2025年4月10日木曜日

3日で辞める新人

 世間では入社式の日に新入社員が辞めたという話を聞く。退職代行会社「モームリ」が発表したとの事で、「様々な理由はありますが、入社前に聞いていた内容が、実際に勤務すると全然違う。入社直後に最も多い退職理由です」との事である。まるでイメージがわかず、それはどこか遠くの会社の特殊な社員の話かと思っていた。先週までは。ところが、今週初、新入社員の1人から連絡があり、退職したいという申し出があった。今週から外部の研修に送り出す事になっていたため、驚きつつもそちらの対応もしつつ、本人を呼び出して話をした。「一体何が悪かったのだろう」と訝しみつつ・・・

 本人は3日間研修を終えた後、4日目は体調不良を理由に休んでいた。聞けば体調不良は事実で、それはメンタルによるものと本人の弁。なんでも「東京での生活が無理」という事であった。地方出身のその新人は、3日間の「通勤地獄」で参ってしまったようである。東京に住んでいれば、否、地方出身でもみんな経験することであるが、「なんでその程度で」という気がする。思わず「今の若い者は」と言いたくなる。しかし、みんながみんなそうではないし、他の新人は元気に研修に行っている。ごくレアケースであろう。

 個人的には通勤電車などすぐ慣れるものだと思う。もちろん、東京人の私でも通勤電車は耐え難い。だから時間をずらしたり、西武線も準急には乗らず各停に乗るなどしてできるだけ回避している。少し早く家を出ればいいだけの話でまったく苦にならない。しかし、そんな話をしても無意味であろう。嫌だ嫌だという思いが深まればメンタルもやられ、それが体調にも現れるかもしれない。正直言って私とは感覚がまるで違う。通勤電車など好きな者は誰もいないだろう。月曜日の朝、憂鬱な気分で「痛勤電車」に乗る人はすくなくないだろう。みんな仕事だから我慢しているのである。

 そんな我慢もできず、せっかくの就職を放り出して故郷へ帰る若者ってどうなのだろうか。もしも我が息子だったらどうアドバイスするだろうと考えてみる。しかし、大事なのは「辛さ」は本人にしかわからないという事。私にとっては何でもない事が、本人にとってみれば人生の一大事という事もある。それを念頭に置いた上で辞める事は仕方ないが、「もう少し頑張ってみたら」という事は言うだろうと思う。何も「石の上にも三年」などという諺を持ち出すつもりはない。ただ、通勤がダメという程度であれば「1ヶ月頑張ってみろ」とは言うだろう。

 あるいは、会社に事情を説明し、慣れるまで時差出勤を交渉してもいいかもしれない。会社の方としてもいきなり辞められるよりいいだろう。そこは親の知恵で妥協策として交渉し、少しずつ慣らすという方法もある。まさか親が乗り出して交渉するわけにはいかないので、本人に話をさせる事になるだろうが、そのくらいはさせたいと思う。それでも基本的に我が子であればその身を一番に考える。電通の事件のようなことがあれば親としても耐えられない。そこの根本的な部分はズレないようにしたいと思う。

 「入社前に聞いていた内容が、実際に勤務すると全然違う」というのは、日本ならではなのかもしれない。海外では事前にきちんと仕事内容を確認してjobに就くらしいので、それは立派な退職理由になるのだろう。「それなら事前に確認すればいい」というのは正論だが、実際に我が国ではそんな事はない。私が銀行に入った時、何となく預金や融資の仕事というイメージはしていて、その通りと言えばその通りだったが、預金やクレジットカードの申し込みを集めるノルマを課されるなんてそれこそ「聞いてねぇよ」という話で、嫌で嫌で堪らなかったものである。

 海外ではどこまで特定するのかわからないが、すべて事前に決められるものでもないし、基本的に仕事なら何でもやれよと私なら思う(そうは言っても、私も休日の会社行事まで「仕事」と言われた時は思いっきり拒否してしまったが・・・)。現代とは感覚が違うのであろうが、簡単に仕事を辞めるという発想はやはりいかがなものかと思う。我が子なら頭ごなしに叱るのではなく、まずは本人とじっくり話をし、互いの感覚の違いを確認しつつ、私の考えを伝えたいと思う。理由によっては認めるが、男が腹を決めて一旦東京に出た以上、満員電車くらいでメンタル云々というのは情けないの一言に尽きる。この気持ちは変わらない。

 入社直後から退職代行会社が大流行りというのも嘆かわしい。この先日本は大丈夫なのだろうか。息子大好き、息子可愛いという世の母親たちが男をダメにしているようにしか思えない。時代が違うというよりも間違った方向に進んでいると感じる。3日で辞められて会社にも打撃はある。採用時に見極められるものでもないが、何とか見極める目は持てるようにしたい。そして元気に研修に通う他の新入社員を大事に育てたいと思うのである・・・

Rosy / Bad Homburg / GermanyによるPixabayからの画像

【本日の読書】
MORAL 善悪と道徳の人類史 - ハンノ・ザウアー, 長谷川圭  黄色い家 - 川上未映子




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