2025年7月16日水曜日

何のために働くのか

 現在、『手紙屋〜僕の就職活動を変えた十通の手紙〜』という本を読んでいる。kindleで無料で読めるためスマホで読んでいるのだが(それを「本」と言えるのかという気持ちはある)、そこで主人公は「何のために働くのか」という事を考えさせられる。それを読みながらいろいろと考えた。自分は何のために働いているのか。人は何のために働くのか。究極的に言えば、働くのは「食う(=お金)のため」である。それが労働の本質であり、それを否定できるのは「お金はいりません」と言える人だけであろう。この本質は大事だと思う。

 ラグビーを始めた高校生の頃、練習の指導に来てくれていた先輩に「ラグビーは格闘技だ」と言われたのを覚えている。激しくぶつかり合うスポーツだし、その時はそうなんだろうと思っていた。しかし、その後「本質」を意識した時、その考えは変わった。ラグビーの勝敗はどうやって決まるのかと言えば、ボールを相手陣地につけた事(=トライ)である。野球やサッカーと同じボールゲームであり、より多く点数を取った方が勝つのである。この点、相手を倒す事で勝利する格闘技とは異なる。つまり、「ラグビーは格闘技ではない」のである。

 「何のために働くのか」の本質は「お金のため」である。大半の人がそうであるだろう。その昔、スティーブ・ジョブズが請われてアップルのCEOに返り咲いた時、報酬は1ドルだったという。そういう人こそ、「働くのはお金以外のため」と胸を張って言えるのである。しかし、「お金のために働く」と言うとどうも露骨すぎて具合が悪いのか、人は「家族のため」とか(家族が食べていくためというならイコールお金のためとも言える)、「世の中の役に立ちたい」とか言うのである。ではそれはきれい事かと言えばそうとも言い切れない。

 銀行を辞めて初めて転職した時、2か月ほどブランクがあった。プラプラしているのも何だしと思ってアルバイトをした。工場での簡単な梱包作業であったが、定職に就いたらアルバイトなどできないだろうし、世の中体験という意味と暇つぶしという意味が大きかった。決してお金のためではなかったが、ではタダでもやったかと言うとそれはない。それは私の貴重な労働力をタダで売り渡したいとは思わなかったからである。お金のためではあるが、食うためではない。この「お金のためではあるが、食うためではない」というのも真実である。

 原始社会あるいは遅れた社会では何より「食うため」が働く目的の第一だろう。しかし、世の中が発展して食う事がそれほど難しい事でなくなってくると、お金以外に働く目的が選べるようになる。考えてみれば「何のために働くのか」という議論は、この段階ではじめて問われる事だろうと思う。終戦直後の日本では、そんな悠長な事は言ってられなかっただろう。そういう意味では、「何のために働くのか」などという議論ができるのは豊かな社会という事になる。そうした豊かな社会では、「お金に加えて」働く目的を追及するという「贅沢」が認められるという事である。

 4年前、2度目の転職活動をした際、最終的に2つの候補が残った。A社は給料が高いが通勤に不便。B社は規模がA社より若干大きく通勤に便利。2つの選択肢を前に私はB社を選んだ(妻に教えたらA社を選べと言われただろう)。給料も大事だが、B社の方が規模的に仕事が面白そうだと思ったのである(大きいと言っても100人規模なので決して「安定」ではない)。実際、求められていた財務に加えて人事の仕事にも手を出し、今も仕事は面白い。結果的に給料も大きく上がったし、選択は正解であったと思っている。

 今の世の中、職業選択の自由は大いに保障されているし、仕事も多岐にわたっている。それであれば「食うためだけ」の仕事をする必要はない。「+α」で働く理由を求める事ができる。その「+α」こそが「何のために働くのか」という問いに対する回答になるのだろうと思う。「お金を稼ぎつつ世の中に貢献できる」とか、「お金を稼ぎつつ海外で働ける」とか人それぞれにその理由は見出せることになる。したがって、「何のために働くのか」と問われて「お金のために決まっているじゃないか」という人は、その「+α」がない人という事になる。それはちょっと寂しい。

 私はと言えば、今のシステム開発会社に入ったのは仕事が面白そうだと考えた事による。頼まれた財務の仕事はもちろんきっちりやっているが、頼まれてはいなかったが人事の充実も課題だと考えて手を出す事にした。忙しいが人事の仕事は面白くやりがいを感じている。もともと面白そうな仕事を探してやるよりも、仕事の中に面白さを見出していく方が性に合っているので、自分の力で会社が良くなっていくのは非常に快感ですらある。お金のためだけに働いているのではないと断言できる。

 息子も大学を卒業すれば就職である。自分なりの好みはあるだろうが、「何のために働くのか」という事もしっかり考えるようにアドバイスしたいと思う。しっかりした「+α」を持って社会で活躍してほしいと思うのである・・・


FirmbeeによるPixabayからの画像

【本日の読書】

 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~ - 喜多川泰  監督の財産 (SYNCHRONOUS BOOKS) - 栗山英樹  日本人にどうしても伝えたい 教養としての国際政治 戦争というリスクを見通す力をつける 豊島 晋作 単行本 O  イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) - トルストイ, 望月 哲男




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