♪車を売るならビッグモーター♪で有名なビッグモーターが揺れている。なんでも修理で預かった車に故意に傷をつけて保険を割り増し請求していたとか。常識で考えればとんでもない事であるが、経緯を見れば何年も遡ることができるみたいであり、常態化していたようである。なぜそんな悪質な行為が蔓延していたのかと言えば、それは経営からの「売上に対する圧力」だそうである。どこかで聞いたような話である。そしてトップはそれを「知らなかった」というのもまた然り。東芝で大問題になったのに、他山の石にはならなかったようである。
企業が売上を重視するのは当然である。企業は成長し続けなければならない。と言うと反発心を持つ人もいるかもしれない。しかし、単純な話だが、そういう反発心を持つ人に対しては、「毎年給料が上がってほしいか?」と尋ねてみればよい。売上が上がらなければ、当然ながら給料だって上がらない。我が社でも人事面談でそう質問すれば100%の人が「上がってほしい」と答えるし、したがって企業が成長しなければならない必要性も理解してくれる。
しかし、難しいのは簡単に成長できるものではないという事である。市場環境もあるし、競合もいる。企業はどこだって支払は低く抑えようとするし、それは自社の取引先も然り。そこを何とか上げていかないといけないのである。東芝もビッグモーターも法令やモラルに反してまで儲けろとトップが指示したわけではないのだろう(私は基本的に性善説の立場に立って考える)。ただ、儲けろという指示だけで、「どうやって」がなかったのだろうと想像できる。
それにどうやらノルマを達成できないと降格人事もあったようで、降格となれば給料も下がる。家族持ちには大変だろう。「達成不可能なノルマを与え、できなければ降格」となれば、私も良心が咎めつつも不正に手を染めるかもしれない。現場で不正を働いた人を責めるのは酷なように思う。責めるべきは、そういう環境を作り出した幹部という事になる。「儲けろとは言ったが、不正をしてまでとは言っていない」というのは、負け犬より空しい遠吠えである。
責められるべきは社長であり、トップのただ儲けろというだけの無能な指示をなんの疑問も持たずに下に下ろした取締役であり、その下の部長なりの現場までの責任者だろう。経営者であれば、東芝事件が起こった時に、「我が社は大丈夫か」という危機感を持たなければならない。取締役も然り。そして現場に近い管理職ほど、「無理なノルマ」だという事はわかるだろうから、そういう可能性も考えないといけない。おそらく、そういう正論を吐ける空気もなかったのだろう。
最近は「心理的安全性の高い組織づくり」などということがもてはやされている。「こんなノルマ無理です」と言える環境も大事だし、上に立つ人間はそれに対し、「何としてでもやれ!」という根性論をぶつのではなく、「こうすればできるのではないか」という方法論で対処すべきであり、先頭に立って実行するリーダーシップが大事だし、それができないなら責任は上へ上へと行くべきである。つまり、ノルマ未達で降格させたなら、その直属の上司も降格すべきであり、その上の取締役、社長まで降格すべきなのである。そうでなければ人心は廃れ、組織は荒廃するだろう。
上場企業であれば、成長を求められるのは当然であり、そのレベルも高いものが要求されるだろう。どういうレベルを目指すかは難しいが、少なくとも高過ぎもせず低過ぎもしない目標というのも難しいのは事実。簡単に手が届く目標はもちろん、「どう考えても無理」という目標を立ててもモチベーションは上がらない。ただ、「考えに考え、さらに考えてがむしゃらに実行したら目標達成できた」という事もあるから、一概に高過ぎる目標はダメとも言い難い。そこを見極めるのは難しい。
1つ言えることは、「売上至上主義」ではダメだということ。それは言い換えれば「何をやっても売り上げを上げたら勝者」ということであり、何でもやるだろう。それがたとえ不正であっても。成果主義なども同様で、売上を求める一方で、モラルも維持するような風土も同時に育まなければならない。考えてみれば、「売上を上げろ」と言っているだけであれば、誰でも経営者になれる。自分が「誰でもなれる経営者」ではないと思いたいのであれば、ただ「売上を上げろ」だけではなく、その道筋も示さないといけない。
我が社も年率15%アップの中期経営計画を立てている。そしてその筋道もきちんと示している。やる事は明確である。できなければ取締役の責任で、できなければボーナスも出ない(社員は出る)。当たり前だと思っていたが、どうやらビッグモーターよりは立派な経営陣だと胸を張れるのかもしれない。胸は張れてもボーナスが出ないのでは洒落にならない。妻にも白い目で見られてしまう。何とか頑張って業績目標を達成したいと思うのである・・・
3D Animation Production CompanyによるPixabayからの画像 |
【本日の読書】
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