最近、タバコを吸い始めた。と言っても初めて吸ったわけではない。最後に常習的に喫煙していたのは30歳の時であるから、かれこれ26年も前になる。ちょうどその当時、体がたるみ始めてきているのを自覚し、1か月禁煙して毎朝走ることに決めた時以来である。期間限定のつもりであったが、なんとなく吸わなくなるという「休煙」状態でこれまで来たのである。禁煙したわけではないので、たまに吸いたくなって「ちょっと1本」という感じは1年に1度くらいある感じであった。なのでまともに1箱買って吸い切ったというのは、26年振りということになる。
初めてタバコを吸ったのは、確か高校生になった時。御代田に住む1つ年上の従兄が吸い始めたのを見て、試しに1本となったわけである。一息口に入れるようにしてそのまま肺に吸い込むんだよと教えられ、その通りにしたら思いっきりむせたのを覚えている。ちなみに大学に入ったあと、同級生がタバコを吸っていたのだが、よく見ると口の中に煙を入れて吐き出すだけで肺には吸い込んでいなかった。たぶん、私の従兄のように吸い方を教えてくれる人がいなかったのだろう。従兄は勉強は教えてくれなかったが、酒やタバコを教えてくれた良き兄貴分である。
なぜ、今になってタバコを吸うようになったのかと言えば、「体が欲した」ということになる。例によって「ちょっと1本」ともらったのはいいが、それがメンソール系のもの。個人的にメンソール系のタバコは好きではなく、改めて普通のものが吸いたくなったのである。もらいタバコで贅沢は言えないが、最近、身の回りの喫煙者はみんな電子タバコに移行しており、「ちょっと1本」ができない。なので思い切って自分でマルボロを1箱買ったという次第である。
改めて吸ってみれば、やはり「うまい」と思う。それに何となくリラックスする感じがある。その時はその1箱だけのつもりだったが、「もう1箱」が続いている。マルボロは最後に常習的に吸っていた銘柄であるが、学生時代にあれこれといろいろ試した結果である。セブンスターやハイライトなどの国産品からラークやラッキーストライク、フィリップモリスなんかの海外のものも手あたり次第吸ってみたが、その結果、自分で一番好きな味(香り?)がマルボロだったというわけである。なので、今回も迷わずマルボロを買ったのである。
今さらタバコを吸い始めるとは、なんと時代逆行的なのだろうと自分でも思う。気が付けば今やすっかりタバコを吸いにくい環境になっている。職場でも自宅でも自分の机でプカリという訳にはいかない。職場では外階段の踊り場にある喫煙スペース、家では外に出ている。そういえば、ご近所でも夜、外でタバコを吸っているご主人を見かけるが、今やいずこの家でも愛煙家に紫煙を燻らせる家庭内のスペースはないようである。不動産業という仕事柄、タバコを吸っていた部屋は退去の時にすぐ臭いでわかるし、その臭いはなかなか取れない。家の中で吸わないのは、家を大事にする上でも重要であると思うので外での喫煙に不服はない。
タバコが体に良くないということについては否定するつもりはない。また、自分に健康志向がないというわけでもない。健康には気を使いたいが、タバコも吸いたい。その矛盾をどうするか。簡単だが、そこは自分でバランスを取ろうと思う。つまり本数を制限するのである。今のところ1日あたり4~5本と己に制限を課している。吸っている人から見れば「なんだそれっぽっち」と思うかもしれないが、制限を課さなければ増え続けるかもしれないし、それこそ健康に悪いかもしれない。また、吸った後の臭いも気になる。当面は、本数制限は維持しようと思う。
タバコを吸うメリットとしては、今のところ精神安定があると思う。自分自身、何となくリラックス感を得られる。昔吸っていた時にも感じていたが、タバコも吸う状況によって味が変わる。風の強い状況下ではあまりうまいと感じない。だから昔も歩きタバコはしなかったし、なるべく風を避けるようにしている。周囲に人がいないことを確認するのはもちろん、独りゆっくりリラックスして1本、1本の味を楽しんでいる。制限を設けているからこそ、1本、1本を楽しめるのかもしれない。
26年前との違いは1箱570円という値段だろう。記憶の限りではかつては250円くらいだったと思う。いつの間にかランチ1食分になっている。時代の流れとは言え、仕方ないところなのだろう。このまましばらくは吸い続けることになりそうであるが、人に迷惑をかけなければそんなに目くじら立てることもないと思う。何よりリラックス効果は大きいし、そういう意味では有用である。タバコを吸うか吸わないかという二者択一で聞かれれば「吸う」と答えるしかないが、気分的には喫煙者と非喫煙者の中間的な存在だと自覚している。
中途半端なところはあるかもしれないが、健康と嗜好のバランスをうまくとりつつ、しばらくは至福の一服を楽しみたいと思うのである・・・
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