、「法人」だと5,000円近くなる。捨てるのは同じ自転車なのに、である。まぁそこにはいろいろと言い訳があるのだろう。法人の事業ゴミはモノによっていろいろあるだろうし、家庭用とは処理の手間が違って大変だとかあるのだろう。たまたま自転車だから、こういう矛盾がでてしまうのだろう(ちなみに「個人」名で処理したのは言うまでもない・・・)。
  
 そんなことを漠然と考えていると、ではあのスーツケースはどうなるのだろうと、気になった。ゴミの収集担当者はルール通りではないということで、回収していかない。当の本人はいないから捨て直すこともない。どちらからも放置されたスーツケースの行方はどうなるのだろうか。

 ありうるシナリオとしては考えられるのは、以下のパターンだろうか。
 ① 見かねた御近所の誰かが、300円を払って代わりに捨てる。
 ② 見かねたゴミ収集担当者がやむなく持って行く。
 ③ 見かねた御近所の誰かが区役所に苦情申し立てをし、やむなく区が回収する。
それまでどのくらいの期間がかかるかわからないが、生物系のゴミと違って時間が経てば自然に帰ると言うものでもないので、誰かがやらなければずっとそのままという事になる。

 とにもかくにも、悪いのは捨てていった本人。けしからんと思うものの、もしかしたら粗大ゴミを捨てる際の知識などなく、無邪気に捨てていったのかもしれないということもありうる。想像通り引っ越しの際に捨てて行ったとして、知っていれば手続き通りにしたのに、たとえば若い人で知らなかったということもありうるかもしれない。このような状態に気付かないから、やり直しようもない。そんなケースであれば、批難する気も減じるというものである。

 さて、では自分はどうするか、と考えてみる。我が家のテリトリーであれば、週明けにでも区役所に電話してまずは善処を依頼するだろう。お役所らしい融通の利かぬ対応で、「ルールはルールなのでルール外の対応はできない」と言われるかもしれない(なにせそう答えても担当者は何の不利益も被らないわけである)。その際は、仕方ない、自腹を切って手続きをするだろう。毎日眺めるストレスの方が大きいからだ。

 だが、件のスーツケースは我が家のテリトリーからは離れている。自腹を切ってまでしゃしゃり出ることもなかろうと思うところである。ただ、どうなるのかという興味はある。特に区役所の対応には興味がある。はたしてどんな対応をしてくれるのだろうか。週明けにでも、役所へ電話してみようかと思うのである・・・

【本日の読書】
ほぉ…、ここが ちきゅうの ほいくえんか - てぃ先生





     

 

 

 

2015年5月14日木曜日

商社は勝者

 就職情報会社のダイヤモンド・ヒューマンリソースが、現在就職活動中の大学生9,216名に聞いて集計した就職人気企業ランキングを発表した。
           〓文系〓           〓理系〓
【男子】   1位(10)三井物産       ( 3)三菱商事
     2位( 3)伊藤忠商事      (12)三井物産
     3位( 2)三菱商事       ( 7)住友商事
     4位( 1)住友商事       ( 6)伊藤忠商事
     5位( 6)東京海上日動火災保険 ( 2)東芝

【女子】   1位( 2)三菱東京UFJ銀行  ( 2)サントリーグループ
     2位( 1)東京海上日動火災保険 ( 1)ロッテグループ
     3位( 7)みずほフィナンシャル ( 4)明治グループ
     4位( 3)三菱UFJ信託銀行  ( 6)森永乳業
     5位( 5)伊藤忠商事      ( 7)森永製菓

 一瞬、男子は人気商社ランキングかと思って何度も見直してしまった。理系も文系も見事に商社一色である。それに対し、女子は文系は金融系、理系は食品系と別れている。理系の食品系というのは、「研究職」の意味合いがあるのだろうか。大学生の就職人気ランキングなんて、その時業績の良い企業に人気が集まるのが常であるが、それはそれで世相反映的なところがあると思っている。

 それにしても、男の商社思考はどうなのかという気がする。そりゃぁ商社は業績も良いし、カッコもいいし、かつての鉄鋼や証券・銀行などと比べると浮き沈みも少なく、ある程度の人気は常である。されどここまで理系も文系もとなると、どうなんだと思えてならない。女性も文系と理系とでは違いがあるものの、それぞれの人気業界は同じ傾向がある。

 他に魅力的なものがないとも言えるのかもしれないが、我も我もと上辺のイメージに囚われ過ぎている気がしてならない。ここに公務員が入っていないのは、単に人気がないと取っていいのか、それとも調査対象外なのかわからないが、前者であればまだマシだが、後者であればもっと目を覆いたくなる事実が隠れているのかもしれない。

 商社はかつては、物の仲介を司っていた。外国のものを日本に、そして日本のものを外国に。されど、直接の貿易が増えて「商社不要論」なんかが出たこともあったが、最近では「開発」や「金融」や「情報」などありとあらゆるものを手掛け、見事に生き残っている。「勝ち組」、「負け組」という言葉があるが、「商社」は(現時点では)見事な「勝者」である。給料もたぶんけっこう高いだろう。人気も当然である。

 しかし、なのに女子の人気がないのはなぜなのかという疑問が湧く。「商社=海外勤務」というイメージから、女性が海外赴任を嫌うというのは、一昔前ならいざ知らず、現在ではそうは思えない。やっぱり、「男の職場」というイメージがあるのだろうか、と想像してみる。そのあたりは、実に興味深い。

 折からシャープが経営再建を巡って経済紙面を賑わしている。シャープだって、かつては優良企業で業績もよく、就職人気企業だった時代もあるだろう。商社だって、今はいいが、20年後は「経営再建で四苦八苦」なんて事態になっているかもしれない。その時になって、「こんなはずではなかった」とならなければといいのに思う。

 今は至るところで、「女高男低」とでもいうべき状況が見られる。我が家では奥様が絶対権力者であるし、多くのご家庭でもそうかもしれないが、そういう「権力」という意味ではなく、最近は「能力」という意味においてもそう感じられる。スポーツの世界では、世界に伍して戦っているのは「なでしこ」だし、身近なところでは、娘の通う中学校の学力上位に至るまで、枚挙に暇がない。

 そんな女子が、「商社」を選ばないところに、何か暗示するものはないだろうかと言ったら考え過ぎであろうか。ひょっとしたら、「本当に優秀な人は商社を希望していない」のかもしれない。あれこれと妄想は広がるが、なにぶん、これからも日本経済を支えていただかないといけないし、商社には引き続き勝者でいてほしいと思う気持ちは事実である。

 就職活動中の学生のみなさんには、是非とも頑張っていただきたいと思うところである・・・


【本日の読書】
なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか - 山下 柚実 新装版-五郎治殿御始末 (中公文庫 あ 59-8) - 浅田 次郎










2015年5月9日土曜日

大人な対応

 軍監島などが世界遺産に登録を勧告されたとニュースで報じられた。それと同時に、その勧告に韓国が「朝鮮人労働者の強制徴用の現場は世界遺産にふさわしくない」と噛みついたとも報じられた。相も変わらずまたかと呆れるばかりである。無視するに限ると個人的には思うが、国としてはそうもいかず、自民党の石破さんは「真摯に対応する」とコメントしている。まぁそうするしかないのだろう。

 そんな腹立たしい事態に対し、ネットで、「そんなこと言ったらピラミッドや万里の長城はみんな登録抹消だ」という意見を目にした。なるほど、うまい切り返しだと思う。これに対して、韓国は何と答えるのか興味深い。嫌な相手に対して、こういう切り返しがさらりとできるといいなと、常日頃考えている。

 その昔、銀行に就職が決まった際、いつも嫌味を言う叔父に「銀行は人のふんどし(=お金)で相撲を取るけしからん商売だ」と言われたことがある。その叔父はいつもそんな調子で、大学の法学部に入った時には、「医者と弁護士は人の弱みに付け込んで金を取るけしからん輩」と言われたものである。上から目線で世の中を斜に構えて見るところがあったと思う。いつもそんな調子で、また叔父ということもあって我慢するしかなく、気分を害されていたのだがその時は違った。うまく切り返せたのだ。

 「そんなこと言っても、世の中みんな人のふんどしで相撲取っているでしょう」
そういう私に、叔父は鼻で笑って、「例えば?」と聞いてきた。そこで私は、「八百屋さんは自分で畑を耕していますか?魚屋さんは自分で魚釣ってきてますか?八百屋さんも魚屋さんも人のふんどしで相撲を取るけしからん輩ってことになりますね」と切り返したのだ。さすがに大銀行は批判できても、小さな八百屋や魚屋は批判できなかったと見え、叔父はむっつり黙ったまま何も言わず、私は心の中で快哉を叫んだ。

 逆にうまく返せなかった時もある。銀行に入って初めてのボーナスをもらった時、同じ支店の中年の先輩から、「まだろくに仕事もしてないのにボーナスもらうの?」と嫌味を言われたのだ。「お前にもらったんじゃねえよ」と心の中で反発したが、当時は支店の中ではそんなことが日常茶飯事だった。ストレス溢れる職場環境で、私は毎日のように机の下で拳を握りしめていた。

 その時は、我慢するだけで精一杯だったが、後日切り返し方法があったことに気がついた。
「えっ!水野さんの時はボーナスもらえなかったんですか?」と聞き返せばよかったのだ。当然その人(水野さんという名前は残念ながらいまだに覚えている)も新人の時は仕事もせずにボーナスをもらっているのだ。自分のことは棚に上げて、というやつである(あるいは自分もそう言われたのかもしれない)。そう気付いて、なぜそう返せなかったのかと、二度悔しい思いをした。

 嫌な奴とは付き合わないで距離を置くに限ると思うが、親戚や職場や友人知人などどうしても距離をおけないこともある。そんな時、いちいちストレスを感じていてはこちらが損だし、いつまでも根に持つのも己の小ささを実感させられて、自己嫌悪感に襲われる。腹の立つ言動があっても変に我慢せず、当意即妙の切り返しで相手に返せたらストレスも感じないだろう。できることなら、そんな風に対応できる自分でありたいと思う。

 韓国にも困ったものだが、国としては無視するわけにもいかない。かといって、言いがかりにいちいち青筋立てて反論するのもどうかと思う。ヘイトスピーチなどは、さらにこちらのレベルを下の下に落としてしまう最低の対応だ。レベルの低い国に合わせて、こちらのレベルを下げないようにしないといけない。「真摯に対応」するのは必要だろうが、相手の鼻をぎゃふんと折るスマートな切り返しで対応できたらいいと思う。

 個人でもそうありたいと思うし、そうした切り返しが咄嗟にできるには、日頃からそうしたユーモア感覚を磨いておかないといけない。それは自分を磨くことでもあり、人を憎んでいたずらに自分の中に悪いエネルギーを溜めるよりはるかに良い。

そんな自分でいられるように、日々是意識したいと思うのである・・・


   

2015年5月7日木曜日

鳥貴族

 家族で居酒屋『鳥貴族』に行った。
そもそもは、娘が「焼き鳥を食べたい」と言い出したことがきっかけであった。言われてみれば、近所に「焼き鳥屋」なるものがない。実家のある武蔵小山商店街なら、昔ながらの焼き鳥屋が何件かあるものの、我が街ではちょっと見かけない。それなら、とたまたま妻が行ったことがあったこともあって、『鳥貴族』に行くことにしたのである。

 実は、少し前にいつも観ている『カンブリア宮殿』で採りあげられたのを観ていて、「近々行ってみたい」と思っていたので、個人的には、渡りに船であった。それだけではなく、社長の著書『鳥貴族「280円均一」の経営哲学』が私の“読書予定リスト”に入っていることもある。

 さて、行ってみればいきなり親子4人の家族がテーブルについているのが目に入ってくる。最近は、居酒屋でもこうした子供連れは珍しくない。そういう我が家も子供連れである。厳しい環境下で、顧客獲得に血道を上げる飲食業界ゆえの努力だろうが、家族で行けるというのも実にいいと思う。GWともあって、店内はカップルや家族連れが中心で、さすがに親父族はいない。

 さっそくメニューを開くと、看板に偽りなしの全品280円。これは実にシンプルでいい。頼んだ数×280円なわけで、いくら請求されるのかがすぐにわかる。酔ったところに思いもかけない金額の請求書がくるということがない。ただし、モノによって「お得感」は様々だ。

 例えば酒類は、お得感がある。ビールは「サントリープレミアムモルツ」の中ジョッキ。「金麦」だと大ジョッキ。ハイボールはジョッキとまではいかないコップだが、まぁ値段からして程良い大きさ。妻は梅酒を頼んでいたが、あまり飲まない我が家からすると、量は適量でありがたい。
 焼き鳥は、テレビでも「当日すべて自店で手打ち」と謳っていたが、味も種類も大きさも不満はない。特に「もも肉」「むね肉」系は息子もお気に入りであった。ただし、「なんこつ」は貧素。妻に言わせると、「誰かの食べ残しかと思った」というくらい、わずかに串に引っ掛かっている程度だった。たぶん、コストとの兼ね合いなのだろうが、もう少し工夫があっても良かったかもしれない。



 
とろろ焼き
変わったところでは、「とろろ焼き」というのがあって、これは名前の通り「とろろ」を鉄板で焼いているのだが、意外と美味で、娘はお代わりをしていた。最後はとり釜飯にしたが、他にも唐揚げやしそ巻き天ぷら等美味しそうだったが、食べる量にも限度があって泣く泣く見送ったものもあった。

 料金も明朗で、ドリンク付と考えれば、リーズナブルな外食となった(小学生の息子はお代わり自由のキッズ・ドリンクを何杯飲んだのだろう)。食べ物にはうるさい我が家の妻と娘も満足気であった。毎年恒例のGWグルメツアーは、結局どこにもいかなかったが、まぁこれで代用ということだ。

 居酒屋ということで、周りには酒を飲む大人たち。「大人になったら一緒に飲もう」と息子に言うと、「初任給でパパと飲みに行く」とどこで仕入れたのかと思うような事を言ってくれる。考えてみれば、息子の夢はプロ野球選手。ならば「契約金だな」と息子には訂正しておいた。どんな形かはわからないが、いずれそんな日もくるだろう。

 その時飲みに行くのは、新宿や池袋といった都会よりも、地元の街がいい。「あの時約束してから早や10年・・・」などと感慨に浸りながら、我が家では劣勢な男チームでグラスを傾けるのだ。その時まで残っていたら、『鳥貴族』に行くのもいいかもしれない。そんな庶民的な、実にささやかな夢を持たせてくれた『鳥貴族』なのであった・・・

【本日の読書】
弁護士ドットコム 困っている人を救う僕たちの挑戦 - 元榮太一郎, 上阪徹 カラマーゾフの兄弟(上)(新潮文庫) - ドストエフスキー, 原 卓也